KENICHI SHIMAZU
ライヴ・ハウスで聴いてみたい!!!
"THE COMPOSERS T"
嶋津健一(p), 加藤真一(b), 岡田佳大(ds)
2009年6月 スタジオ・ライヴ録音 (ROVING SPIRITS : RKCJ-2041)
初めて聴くピアニストだ。この4月には"COMPOSERS U"が発売される。その新譜は残念ながら試聴が出来なかった。幸いなことに、このアルバム"T"が下記のサイトで試聴できた。そこに流れていた"YOU!
NAME IT"がとても気に入ったので、この"T"を購入することにした。そのYouTubeの解説によれば、スタジオ録音にも関わらず、ジャズの即興性と緊張感を演出するためにスタジオ内にぎっしりのオーディエンスを入れて録音したという。
手に入れて分かったことだが、この"T"と"U"は同日録音だ。すなわち、2009年の6月7日に嶋津のオリジナルと二人の作曲家の曲を同時に録音している。"T"ではMICHEL
LEGRANDの曲を4曲収録し、"U"ではJOHNNY MANDELの曲を4曲収録しているという具合だ。
この嶋津健一というピアニストは1960年生まれの今年50歳。東京大学工学部原子力工学科を卒業しているという変り種だ。そういえば、JEAN-MICHEL
PILC(JAZZ批評 460.)もフランスの国立特別研究所に勤務してロケット開発に関わっていたという。二人とも科学者からの見事な転身だ。
@"TENDER ROAD TO HEAVEN" 珍しくピアノ・ソロでアルバムをスタートする。ピアノ・トリオ・アルバムの場合、通常はピアノ・ソロは最後に持ってくることが多い。このソロを聴きながら、このピアニストの人となりが想像できる。美しい曲だ。この曲はピアノの師弟関係にあった作家・栗本薫氏への鎮魂歌でもあるらしい。
A"I WILL WAIT FOR YOU" 邦題「シェルブールの雨傘」 加藤のリズミカルなベース・ワークがいいね。美しいテーマも徐々にテンションが高くなっていく。まさにライヴのノリなのだ。こいつぁ、楽しくて最高だ。思いっきり良くハードに叩く岡田のドラミングも素晴らしい。3者のバランスも申し分ない。
B"ARE YOU FEELING BLUE? OR?" 嶋津の書いた曲はどれも素晴らしい。ジャズとてテーマは大事だ。僕は常に「良いテーマに良いアドリブあり」と思っているので、昨今の心の起伏を書いたというよりも計算するとこうなった的な曲が多くなったのを少々嘆いていた。無機質なテーマは味気ない。
C"YOU ! NAME IT" ネットでこの曲を試聴できたので購入した。この演奏は良いね。8小節*3=24小節で構成されている。テーマのよさとアドリブの面白さが同居する。ライヴ並みの躍動感と昂揚感が満載されている。
D"THE SUMMER KNOWS"
E"MIDNIGHT DANCE HOUR" 今度は愛らしいワルツだが、決して甘いだけではなくて昂揚感を増していく。
F"TO EASE YOUR SORROW" 脈々と歌い繋がれて来た日本的な旋律をテーマに加えた。古くは1976年録音の福井良の"SCENERY"(JAZZ批評 288.)あたりと根源が一緒かなあと思ったりする。
G"YOU MUST BELIEVE IN SPRING" 今度はボサノバ調だ。
H"WHAT ARE YOU DOING THE REST OF YOUR LIFE" そうか!MICHEL LEGRANDは前曲に続き、この曲も書いていたのか!流石、一級のコンポーザーだと感心する。この曲はHELGE
LIENの同名タイトルのアルバム(JAZZ批評 228.)を無視するわけにはいかないでしょう。是非、聴き比べ頂きたい。さて、あなたは余生をどう送りますか?
I"FOR YOUR TOMORROW" 美しいテーマ。太くて温かみのある加藤のアルコが素晴らしい。
1曲の試聴だけで購入したこのアルバムは大当たりだった。まだまだ日本にも優秀なプレイヤーが沢山おり、残念ながら、そこまで目が届いてないというのが現実なのだ。
最近、僕は日本人プレイヤーのアルバムを物色し始めている。何故なら、日本人プレイヤーならライヴに行ける可能性がグッと高くなり、実際にライヴ演奏を聴くことが出来るからだ。CDで満足することなく、最後はライヴ演奏を楽しみたい。この嶋津健一も、ライヴで聴いてみたいと思わせる一人ということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。
因みに4月中旬には"U"のJOHNNY MANDEL集が発売になるが、既に予約を入れているので入手したらレビューしたい。 (2010.04.02)
試聴サイト : http://www.youtube.com/watch?v=fv_VGjbRSYA
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