MAGNUS HJORTH / PETTER ELDH / KAZUMI IKENAGA
ジャズに対する熱い想いが1枚のCDに凝縮されたアルバム
"SOMEDAY. LIVE IN JAPAN"
MAGNUS HJORTH(p), PETTER ELDH(b), 池長 一美(ds)
2009年6月 ライヴ録音 (CLOUD : DDCJ-4001)


MAGNUS HJORTHとPETTER ELDHはともに1983年にスウェーデンに生まれる。故郷を離れ活動の場をそれぞれコペンハーゲンとベルリンに求めた。この二人の活躍は以下のアルバムで聴くことが出来る。MAGNUS HJORTH TRIOとして"LOCO MOTIF"(JAZZ批評 537.)と"OLD NEW BORROWED BLUE"(JAZZ批評 555.)、テナー・カルテットのPEOPLE ARE MACHINESとして"PEOPLE ARE MACHINES"(JAZZ批評 562.)と"GETXO EUROPAR JAZZALDIA 2007"(JAZZ批評 585.)がそれで、いずれのアルバムも僕は5つ星を献上している。
このアルバムは、その二人にドラムスの池長一美が加わりトリオを組んだ。もちろん、彼らは初顔合わせであったが、都内3箇所で録音されたこのCDは熱く熱くライヴの素晴らしさを語りかけてくれるものだった。僕は御茶ノ水"NARU"のライヴに立ち会うことが出来たが、生涯最高のライヴであったことを付け加えたい。
以下、
(渋谷)とあるのは「松涛サロン」、(立川)とあるのは"JESSE JAMES"、(御茶ノ水)は"NARU"でのライヴ録音であったことを示す。

@"EVERYTHING I LOVE" 
(渋谷) さくさくと小気味良く刻まれる池長のブラシに乗って、PETTERのベースが唸り、MAGNUSのピアノが踊る。渾然一体となった3者の躍動感と一体感を堪能する10分と15秒。 
A"SOMEDAY MY PRINCE WILL COME" 
(立川) 美しいピアノのタッチ。左手の重低音が効果的。テーマの美しさをことさら強く感じる9分と12秒。 
B"ASK ME NOW" 
(立川) 息もぴったりの池長のドラミングがフィーチャーされている7分と40秒。
C"AIN'T MISBEHAVIN'" 
(御茶ノ水) 聴衆のざわめきが残っている中、PETTERがベースを弾き始める。徐々に聴衆の耳が引き付けられていくのが分かる。ピアノとベースの息の合ったデュオが堪能できる7分と36秒。 
D"MILESTONES" 
(御茶ノ水) ここはPETTERのベースが唸りをあげて突っ走る。最後はテンポ・ダウンして終わったり、まさに遊び心満載で弾き倒したという感じ。こんな演奏はスタジオ録音ではまず味わえない。聴衆と一体になったライヴならではの醍醐味だ。躍動感と昂揚感満載の8分と49秒。  
E"TAKE THE A TRAIN" 
(御茶ノ水) 茶目っ気たっぷりのMAGNUSのイントロが終わり、3人が一斉にテーマに入っていくその瞬間が僕は好きだ。笑い声も聞えるくつろいだ雰囲気の中で、PETTERが倍テンでブンブン弾き倒す。3者のエネルギーが最高潮に達する5分と53秒。 
F"BESS YOU IS MY WOMEN" 
(渋谷) MAGNUSのピアノ・ソロ。しっとりと心に沁みる7分と45秒。 
BONUS TRACK
G"SOMEDAY MY PRINCE WILL COME" (御茶ノ水) まあ、PETTERのベース・ワークの凄いこと!本当に凄いベーシストが彗星のように現れたという印象。Aの立川バージョンと聞き比べるのも面白い。聞き古されたスタンダードがかくも新鮮な音楽になることに驚く9分と26秒。 

このライヴ録音はワン・ポイント録音という手法で録ったものらしいが、これがとても素晴らしい録音で、音のみならず、その場の雰囲気までも見事に伝えきっているのだ。そして、各楽器の録音バランスも素晴らしい。
ネットに掲載されたジャケットの写真を見ているときは違和感のあったピンボケ・ジャケットであったが、手にとって見るとこれが実に美しい。このジャケット写真は渋谷・松涛サロンでのライヴの映像モニターを撮ったものらしい。
このアルバムはプロデューサーのジャズに対する熱い想いなくして生まれなかった。異国のピアニストとベーシストを日本のドラマーと組ませるために二人を招聘して実現した6月のライヴ。そして、その記録を世に出すために"CLOUD"というレーベルまで立ち上げたその強い意志。
そして、このCDは「ジャズの原点はライヴ・ハウスにあり」ということを再認識させてくれた。ジャズ・ファンはもっとライヴ・ハウスに足を運ぼう!そこにはライヴならではの白熱したパフォーマンスと熱い交流があるのだから。
ジャズに対する熱い想いが1枚のCDに凝縮されたアルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2010.02.25)



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独断的JAZZ批評 609.