TRIOSENCE
耳に心地よい曲ばかりが集まったという感じで、若干、深みに欠ける
"WHEN YOU COME HOME"
BERNHARD SCHULER(p), MATTHIAS NOWAK(b), STEPHAN EMIG(ds)
2007年2月 スタジオ録音 (B. J. L : DDCJ-7001)

"TRIOSENCE"=TRIO+ESSENCEということで命名されたらしい。オーストリアの"TRIOTONIC"と同じ1999年に結成されたドイツのグループだという。メンバーも30歳前後の3人が集まった。音楽的志向もTRIOTONICに似ていて透明感がり、既存の枠に嵌らない新しいジャズを志向しているようだ。
最近ではE.S.T(JAZZ批評 371. & 379. etc)に代表されるように4ビートを刻まないでクラシックからロックまで幅広く取り入れた新しいサウンドが目に付くようになった。前述のTRIOTONIC(JAZZ批評 424. & 470.)もそうだし、MISINTERPROTATO(JAZZ批評 462.)もそうだ。

このアルバムは彼らの3作目にあたるという。牧歌的な雰囲気とカントリー風の風合いを持つ演奏でそこに暖かみを感じさせるものがある。
全16曲と少々曲数が多い。従って、どの曲も6分以内だ。そして、全ての曲がピアニストBERNHARD SCHULERの手による。トータル時間は70分を超えている。

@"WHEN YOU COME HOME" シンプルで癖のない爽やかな演奏。
A"THREE FO(U)R FUN" 定型のリズムパターンに乗って明るく軽やかなテーマが続く。シンプルな演奏スタイルで一度聴くとメロディが耳から離れない。
B"HEART IN THE HEAD" 
C"DISTANCE MEANS NOTHING" この曲なんて、絶対に一度は聴いたことがあるはずだ。これもSCHULERのオリジナル?
D"A FAR-OFF PLACE" 静謐なイントロからパーカッションを用いた東洋的雰囲気を漂わせた演奏になる。バス・ドラとパーカッションのコンビネーションが効いているなあ。そういえば、かつてこのスタジオで録音されたHELGE LIENの"TO THE LITTLE RADIO"(JAZZ批評 342.)でもパーカッションが重要な役割を果たしていたっけ。
E"LITTLE ROMANCE" この曲でもパーカッションが雰囲気を作っている。NOWAKの太いベース・ワークもグッドだ。
F"SOMETHING NEW" カントリー調。ブラッシュによるドラミングも印象深い。
G"LONG FALL - PART T" 
H"LONG FALL - PART U" 
I"ONCE I KNEW" 
J"WHAT REALLY MATTERS" カントリー調のカラッとしたテーマ。
K"YOU ALONE" 美しいピアノ・ソロ。
L"SAD TRUTH" このアルバム、唯一の激しいドラミングにテンションが高まっていく。
M"THAT'S HOW IT IS" どこかで聴いたことのあるジャズだと思っていたら、この牧歌的カントリー調の風合いが、PAT METHENYの"BEYOND THE MISSOURI SKY"(JAZZ批評 6.)の最後に入っている"SPIRITUAL"に雰囲気が良く似ているのだ。
N"SOMETIME AGO" 
O"LOST OR FOUND" 

アルバムの帯には「厳冬のオスロ、レインボー・スタジオで開花した奇跡のセッション」と少々オーバーな表現が書いてある。最近のアルバムとしてはシンプルで小難しいことをやるわけでもなく印象度は良い。近年の傾向として、この手のジャズはテーマやアレンジに凝ったりするものだが、このグループは至ってシンプルだ。全ての曲がSCHULERの書いたオリジナルということだが、どこかで一度ならず聞いたことがあるという印象の曲が多い。耳に心地よい曲ばかりが集まったという感じで、若干、深みに欠ける。そういう中で、ドラムスのSTEFAN EMIGのプレイが印象に残った。   (2008.03.07)



独断的JAZZ批評 471.