独断的JAZZ批評 470.

TRIOTONIC
このアルバムから3年の間に、このTRIOTONICは長足の進歩を成し遂げたことになる
"SENSITIVE"
VOLKHARD IGLSEDER(p), HORST SANDY SONNTAGBAUER(b), BERNHARD WITTGRUBER(ds)
2002年リリース スタジオ録音 (BUZO RECORDS : CD 0203327)

2007年の"BEST 3"の1枚に選定したTRIOTONIC"HOMECOMING"(JAZZ批評 424.)は2005年の録音だった。このアルバムは遡ること3年、2002年に(録音されたと思われるが・・・?)リリースされたアルバムだ。この3人のグループ結成が1999年で、それ以来、メンバーの変更はないという。"TRIOTONIC"で検索すれば、ホームページで"HOMECOMING"も、この"SENSITIVE"も何曲か試聴できる。「百聞は
一聴にしかず」で自分の耳で確かめてみるのもいいかも知れない。

@"60 SECONDS" しっとりとしたピアノ・ソロによるイントロに続いて、3者によるテーマ演奏。耽美的な美しさに包まれる。徐々に高揚感を増してきてテーマに戻る。
A"LONG AWAY" ピアノで始まり、ベースとドラムスが加わる。その瞬間の協和音と不協和音が緊張感を醸し出す。耽美的な美しさと躍動感もあり、なかなか聴かせてくれる。ドラムスの長めのソロが用意されているが、このWITTGRUBERはバッキングにおいてその才能を開花させている。
B"WEINBERG" 美しいテーマ。美しさこそこの時期のTRIOTONICの原型かもしれない。
C"NUNS" このアルバムの中では唯一、泥臭い定型パターンで始まる。WITTGRUBERの躍動するドラミングが小気味良い。
D"MIRRORS" メルヘンチックなテーマでスタートするが、二呼吸おいてベースとドラムスのやや抽象的な演奏が始まる。徐々にインテンポになってきて、再びピアノが加わる。このまま抽象画で終わってしまうかと思っていると再びピアノのメルヘンチックなテーマに戻る。

E"YOUR SONG" 美しくも牧歌的なにおいのする曲。まるで水が砂に染み込んでいくように心を潤していく。このアルバムのベスト・トラック。このアルバムの象徴的トラック。鉛筆でもマウスでも何でも良いから、今持っているものでリズムを刻みながら聴いてみたい。
F"BUT FUNCTIONAL" 
G"CIRCLE"
 GIOVANNI MIRABASSIの"AVANTI !"(JAZZ批評 60.)にでも挿入されていそうなフォーク・ソングのような曲。
H"FAREWELL" 最後を締める"FAREWELL"(ごきげんよう)。

このアルバムにグルーヴ感のある曲はない。全てが美しいテーマを持つ。グルーヴィとかファンキーというジャズとは無縁だ。あくまでも美しく優しさに溢れたジャズだ。タイトル通りこのアルバムは"SENSITIVE"である。
このアルバムから3年、TRIOTONICはグルーヴ感もダイナミズムも身につけて"HOMECOMING"へと成長していく。"HOMECOMING"ではこれまでの繊細さにダイナミズムや豪胆さが加わわり、更に躍動感、緊密感がスパイスのように効いて特上の料理のようになった。それに比べるとこの時期、未だ線が細い感じがするし、表現力という点でも今ひとつだ。逆に言えば、このアルバムから3年の間に、このTRIOTONICは長足の進歩を成し遂げたことになる。
いかにもヨーロッパ的サウンドであるが、美しさと優しさに溢れている。ただ、これだけでは「満足!」と言うまでに至らない人も多いだろう。僕もそういう一人だ。敢えて言うならば、TRIOTONICを購入するなら"HOMECOMING"がそのベスト・チョイスだろう。この"SENSITIVE"はこのグループとしての成長過程を知る上では欠かせない1枚ではあるが・・・。   (2008.03.01)