独断的JAZZ批評 371.






e . s . t.
充分刺激的で、規格外の面白さがある
ウ〜ン!素晴らしいアルバムが出たもんだ!
"TUESDAY WONDERLAND"
ESBJORN SVENSSON(p), DAN BERGLUND(b), MAGNUS OSTROM(ds, zildjian cymbals)
2006年3月 スタジオ録音 (EMARCY 0602517065758)

久しぶりに、E. S. T.を買ってみた
独特の世界を持つE. S. T.だが、今度はどんな演奏を聴かせてくれるのだろう
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いやあ、これは凄いアルバムが出たものだ!
e. s. t.こと、ESBJORN SVENSSON
TRIOの最新作。僕がこのHPでe. s. t.のアルバムを紹介したのが4年前。アルバムは"E. S. T. LIVE !"(JAZZ批評 81.で,、1995年のライヴ録音がメインに、1999年のライヴが1曲だけ挿入されているアルバムであった。僕にとっては、あれから4年であるが、アルバム的にはあれから11年ということになる。この間、このグループは不動のメンバーだ。そして、グループとしても相当成熟していると感じられる。
このアルバムは素晴らしい!この4年間、このグループを見落としていたのが勿体ないと思った。確かに、4ビートのアコースティック・ジャズの範疇で語ろうとすると規格外ともいえる。しかし、心打つ仕上がりに大満足だ。固定概念に縛られず、自分達の演りたい音楽を徹底的に極めたという感じだ。だから、感動がある!イメージとしてはアコースティック・ピアノ・トリオ+エフェクターという感じ。ピアノは電気ピアノを使用していない。このアルバムは新しいジャズの姿を暗示しているかもしれない。


@"FADING MAID PRELUDIUM" 
しっとりしたピアノのイントロで始まるが、突然の電気的超刺激音にドキッとする。
A"TUESDAY WONDERLAND" 
ベースと太鼓が躍動し、ピアノが踊る。このグループの象徴的プレイ。
B"THE GOLDHEARTED MINER" 
曲もアレンジも素晴らしい。歌心、充分。
C"BREWERY OF BEGGARS" 
あたかもエレキ・ギターのサウンドが炸裂するが、これはベース+エフェクターの成せるわざらしい。しかし、どうやってこのサウンドを出しているかなんて、この際、どうでも良い。
D"BEGGAR'S BLANKET" 

E"DOLORES IN A SHOESTAND" 
アコースティック・ベースがテーマを執る。軽快なリズムに乗って躍動する。僕はこの曲を聴くとWEATHER REPORTの"HEAVY WEATHER"に入っている"BIRDLAND"を想起する。後半には、手拍子や笑い声が入ったりしてリラックスした雰囲気がとても楽しい。ご機嫌な演奏だ。最高!

F"WHERE WE USED TO LIVE" 
先ず曲が良い。「良いテーマに良いアドリブあり」である。3者の緊密感も申し分ない。
G"EIGHTHUNDRED STREETS BY FEET" 
軽快なブラッシュ・ワーク、太いベース音、踊るピアノ。
H"GOLDWRAP" 
I"SIPPING ON THE SOLID GROUND" 
バラード。いいねえ!唸るね!
J"FADING MAID POSTLUDIUM" 
壮大なスケールのエンディング。この曲、5分過ぎで一旦終るが、その後、3分ほど経過した8分20秒辺りから11分30秒くらいまで奇妙な音楽というかノイズというか変な演奏が挿入されている。これも隠しトラックというのだろうか?

このアルバム、アコースティックの良さと電気音楽の良さをミックスさせたような新しさがある。エフェクターを使用することによって、これほどのスケール感と音の広がりを得ることが出来るのか!充分刺激的で、規格外の面白さがある。僕はこのアルバムにはWEATHER REPORTとの共通点があるような気がするのだ。革新的で刺激的でありながら古き良き時代の継承もきちんとしている・・・そんなイメージ。

一体、3人でどういう風に演奏しているのだろう?これは一度、生演奏を聴いてみないといけないと思った。折りよく、1月に東京公演が予定されている。早速、チケットをゲットした。1月13日、渋谷のオーチャッドホール、全席\7,000。鯉沼ミュージック主催。
この鯉沼ミュージックでは5月のKEITH JARRETT TRIOのコンサートも主催している。これも一緒にゲット。SS席、\12,000なり。これはちと高いがKEITHともなれば仕方がないか!

このアルバムの素晴らしさにもう一点付け加えると、どれも曲が良い。全ての曲とアレンジをE. S. T.がやっている。ウ〜ン!素晴らしいアルバムが出たもんだ!
来春の東京におけるライヴ演奏を大いに期待しながら、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2006.10.14)