MISINTERPROTATO
のんびりとした時間が取れる夜長に、日本酒でも嗜みながらじっくりと聴いてもらいたい
"VARIATIONS"
SEAN FORAN(p), PAT MARCHISELLA(b), JOHN PARKER(ds)
CHRISTA POWELL(violin: C), BERNARD HOEY(viola: C), JOHN BABBAGE(as: C),
PETER KNIGHT(tp: D), LAWRENCE ENGLISH(erectronics: D)
2007年5月 スタジオ録音 (SPACEBARECORDS : HEAD084)

オーストラリアで1999年結成の若手ピアノ・トリオだという。ネットで何曲か試聴できた。印象としては、2007年のベスト・アルバムとしても紹介したTRIOTONICの"HOMECOMING"(JAZZ批評 424.)などの延長線上にあるグループという印象を持った。で、購入してみた。
「新感覚派」などとも呼ばれているようで、ジャズ、クラシック、ロックと幅広いジャンルのエッセンスを滲ませている。CとDではピアノ・トリオに加え、ゲストとしてバイオリン、ビオラ、アルト・サックスあるいはトランペットなどが参加している。
C、F、G、HがJOHN PARKERのオリジナルで、Kが3人のインプロ、それら以外がピアニスト、SEAN FORANのオリジナル。全曲を自分たちのオリジナルで埋めた意欲作だ。

@"ISLAND OF THE SUN" イントロが良いね。何かを期待できる入り方だ。後半部はかなり過激な演奏となる。6分と25秒。
A"AT THE RIGHT MOMENT" 
ピアノ・ソロから二人が合流し透明感のある演奏にシフトしていく。フリーのインプロを経てリズミックな演奏にシフトする。10分と10秒。
B"BRANCHING OUT" 
こういう演奏はオーストリアのTRIOTONICを彷彿とさせる。因みに、このグループはオーストラリア!5分と25秒。
C"START" 
思索的であり、耽美的な美しさを持った演奏でもあるが、見事に躍動している。ピアノ・トリオのほかにバイオリンやビオラ、アルトサックスが参加し、深い陰影を描いている。千変万化の7分10秒。
D"ASCENT" 
湖面に広がる波紋のような広がりを見せる。トランペットの音色がより一層の静謐と緊迫感を醸し出す。バックグランドにかすかに流れるシンセサイザーの効果音が微妙な陰影をもたらしている。じっくりと聴いているとCARSTEN DAHLの"MOON WATER"(JAZZ批評 246.)を彷彿とさせる9分0秒。
E"PADDLES" 
思索的な演奏ばかりかといえば、そうではない。この曲ではブラッシュ・ワークに乗って熱く昂揚していく。このピアニスト、SEAN FORANは研ぎ澄まされた美しさにダイナミズムも持ち合わせている。8分と20秒。
F"PLEASE" 
静謐な曲想で始まるが、多彩なドラミングがぴたりと嵌る5分と20秒。
G"VARIATIONS ON A BAD DAY" 
重低音で圧倒する7分と40秒。
H"CHUNK" 
アヴァンギャルド色が強くなってきたが、アヴァンギャルドではない。ベースはエフェクターを使用しているのだろう。3分と10秒。
I"EVERYTHING THAT ISN'T" 
3分と55秒。
J"THE UNKNOWN" 
決めの多いテーマであるが、途中から入る手拍子に合わせてどんどん高揚感を増してきてドラム・ソロへと繋がっていく。7分と35秒。
K"LABYRINTH" 
「迷路」というタイトルのインプロビゼーション。しかし、出口は見つかりそうだ。4分と15秒。

実は、このアルバムをゲットしたのは昨年12月の末だった。その頃は、手持在庫も溜まっていて、2〜3度聞いただけで、印象としては薄かった。やっと順番が回ってきて、いざ本格的に聴いていみると、これが思いのほか良かった。特にピアノ・トリオにゲストが加わったCとDが僕のお気に入りだ。ピアノ・トリオよりもゲスト参加の2曲のほうがこのグループの面白さをより表現できていると思うのだ。曲数も多く、概して、1曲あたりの演奏時間が長いので、のんびりとした時間が取れる夜長に、日本酒でも嗜みながらじっくりと聴いてもらいたい。(トータル時間:77分)
このアルバムは、前述したC. DAHLの"MOON WATER"やTRIOTONICの"HOMECOMING"がお気に召した方、あるいは、E.S.T(JAZZ批評 371.)などを好んで聴かれる方には、抵抗感がないかもしれない。このMISINTERPROTATOというグループを説明するにはE.S.Tの延長線上にあるグループというのが一番分かりやすいだろう。が、決して「二番煎じ」という意味ではない。いやはや、オーストラリアから凄いグループが現れたものだ。次回作を楽しみにしながら、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。    (2008.01.23)



独断的JAZZ批評 462.