"TO THE LITTLE RADIO"
HELGE LIEN(p), FRODE BERG(b), KNUT AALEFJAER(ds)
2006年1月 スタジオ録音 (DIW RECORDS DIW-632)
既に紹介している2000年録音の"WHAT ARE YOU DOING THE REST OF YOUR
LIFE"(JAZZ批評 228.)は3人のプレイヤーが心を通い合わせた傑作だと思う。
あれから6年後のスタンダード・ナンバーとジャズの巨人の作品集
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@"GRANDFATHER'S WALTZ" 美しいテーマ。パーカッシブなドラムスが面白い。スティックを使わず手で叩いているのだろうか?
A"LOOK FOR THE SILBER LINING" しっとり系の美しい曲
B"CHELSEA BRIDGE" BILLY STRAYHORN作。最初からブラッシュ・ワーク。
C"LITTLE SUNFLOWER" ピアノとドラムスのアン・マッチングなリズムが面白い。シンプルなピアノに対して多ビートのドラムスが交錯する。
D"PENELOPE" ベースのアルコ弾き。ヨーロッパ人のアルコは安心して聴いていられる。音程の確かなこと!アメリカ人だとなかなかこうは行かない。
E"IDA LUPINO" パーカッシブなドラムスが独特な雰囲気を作り出している。斬新性、革新性があるね。
F"SO IN LOVE" COLE PORTERの名曲。スロー・バラードだけど、ここでもパーカッションのアプローチが面白い。
G"LOVE SONG" 躍動するパーカッション?
H"AMAPOLA" ポピュラーとしておなじみの「アマポーラ」。ミディアム・テンポのパーカッションに乗った3者のインタープレイが楽しい。しっとり系の多かったこのアルバムの中ではひときわ軽快な演奏になった。こういったポピュラーを一流のジャズに仕立て上げる力量はたいしたものだ。3者のインタープレイを堪能頂きたい。
I"SONOR" 前曲に続いてこの演奏も良いね。HAMPTON HAWESの書いた曲。
J"TO THE LITTLE RADIO"
今度のアルバムは耳当たりの良いしっとり系の曲と演奏が揃った。多分に日本市場を意識した構成なのだろう。プロデューサーの意思が強く働いている印象を持つ。この「耳当たりの良い」演奏ばかりを揃えたことが本当に良かったのかどうか?HELGE
LIENの難解な一面と強烈な個性、その対極にある美しさのコントラストが若干、ぼやけて聴こえる。
贅沢を言うと、一発「ガツン!」という演奏が欲しかった。そう、"SO WHAT"のように、ピアノが鍵盤を叩く打楽器であることを再認識させるような。そうすれば、もっと瑞々しい美しさが引き立ったアルバムになったように思う。
"WHAT ARE YOU DOING THE REST OF YOUR LIFE"(JAZZ批評 228.)は半分は捨て曲だけど、残る半分が強烈な衝撃を与えてくれた。そこが、このピアニストの面白さだと思う。だから、このアルバムはHELGE
LIENであって、HELGE LIENでない。
と言いつつも、これは紛れもなく素晴らしいアルバムであることを否定しない。そういうマイナス点を差し引いたとしても、やはり、★5つを点けたくなる。何回も何回も噛み締めるように聴いて欲しいアルバムだ。
面白かったのはAALEFJAERのドラミング。パーカッションを叩いているような個性的なドラミングが耳を引いた。ドラム・セットの中に手で叩く打楽器も入っているのだろうか?・・・よくよくライナーノーツを読んでみたら"DRUMS
& PERCUSSION"と書いてあった!このアプローチは面白い!今後、こういうスタイルのピアノ・トリオが一杯出てくるような予感がする。
「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。 (2006.06.04)
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