MAKOTO OZONE
こういう質の高いスタンダード集はリラックスして、酒の肴にでもしたら最高だ
"SPRING IS HERE"
小曽根 真(p), GEORGE MRAZ(b), ROY HAYNES(ds)
1986年12月 スタジオ録音 (SONY MUSIC JAPAN INTERNATIONAL INC. : SICP 1525)

随分と昔のことだが、このアルバムをCDショップで借りてきてカセット・テープに録音し愛聴していた。その後、カセットを全部処分したときに、いずれCDで手に入れられるだろうと高を括っていたのであるが、これがなかなかの入手難で今になってしまった。何でも、このアルバムは日本限定の発売だったようである。そういえば、全曲スタンダードのオンパレードでいかにも日本人好みに仕立ててある。前掲のソロ・アルバム"FALLING IN LOVE, AGAIN"(JAZZ批評 436.)を探していたら、隣にこのアルバムも並んでいたという具合で、一緒に購入した。
小曽根のアルバムでは"DEAR OSCAR"や今をときめくベーシスト、北川潔(JAZZ批評 312.)が参加している"TRIO"を持っていたが、もうひとつ満足感を得られないでいた。これらのアルバムはレビューを書かないまま、随分前に処分してしまった。その後のOZONEのアルバムは試聴機で立ち聴きするくらいで、購入するまでには至らなかった。
このアルバムは小曽根が弱冠、25歳の時の録音で、当時、キラ星のごとく現れた新人であったと記憶している。20年の月日が経過して、今、小曽根は46歳になるのだろう。そして、その成長振りは前掲のレビューで触れた。

@"BEAUTIFUL LOVE"  この曲といえば、B. EVANSとS. LAFAROのインタープレイが絶妙の"EXPLORATIONS"(JAZZ批評 158.)を思い出す。ここで小曽根は下手な小細工をせずに堂々と演奏をしている。MRAZのウォーキングにHAYNESのスティック捌きに乗って、スイング感満載のけれんみのない演奏だ。
話を転ずるが、2003年にブレークした松永貴志は今どうしているのだろう?彼が17歳のときのデビュー・アルバム"TAKASHI"(JAZZ批評 163.でもこの曲を演奏している。17歳とは思えない歌心が楽しめるので、機会があれば一聴を。

A"SPRING IS HERE" 
ミディアム・テンポのブラッシュに乗って快くスイング。
B"SOMEDAY MY PRINCE WILL COME" 
C"ON THE STREET WHERE YOU LIVE" 
何気なくて、ナチュラルな1曲。ストレートな気持ちよさ。良く歌うMRAZのベース・ソロを経てテーマに戻る。こういう歌モノをやらせたらMRAZの右に出るベーシストはいないね。当時、MRAZは超売れっ子で、トミフラ(JAZZ批評 90.)、DON FRIEDMAN(JAZZ批評 85.)のグループなど活躍したグループを数え上げればきりがない。

D"THE NIGHT HAS A THOUSANT EYES" 
邦題、「夜は千の目を持つ」。懐かしい!最近はあまり聞くことのなくなった曲だ。アップ・テンポで4ビートを刻んでいく。
E"MY ONE AND ONLY LOVE" 
こういう曲は歌心がないと弾けないね。25歳にしてこの表現力は只者ではないと感じさせる演奏だ。MRAZの伸びのある重低音とつぼを心得たバックアップ、ベース・ソロが泣かせるなあ。
F"O'GRANDE AMOR" 
A. C. JOBIMの曲を軽快なボサノバ調で。HAYNESのスティック捌きに聞き惚れた。
G"TANGERINE" 
エンディングに相応しい軽快なテーマ。ベースが唸りをあげてシンバルが小気味のよい音を刻む。闊達な小曽根の運指に狂いはない。

こういう昔から歌い継がれてきたスタンダード集というのは個性を強調したいがために、得てして手を変え品を変えてアレンジに懲りたくなるものだが、ここでの演奏は若者らしくストレート。ベテラン・サポート陣を迎えても臆するところがない。正面から正々堂々と向き合っていて好感が持てる。加えて、MRAZとHAYNESのしっかりとしたサポートが花を添えている。こういう質の高いスタンダード集はリラックスして、酒の肴にでもしたら最高だ。
歳をとってからのスタンダード集だと「企画モノ」とか「売れ線狙い」と揶揄されそうだが、若いうちは大いにスタンダードを演るべし!そして、歌心を大いに培って欲しいと思うのだ。   (2007.09.19)



独断的JAZZ批評 437.