3者が技と魂をぶつけ合い、
そこから生まれる緊迫感と楽しさ、躍動感が堪らない
"ECLYPSO"
TOMMY FLANAGAN(p), GEORGE MRAZ(b), ELVIN JONES(ds) 1977年スタジオ録音(ENJA TKCB-71967)

名作といわれる1957年録音の"OVERSEAS"(JAZZ批評 37.)から20年経った1977年の録音。ベースがWILBUR LITTLEからGEORGE MRAZに代わった。MRAZが参加してアルバムがグッと締まった。1年後に、同じくMRAZが参加したDON FRIEDMAN "LATER CIRCLE"(JAZZ批評 85.)も素晴らしい作品に仕上がっている。この時期以降、ベーシストGEORGE MRAZの活躍はご存知の通り。

良いベースが入るとアルバム全体が引き締まる。ピアノ・トリオに良きベーシストは絶対欠かせない。MRAZのようなベーシストが入るだけで2流のピアニストも1.5流に持ち上がるというものだ。しかも、歌モノが上手いときているからスタンダード・ナンバー中心のピアノ・トリオ盤には非常に重宝なベーシストになってしまう。だから最近、日本プロデュースのピアノ・トリオ盤に頻繁に登場することになる。ファンとしてはもう少し仕事を選んで欲しいと願うのだけど・・・。

"OVERSEAS"はトミフラとELVINの作品というイメージが強い。それに対して、このアルバムはトミフラと御大ELVIN、そしてMRAZの3者が対等に渡り合い、技と魂をぶつけ合ったというイメージだ。そこから生まれる緊迫感と楽しさ、躍動感が堪らない。

ここでのFLANAGANは何時になくテンションが高くとても元気だ。いきなり"OLEO"でハイテンションな演奏を聴かせてくれる。
2曲目の"DENZIL'S BEST"ではMRAZがベースでテーマを弾き、その後、力強い4ビートを奏でる。ドラムスとの4バースを経てテーマに戻る。
3曲目にはTADD DAMERONの手による"A BLUE TIME"が入っている。ミディアム・テンポのブラッシュ・ワークが軽快な楽しい1曲。ベース・ソロもご機嫌。
4曲目が"OVERSEAS"の再演とも言えるCHARLIE PARKER作の"RELAXIN' AT CAMARLLO"。再演曲としてはあとFLANAGANのオリジナル"ECLYPSO"が6曲目に入っている。どちらの曲もMRAZの好サポートが見逃せない。この辺は、"OVERSEAS"のWILBUR LITTLEと比較すると歴然だ。朴訥としたLITTLEのベースもそれなりの味があるが、やっぱりここは音色が艶やかで伸びがありベースラインのはっきりしたMRAZでしょう。
最後が同じくPARKER作の"CONFIRMATION"。AA'BA'形式の32小節の歌モノ。FLANAGANのピアノをはじめ3人が楽しそうにスウィングしている。

ピアノ・トリオとしての3者のバランス、楽しさ、躍動感で"OVERSEAS"を凌いでいる。FLANAGAN TRIOのお奨めの1枚。
manaの厳選 "PIANO TRIO & α"に追加した。    (2002.08.24)




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TOMMY FLANAGAN

独断的JAZZ批評 90.