HOD O'BRIEN
アットホームな雰囲気やリラックスした雰囲気はより一層、O'BRIENの個性を引き出していると思う
"LIVE AT BLUES ALLEY SECOND SET"
HOD O'BRIEN(p), RAY DRUMMOND(b), KENNY WASHINGTON(ds)
2004年7月 ライヴ録音 (RESERVOR MUSIC RSR CD 182)
前掲のJAZZ批評 259.に続いて、今回のアルバムも期せずしてベースがRAY DRUMMONDであった。このDRUMMONDは1990年代からの活躍が目覚しい。
例えば、JAZZ批評 186.のBARRY HARRIS/KENNY BARRONとの1991年のライヴ盤、あるいは、JAZZ批評 22.のKENNY BARRONとの1996年の文句なしの名盤など、特にライヴ盤でその真価を発揮している。リラックスしたライヴの雰囲気の中で、ピアニストを上手に立てる温かみのあるベース・ワークはピアノ・トリオに打って付けだ。この人がベースを弾くとその場の空気が丸く柔らかくなる感じ。実にアメリカ的なアットホームな雰囲気を醸し出す。この雰囲気はヨーロッパのピアノ・トリオにはちょっとやそっとでは真似できない世界だと思う。
出来れば、このアルバムはライヴのその場に居合わせたかのような雰囲気に浸って聴きたいものだ。ウィスキーの好きな方はバーボンのオン・ザ・ロックでもあれば最高だ!僕の場合は、日本酒の冷といきたいところだ。
@"PENT-UP HOUSE" 「おっ!いいじゃないか!」というのがこの場に居合わせたリスナーの素直な感想だと思う。
A"SNIBOR" B.STRAYHORNの佳曲。DRUMMONDのウォーキングに合わせて指でも鳴らしてみよう。
B"HOW ABOUT YOU" WASHINGTONの快いブラッシュ・ワークで始まる軽快な曲。途中でスティックに持ち替えて高揚感が増していく。
C"LITTLE NILES"
D"LOVE LETTERS" V.YOUNGの名曲も肩の力を抜いて酔い痴れよう。WASHINGTONの刻むシンバリング、DRUMMONDのウォーキング・ベースが快い。古くは1974年録音のJAZZ批評 49.のKENNY DREWの名演があるが、古くて新しいKENNY DREWと新しくて古いHOD O'BRIENを聴き比べてみるのも面白い。
E"IN A SENTIMENTAL MOOD" D.ELLINGTONの名曲。
F"DO NOTHING TILL YOU HEAR FROM ME / TAKE THE A TRAIN" この2曲はこの雰囲気にぴったり。実に気持ち良い!聴く側も理屈無しにスウィングして欲しい演奏だ。
さて、主役のHOD 0'BRIENであるが、これがまた気持ちよくスウィングしてやんやの喝采ものなのだ。かつて、JAZZ批評 197."FANFARE"でO'BRIENを紹介しているが、また、その時と味わいが違うのだ。端的にいうとヨーロッパ版スタジオ録音とアメリカ版ライヴ録音の違いといって良いだろうか。アットホームな雰囲気やリラックスした雰囲気はより一層、O'BRIENの個性を引き出していると思う。
ただ、緊迫感や美しさを求めるリスナーには5つ星とはいかないだろう。更にいうと、ピアノが若干、単調になる。もっと「間」があっていいと思う。理屈無しで楽しめればいいという方にお奨め。 (2005.03.25)