ARILD ANDERSEN
ベース本来の役割は何かということを考えさせられるアルバム
"THE TRIANGLE"
VASSILIS TSABROPOULOS(p), ARILD ANDERSEN(b), JOHN MARSHALL(ds)
2003年1月 スタジオ録音 (ECM 1752 038 1212) 

前掲のCARSTEN DAHLに続いて、今回紹介するのは、"MOON WATER"(JAZZ批評 246.)で共演したベース・プレイヤー、ARILD ANDERSENの登場だ。ARILD ANDERSENのその存在無しには"MOON WATER"を語ることが出来なかっただろうし、DAHLとの濃密なインタープレイは強く印象に残っている。
そのANDERSENがリーダーとなったアルバムで"MOON WATER"を遡ること2ヶ月前の2003年1月の録音だ。ネットで試聴した段階では良いも悪いも良く分からなかった。ジャケットにあるようなモノトーンの暗さが象徴的なアルバムではある。直感的に良い!とは多分行かないと思う。
ジックリとこのアルバムを聴いてみると、雰囲気としてはHELGE LIENの"WAT ARE YOU DOING THE REST OF YOUR LIFE"(JAZZ批評 228.)に似ている。が、かたやピアノがリーダーであり、このアルバムはベースがリーダーというのが大きな違いだ。

H"CINDERELLA SONG" ピアニスト、VASSILIS TSABROPOULOSの書いた美しい曲。先ずは9曲目のこの曲から聴いていただきたい。この曲の美しさ、3者のインタープレイを堪能いただきたい。まさに、水彩画のような優しい彩りに溢れている。こういう叙情的な演奏も出来るんだという認識の上で@を聴いてもらった方がその良さをより理解しやすいだろう。緑の葉っぱの上に垂れた一滴の雫のようだ。ここではピアノがメイン。

@"STRAIGHT" 3者のインタープレイが堪能できる。このベース、ヨーロッパの傾向として言えるのであるが、若干、ダボつき気味である。ベースをギターのように弾くためにはどうしてもブリッジを低くして弦を緩めの設定にしなければならない。その分、音の緊張感が犠牲になるのはやむを得まい。ただ、ベースがギターのように弾く必要があるかという疑問は残る。僕としてはLARRY GRENADIERのような張り詰めた硬い音が好きだが・・・。ベース本来の役割は何かということを考えさせられる。
A"PAVANE" メルヘンチックなピアノでスタート。VASSILIS TSABROPOULOSというピアニストはギリシャのピアニストでクラシックの薫陶を得ているらしい。全体を通して、若干、遠慮がちであるので一度、リーダーとなったアルバムを聴いてみたいものだ。

B"SATURDAY" 
C"CHORAL" 
D"SIMPLE THOUGHTS" TSABROPOULOSのオリジナル。なかなかのメロディ・メーカーでもある。
E"PRIZM" ANDERSENの書いたワルツ。
F"LINES" ギターのようにベースを弾いている。
G"EUROPEAN TRIANGLE"
 
 
ベースのリーダー・アルバムだけあってベースが前面に押し出されている。これが良いか、悪いか?僕は思うのだけど、ベースにはベースの役割があって、何も前面に出ることはないと思うのだ。ピアノという楽器に比べて、その楽器の持つ潜在能力において限界というものを感じざるを得ない。やはり、ベースはベース本来のサポート役に徹して欲しいものだ。   (2005.04.01)



独断的JAZZ批評 262.