"THE SCENE CHANGES" BUD POWELL(p), PAUL CHAMBERS(b), ART TAYLOR(ds) 1958年録音(BLUE NOTE 0777 7 46529 2 6)

最初に、このCDの録音は良くないと申し上げておこう。1958年、今から44年も前の演奏だから仕方ないといえば仕方ない。できれば、良いオーディオ装置で聴くことをお奨めしたい。特に、ヘッド・ホンなどは止めた方が良い。音も硬いし、結構聴き疲れする。本来の演奏を云々する前に疲れてしまうから。

BUD POWELL と言えば、泣く子も黙るジャズ・ピアノの重鎮。ベースとドラムスはあくまでも脇役に徹している。昔ながらのピアノ・トリオと言うことができる。現代のように、3者が均等にインタープレイを交じ合わすという事はない。そういう中にあってPOWELLにしか創り上げることの出来ない独特な世界を構築していく。ここでは全10曲が全てPOWELLのオリジナルだ。

1曲目の "CLEOPATRA'S DREAM" は代表作とも言える作品だ。伝説化した名曲とも言える。ここでの演奏は強力なサイドメンのバックアップに乗ってPOWELL節で歌っている。BUD POWELLのピアノはテクニックに優れているかというとそうでもない。決して、技巧派ではない。では、感情を剥き出しにしているかというと、これもそうとは言い切れない。しかしながら独特の泥臭い世界を創り上げている。この強烈な個性が後々のピアニストに大きな影響を及ぼしたと推察できる。

4曲目 "DANCELAND"は印象深い曲。テーマが耳に残る。5曲目の"BORDERICK"は明るい曲想の曲。いかにも楽しげにピアノを弾いている。

最近のジャズ・ピアノに馴らされた耳には、違和感を覚えるだろう。質実剛健であり、ストレートなジャズなのだ。実は、僕自身も最初、違和感を覚えたものだ。耳が慣れるに従ってこの味を楽しむことができるようになった。
最近の甘ったるいデザートのようなジャズ・ピアノに比較すると「素材そのものに塩だけ振ったような料理」なのだ。全てはPOWELLというピアニストの素材の良さに関わっている。

多分好き嫌いの評価が極端に出る作品だと思う。しかしながら、ジャズ・ピアノを語る時に忘れてならない1枚ではある。     (2002.05.28)


甘ったるいデザートのようなジャズ・ピアノが跋扈する中、さながら「素材に塩だけで味付け」をした
ストレートなジャズ・ピアノを聴いて欲しい
BUD POWELL

独断的JAZZ批評 71.