甘過ぎず、辛過ぎず、柔らか過ぎず、硬過ぎず、
謂わば「中庸の良さ」が光る
反面、物足りなさを感じる人もいるだろう
"BLUE LIGHTS"
JAN LUNDGREN(p), JESPER LUNDGAARD(b), ALEX RIEL(ds)
2003年1月スタジオ録音(MARSHMALLOW RECORDS MMEX-101)

JAN LUNDGRENというピアニストは何回かCDで聞いている。甘いマスクと北欧(スウェーデン)のジャズというだけで若い女性には人気が出そうだ。レコード会社も心得たものでその甘いマスクを必ずと言って良いほどアルバムの表紙に抜け目なく使っている。
このアルバム、期せずしてその甘いマスクとリズム陣の凄みのある顔が対照的に配置されている。絶妙のコントラストだ。このリズム陣がこのユニットをキリッと締めていてなかなか良い。

タイトル曲の"BLUE LIGHTS"は思い入れのある曲だ。学生時代のジャズ・バンドのレパートリーのひとつだった。哀愁を帯びた、いかにも、日本人好みのマイナー・ブルースだ。これが聴きたかった。
古くはEDDIE COSTA(p )のアルバム"THE HOUSE OF BLUE LIGHTS"にも収録されている。このCDは次回、紹介したいと思う。

@"TAKE ME IN YOUR ARMS" フリーなテンポのテーマが徐々に収斂していき、見事なアンサンブルに仕上がっていく。いかにも北欧の味わいのする曲想。2ビートから4ビートへとシフトしていくのに合わせて強いドライブ感が生まれてくる。ベース・ソロ〜ドラムス・ソロと繋いでテーマに戻る。
A"BLUE LIGHTS" GIGI GRYCEのマイナー・ブルース。テーマの後はベースのソロが3コーラス。強いビートでおおらかに歌う。ピアノは右手のシングルトーンが主体。左手のバッキングはほんのわずか。2コーラスのドラムスのソロの後、テーマに戻る。もっとブローしても良かったかも・・・。

B"LOVE OF MY LIFE" ARTIE SHAWの美しいバラード。
C"EASILY FOUND" LUNDGRENのオリジナル。典型的な32小節の歌もの。ミディアム・テンポで軽やかに。
D"STRANGER IN PARADISE" テーマをシンプルにシングル・トーンで演奏。このピアニスト、意外と無駄な音符の少ない人だ。ボサノバ調で軽快な調べ。

E"WINTER MOON" 一転して、暗い感じのテーマ。まさに「冬の月」。
F"A SUNNY RAIN" ドラムスが元気にはしゃぎ回り、力強いベースのソロもある。ほどほど硬派のジャズなのだ。

G"FAIR WEATHER" BENNY GOLSONの美しくも端正な曲。これもボサノバ調だが、ベースがテーマを取る。このベーシスト・JESPER LUNDGAARDはビートも強くてGOOD!テーマでもアドリブでも技術に裏打ちされた一種独特な雰囲気を持っている。

H"SKYLARK" 美しいバラードだがサラッとしていて好感が持てる。
I"OUT OF THE PAST" これもBENNY GOLSONの曲。ベースが効いているね。
J"WE COULD MAKE SUCH BEAUTIFUL MUSIC TOGETHER" まさに、曲名通り。

全編を通して、甘過ぎず、辛過ぎず、柔らか過ぎず、硬過ぎず、謂わば「中庸の良さ」が光る。反面、物足りなさを感じる人もいるだろう。
奇を衒わず、真面目に演奏している好感の持てるピアノ・トリオだ。デンマーク人のベーシスト・JESPER LUNDGAARDが存在価値を見せ付けている、そういう感じ。        (2003.09.06)


JAN LUNDGREN

独断的JAZZ批評 152.