坂を下りて 右に折れると そこもまた坂 団地、鉄塔、電線、そして 一番手前に 我が家を抱いて 空が広がる |
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安堵と共に無常感が ふっと足を留まらせている この角地 生活の営みが 縦横に飛び交った三十年 表札から消えていった 夫 空に 宇宙一丁目一番地と書こう 真っ先に入ることを 許された 我が家 |
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雨が上がり 桜花びら へばりつく坂 犬の母娘が 迷わず 門を くぐって私をひっぱり やさしく 空が微笑む |
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くっきり道が 浮かび上がっている 我が家門に つながっている 安らかさ ただいまと お帰りが 縦横に飛び交った三十年 この家から嫁にいった 娘 空に 宇宙一丁目一番地と書こう 宇宙で息づいてる とめどなく 我が家 |
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いつか腰が曲がり ようやく たどり着く坂 そんな遠くは ないのだ… そうだ おでんを作ろう 花冷えの 今日 空を見上げる |