その1 (原田氏の涙の雨は下の方に掲載しております。今回は とうどう みちよさんに歌っていただいたものをお聴きいただきます。) |
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ケンケンパー
時計が壊れてから 持たなくなった バスを待つ間は その時の気分次第 つま先があまり冷たいから 何度も行ったり来たりして ふっと口を突いて出た言葉 ケンケンパー ケンケンパー 亀の甲の石畳 夫は治る いいえ死ぬかもしれない 癌という川におぼれ もがいて半年 岸辺では何気ない日常 ボタン雪さえ謳歌しているのに あの手この手めぐらしながら ケンケンパー ケンケンパー 苦し紛れのおまじない 「君を護ってやれる今の俺なら」と 演歌のようなセリフを吐いていたのに 早春の陽射しに誘われて 土手をよじ登る つたのように 這い上がってくれぬのか 肩を並べ歩いたこの岸辺まで タバコを吸う姿が とてもとても好きだった 屋上で最後の煙よと 泣いて諭し こっそりとデジカメに収めた ディスプレーが涙で曇る 病院へ向かう道すがら ケンケンパー ケンケンパー やるせない暇つぶし |
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月見草の丘 ああ 信じられない 彼がこの世からいなくなるなんて 今日の始まりも 小犬と散歩 かっこうが鳴く 月見草の丘 夾竹桃が揺れ 卯の花におう垣根すり抜け 生きて在ることに熱き思い チロチロとせせらぎ清き瀬音 酸素マスクつけて横たわり 命乞うあえぎにもにて 私を呼ぶ声 風の中に聴く 病院で待っててくれる日わずか・・・ ああ 言葉がよぎる 「寿司食いに行くこと 夢のまた夢」と 「バブ」と名付けて帰りを待った 彼が連れて 散歩するはずだった 私はのんびり 家で 味噌汁つくって 待っていよう そうよ そうしたかったのよ毎朝 ギラギラ太陽が顔を出し始めた 月見草の丘 唇かんで影見つめる |
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