小田急線 電車の 窓辺に立つ

明かりがつき始めた 夕暮れの街

昼間は ほこりっぽいのに 

夜には ネオンのドレスで 身をやつしている

乗っている電車は きらびやかな宇宙船

右舷の月よ 街を見下ろしている 右舷の月よ

似合わない こんな嘘に満ちた地上では

あまりにも 神々しすぎる

乗客は 今日の日 仕事を終え

疲れたその身体を シートに埋めて

居眠り 始める人たち

だまって つり革につかまり 立っている人たち

下っていく電車は 光の帯 銀河鉄道

右舷の月よ 西の空で輝く 右舷の月よ

憐れみは 要らぬ 欲に満ちた人間など

石ころに 変えてしまえばいい

悲しいという こともなく 嬉しくもない

変わった事なんかも 今日とて なかった

ただただ 右舷の月のふち

不気味な こうもりの影など 吊るしたくなった

たちまちに電車は 芝居がかる宇宙船

 

右舷の月よ なぞに満ちて輝く 右舷の月よ

あがめたり すねてみたり 空想したり

今宵の逢瀬 楽しかった