股関節のリハビリテーション

変形性股関節症に対する手術法は、大腿骨骨切り術、臼蓋形成術、キアリ骨盤骨切り術、関節固定術、筋解離術、寛骨臼回転骨切り術、人工関節置換術などがある、
 ここでは手術を受けた人のリハビリテーションについて理学療法士及び患者用として出版された本などから要点を抜粋してみた。
 手術を受ける前の関節温存にも効果がある内容である。

股関節の仕組み
 股関節は骨盤(寛骨臼)と大腿骨頭の組み合わせによる臼状関節です。肩などの球関節に比べ運動性は著しく制限されている。
寛骨臼・臼蓋
 寛骨は腸骨・坐骨・恥骨からなる大きな陥凹の関節窩を形成し寛骨臼となる。同部は大腿骨頭を受ける部分で、馬蹄形の関節軟骨で覆われている。臼蓋は寛骨臼の一部で大腿骨頭を屋根状に多い体重を受ける。
関節唇(臼蓋唇)
 寛骨臼窩の周りは繊維軟骨からなる関節唇によって覆われ、大腿骨頭に被さるようにある。寛骨臼切痕の上に張っている部分を特に寛骨臼横靭帯という。
関節腔・関節液
 関節包に覆われた空間を関節腔といい、真空状態で少量の液体(関節液)を含んでいる。関節液は関節に栄養を与え、運動に際し、潤滑液として作用する。
大腿骨頭靭帯(円靭帯)
 関節内にある靭帯で、寛骨臼窩と大腿骨頭を連結するとともに血管を導入する。
関節包
 関節唇・寛骨臼・大腿骨頭をすっぽり包み込んでいる。いくつかの靭帯で関節包は外側から補強されているが、前面の腸骨大腿靭帯は全身中で最強の靭帯でY靭帯とも呼ばれている。
関節軟骨
 股関節において馬蹄形をした寛骨臼と大腿骨頭の擦りあう面は、ガラス軟骨で出来た関節軟骨で覆われている。関節軟骨は弾力性があり、2〜4ミリの厚さがあり骨相互の力の伝達や非常に滑らかな構造をし、低摩擦下での関節可動性に関与する。

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股関節の筋肉
 股関節には大きく分けると
   股関節を
    @屈曲(曲げる)する動作で使う筋肉 
      ふとももを持ち上げる力
      図1 股関節屈筋
    A伸展(伸ばす)する動作で使う筋肉
      足を後ろにそらす、足首を持ち上げてお尻につける力     
      図2 股関節伸筋
    B外転(開く)する動作で使う筋肉
      太ももを横に持ち上げる力
      図3 股関節外転筋
    C内転(閉じる)する動作で使う筋肉      
      股を閉じる力
      図4 股関節内転筋
 
    D外旋・内旋(捻る)する動作で使う筋肉
      上記の筋肉より深部にある筋肉
の5種類がある。
 変形性股関節症の人は、特に
     外転筋、伸筋
の筋力低下が著しいのが特徴である。
 これら中殿筋、大腿二頭筋、大殿筋は歩行時に支える側の足の能力に大きく関係するため、
弱い筋群を中心に股関節の周りの筋肉全体を強化することが重要である。

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リハビリテーションの考え方
● 望ましくない典型その1〜運動不足と肥満
 股関節症の在る無しにかかわらず、いろいろなライフスタイルがあるので、
一概に答えることは出来ません。ただし、望ましくない典型例というものは
あります。その一つは極端な運動不足です。運動不足は筋力低下と肥満につ
ながります。出不精になることでついつい食べ過ぎることも肥満の一因です。
一度、筋力低下と肥満が起こるとますます体を動かすことがおっくうになっ
てきます。
 われわれは、この悪循環に陥った人を何人も経験しています。さらに肥満
と共に恐いのは運動不足からくる骨密度の低下、いわゆる骨粗鬆症です。
 これは人工関節の弛みの原因となるからです。
● 望ましくない典型その2〜運動過剰と不適切なスポーツ
もう一方の悪い例は関節に過剰な運動負荷を日常的に加えることです。歩き
過ぎや過大な荷重は人工関節の磨耗を早めます。ご存知のように人工関節は
生体と異なって再生することはありません。人工物である限りは繰り返しの
圧迫と摩擦による磨耗は避けられません。自動車のタイヤなどの例で考えれ
ば判るように強い圧力とすり合わせ運動が材料の磨耗を早めるのです。この
ことは人工関節置換術を受けた人だけではなく、股関節症の人全般に言える
ことです。生体の関節軟骨の磨耗も同様にして起こるからです。
 痛みがないからといってマラソンに挑戦するのは無謀です。スピードの速
い運動も勧めることは出来ません。また関節の可動範囲を超えるような運動
や過激な衝撃は脱臼や弛みの原因にもなります。
 そのような理由で我々が股関節症の人に一番適していると考えているのは
水泳や水中運動です。
● 適度な運動と体重のコントロール
 「適度な運動と体重のコントロール」と言葉でいうのは簡単ですが、実は
これがたいへん難しいということは誰もが実感するところです。100人の
股関節症の人には100種類の運動プログラムがあると思ってください。
 この本のひとつの目的は「自分にあった運動プログラムを見つける手助け
となる」ことです。
● 痛みとの付き合い
 股関節症の人たちを最も悩ますものが痛みです。患者さんが一様にいう言
葉は、「この痛みさえなければ少々の不自由は我慢できるのだが」です。
 そのとおりだと思います。痛みは日々の生活を辛く苦しいものに変えます。
痛みを「嫌なもの」「なくしてしまいたいもの」と考えるのも無理のないこ
とです。
 しかし、一つだけ強調しておきたいことがあります。それは「もし痛みが
なかったら股関節はもっとずっと早くに壊れてしまう」ということです。関
節がこれ以上の負担をやめてほしいというサインが痛みなのです。このサイ
ンには従って下さい。
 なかには「少々痛くても我慢して歩けば力もついて痛くなくなる」という
人がいますが、これは間違いです。痛むときにはまず休む。そして痛みのな
い方法で筋力をつけるようにすべきです。
 また、痛みは股関節だけでなくいろいろな場所に出ます。なかには股関節
はほとんど痛まずに膝が痛くて我慢できないという人がいます。あるいは腰
が痛い人もいます。股関節の機能不全は全身の関節に波及します。いろいろ
な場面で股関節を無意識にかばうことが一つの原因です。
 痛みそのものはスジの疲労からくるものがほとんどで、これには理学療法
がかなり効果的です。このような痛みも放置しておくと慢性的なものになり
ます。早めに理学療法を受けるよう勧めます。いずれにせよ体全体の負担を
少なくするためにも痛みは重要な指標なのです。
 自分の体から発せられる声に耳を傾けてください。
● 股関節を守る5つの原則
 1 体重を減らす
 2 筋力をつける
 3 可動域を増やす
 4 日常生活を工夫する
    杖を使う、和式から洋式への変換等
 5 疲れる前に休む
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股関節を守る5つの原則 
@ 体重を減らす
 股関節に負担となるのは圧迫と摩擦です。臼蓋と骨頭の適合状態が悪い場合は
なおさらです。関節面の特定部位に負担が集中するからです。股関節にかかる
圧力は体重のおよそ5倍という報告があります。ですから、重い物を持つことは
もとより、降ろすことが出来ない荷物(体重)を減らすことは、もっと重要なのです。
A 筋力をつける
 関節は、スジによって守られています。筋力が低下すると関節が不安定になり
ます。不安定な状態で体重が加わると接触面である関節軟骨に過大な負荷がかか
ります。特に問題になるのは股関節外転筋(脚を外に開くスジ)です。この筋が
弱いと片足で体重を支えることが難しくなります。
 股関節症の人の横揺れ歩行の原因です。また力強く前進するためには股関節の
前後の筋も重要です。痛みが強くなると力を入れることが出来なくなります。そ
のことがさらに筋力の低下に繋がっていきます。痛みのない少ない方法での筋力
強化も必要ですが、大切なのは予防のためのトレーニングです。痛みの少ない方
法での筋力強化も必要ですが、大切なのは予防のためのトレーニングです。
 
B 可動域を増やす
 
 股関節症の症状に関節の動く範囲(関節可動域)が小さくなることがあります。
股関節症の人が歩くときに歩幅が小さいのはこのためです。その他の日常生活で
の動作では足の爪切りや靴下の着脱などが難しくなります。関節可動域の制限は
痛みの原因にもなります。例えば伸展(脚を後ろに伸ばす)方向の制限は、立っ
たときの出っ尻姿勢の原因です。この状態で長く歩くと膝や腰にたくさんの負担
が生じます。膝の痛みや腰痛を引き起こすことになります。また、外転方向の制
限は、股関節の荷重面を減少させることになるので症状の進行を早めます。
 このような理由で関節可動域を増やす運動は、とても重要なのです。
C 日常生活を工夫する
 
 杖を使うことにより股関節に加わる負荷を軽減させることができます。痛みが
あるときに杖を使うと楽に歩けることは、多くの人が経験していることと思いま
す。ところが予防のために杖を使う人は多くありません。外見上の問題なのでし
ょうが、人工関節の寿命を延ばすためではなく、症状の進行を遅らせるためにも、
もっと積極的に杖を使うべきなのです。
 また、人工関節の人にとって床からの立ち上がり動作は大きな負担です。和式
生活からベッドへの変更を勧めています。その他、台所仕事や家事動作による負
担を軽減するためにも、動作の工夫や道具の使用を是非考えて下さい。
D 疲れる前に休む
 入院されてくる股関節症の人の話を聞くと、症状を悪化させた要因に共通する
ことがいくつかあります。「引越しをしたときから急に痛み出した」「仕事が忙
しくなって痛くなった」「育児に追われているうちにだんだん辛くなった」など
です。ある一定期間に休みなく股関節に荷重と筋疲労を加えるような状況です。
 筋が疲労してくると関節を守ることが出来なくなります。股関節の症状は少し
遅れて出てくるのも悪化させる原因かもしれません。そのときはそんなに痛くな
くとも関節への負担は蓄積されるのです。疲れる前に休みましょう。一休みすれ
ば筋力は回復します。それからまた活動すればよいのです。そのようにすること
で股関節の負担は、はるかに少なくなります。疲れてしまうまで歩く、立ち作業
をするというのは止めましょう。
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屈筋群の筋力を強化する その1【腹筋】
 筋力トレーニングは、その運動でどの筋肉が働いているかを確認しながら、
自分の筋力に合わせて行うことが大切です。自分の筋力を認識して(自覚して)
正しい運動を行わないと、いくらトレーニングを重ねても必要な部分の筋力は、
ほとんど強化できず、間違った方法で別の筋肉を強化することにもなります。
★ 股関節屈筋群の筋力強化法
 股関節屈筋群は、腹筋を働かせることで効率よく働かせることができます。
そう考えると腹筋の強化も必要になります。また、股関節屈筋群の強化時は、
働きやすいように腹筋に力を入れながら行うことがポイントです。
 
● 腹筋の運動
 腹筋は大別して、腹直筋(真ん中)と腹斜筋(わき腹)に分かれています。
@ 腹直筋の強化(クランチ)
 床にヒザを立てて仰向けになり、ヒザに手を伸ばす。又は、腕を胸の前で組む、
手を頭の後ろで組む方法もある。手を頭の後ろで組む場合、手で頭を引っ張る
ことがないように注意する。(頭を手で無理に引っ張ると頚椎のヘルニアになる)
 肩甲骨を浮かせるが腰部までは上げない。床に敷いたジュウタンを巻き上げ
る状態をイメージする。ちょうど自分のヘソを覗く気持ちで息を吐きながら頭を上
げ、その姿勢を4〜5秒維持して床に戻る動作を最低でも20回以上を1セットと
する。高回数が良い。
A 腹斜筋の強化【その1】クランチの応用
 腹直筋と同じ姿勢で、左手で立てた右膝の頭を触る。要するに捻って逆の手で
反対側のヒザを触る。
B 腹斜筋の強化【その2】サイドクランチ
 横寝して上側の手をわき腹に構え、下側の手を頭に当てた状態で息を吐きなが
ら体幹を少し持ち上げ、4〜5秒維持して下す動作を最低でも20回以上を1セット
とする。
 
 

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屈筋群の筋力を強化する その2【股関節屈筋群】
 股関節屈筋群とは、大腰筋・腸骨筋(腸腰筋)を指し、大腿骨を体幹に引き付ける際に
使用される筋肉である。
※普通の腹筋(足首を固定し、上体を完全に床から持ち上げる動作)をしても強化されるが、
普通の腹筋は下肢に過大な負荷がかかるため、股関節に異常のある人には向かない。
● 股関節屈筋群の強化
 床に仰向けになり、ヒザを立てた状態から片足ずつ足踏みをします。反動を使わないように
ゆっくり行います。腹筋を働かせるため頭を持ち上げて行うともっと効率的です。
 この運動でも十分ですが、両足を同時に持ち上げると、もう少し強い運動になります。
※特に両足でやる場合で、腰が反ってしまうときは、強度が強過ぎるので要注意。腰を痛める
可能性があります。強度を下げましょう。
 

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股関節伸筋群の筋力を強化する
@ 股関節伸筋群の強化 その1【ヒップアップ】
 床に仰向けになり、ヒザを立てた姿勢からお尻を床から上げます。このときお尻を高く上げ
過ぎないこと。
A 股関節伸筋群の強化 その2【ヒップレイズ】
 うつ伏せになり、胸と腹の下に座布団を敷いた状態でゆっくりと足を交互に床から浮かせる。
このとき、足を上げ過ぎて腰が反らないように注意する。(腰を痛める)
B 股関節伸筋群の強化 その3【足踏み】
 @の状態でお尻を床から浮かせたまま、足踏みをする。

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股関節外転筋群の筋力を強化する
@ 足の開閉
  床に仰向けになり、両足を揃えた状態からゆっくりと足を開く、閉じるを繰返す。単に床の
上で足を横に滑らせるようにずらすだけであるが、これでも十分に筋肉は働く。要は痛みなく、
筋肉を動かすこと。畳の上だと摩擦抵抗が大きいが、床の上で靴下を履いてやるとスムーズ
に出来る。
 同様の動作をうつ伏せでもやる。
A 足の横上げ
 床に横向きになり、上側の足を横に上げる。かなり、きつい運動なので、出来ないときは、ヒザを曲げた状態でやると楽に出来る。

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股関節内転筋群の筋力強化
● 足の前上げ
 仰向けの状態から、左右の足を30センチくらい床から交互に浮かす。
 20回を1セットとして3セットを目標。

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Last updated: 2011/2/13