ユニデン HFトランシーバー 2020 (TEMPOブランド)


 ユニデン2020はダブルコンバージョンが主流だった当時珍しくシングルコンバージョン方式を採用していました。3.5MHz帯〜28MHz帯および27MHzをカバーし、電波形式はSSB、CWの他AMも送信できるようになっていました。
 2020はユニデンのOEMで米国のTEMPOブランド名でも発売されたていました。現在入手できるのはTEMPOブランドが多いようです。
ユニデンブランドの2020は希少価値があります。
 当時のTS−520などと同じく送信部のドライバー段と終段以外は半導体化され、ドライバーは12BY7A、終段は6146Bを使用しています。
「シングルコンバージョン方式」と言うと何か少し性能的に劣るように思うかもしれませんが、さすがプロ仕様で機械的強度や電気的な性能は当時のアマチュア無線機の中では最高級機と言って過言でありません。
 
 当時TS−520Dが10万程度でしたがこの2020は20数万円もしました。
価格が高い分、販売台数は国内では大変少なく、今となっては大変貴重な無線機と言えます
 当時の無線機と比べ特徴的なことを上げると以下のようになります。
@構成がシングルコンバージョン方式(その後発売されたTS−530、FT−901はシングルコンバージョンです。)
AVFOの発振幅が100Khz(当時は500〜600Khzが一般的で、コリンズは200KHz幅でした。)
 そのため発振は極めて安定しております。
B選局と周波数読み取りは世界で初めてディジタルとアナログの組み合わせを採用
C送受信で独立したRF回路(基板)を採用(コストは高くなりますが送受信とも最良の状態に調整できる利点があります。)
D2重RIT方式を採用(RITの調整周波数が5Khz幅と1Khz幅を選択できるようになっています。)
ELSB、USB用に独立したフィルターが使用されています。(TS−520などのSSBフィレターは1つです。)
Fオプションにはなりますが27MhzCBバンドの送受信が可能
Gプロで採用されていたプラグイン基板方式を採用(後にヤエスがこの方式を採用しました。)
H電源部はAC、DCの両方が使用可能(米国のAC電源は117Vですが日本仕様は100Vです。)


画像をクリックすると拡大します。

入手時の状態
 
2020は米国仕様はAC電圧は117Vですが日本仕様はAC100Vです。
@外観はタバコのヤニで汚れが目立ちます。
A各ロータリースイッチ、プッシュスイッチ、VRなどには接触不良、ガリが認められます。
B真空管廻りの各電圧は正常範囲を示しております。
C送受信が当初できなかったのですが、各スイッチの接触不良やリレー2個所の接点を洗浄したところ曲りなりにできるようになりました。
具体的には送受信バンド切り替えスイッチ、モード切替スイッチ、トーグルスイッチ、プッシュスイッチ、リレー2個所、各ボリュームなどの接触不良を解消しました。

ロータリー、
プッシュ、
スナップスイッチ、
VRなどの
接触不良・ガリの修復

 一寸した不具合や送受信ができないなどは各スイッチ等の接触不良が原因のケースが多く見られます。ロータリースイッチなどの接触不良を修復しただけで正常に動作するようになることもまれではありません。
 
無線機等は長期間動作させないと、ロータリースイッチ、スナップスイッチ、プッシュスイッチなどのスイッチ関係の接点やボリュームの接触面が酸化皮膜等で接触不良になり、正常に動作しないことが良く見られます。接触不良が原因で全く送受信ができないこともあります。
 接触不良を解消しただけで元のように正常に動作する例は多くあります。
・全く受信ができない、
・ボリューム類にガリや接触不良が見られる、
・AGCの切り替えができない、AGCをオフにしてもSメーターが振る、
・METER切り替えが上手くいかない、
・RIT調整ができない、
・RF ATTが動作しない、
・スタンバイスイッチを動作させても送信状態にならない
・バンドによって受信出来ない、
などは接点の接触不良が原因の場合があります。
 接点の修復は多くの場合接点洗浄剤で修復することができます。接点復活剤はNGです。
接点復活剤はべとべとする溶剤がそのまま接点周りに残りショートしたり、容量や抵抗値を示したりする危険が大です。
 接点洗浄剤は溶液が蒸発するのでこのような心配はありません。
ただし接点洗浄剤の溶液も蒸発するまで多少時間が必要です。電源を入れるのは30分以上経ってからが無難です。
 接点復活剤を使用する場合はスプレー式はさけて、ハケや綿棒で接点に直接塗布する方法であればトラブル防止につながると思います。
 実際にこれまで多くの無線機をレストアしてきましたが9割以上を復活させることができました。勿論、これだけで復活するわけではありませんが、修理の第一歩です。
・リレーの修復
 繰り返しますが接点修復には接点復活剤はNGです。溶液が残り修復不可能なトラブルを引き起こします。リレーの場合間違いなくNGになります。
 リレー接点が黒く変色している場合は2000番の紙やすりをリレー接点に挟み込んで丁寧に落とし接点洗浄剤で洗浄します。

フロントパネルを取り外す
 この2020はフロントパネルの上部、側部、底部の平ネジを取り外し、サイド下部のボルトを緩めるとボルトを起点に前方向に倒すことができます。
パネルに取り付けられた部品の交換などができます。

デジタルカウンター
 この2020はHFトランシーバーで初めてデジタルカウンターが採用されています。
デジタルカウンターは3桁で1桁目が100KHzです。2桁目が1MHz、3桁目が10MHz台を表示しています。
100KHz未満はアナログ表示で、デジタルとアナログがミックス表示1KHz直読となっています。

AVG切り替えスイッチの交換
 AVG切り替えスイッチに破損が見られました。このままでも使用できないことはないのですが交換することにしました。
このスイッチは現在入手不可能です。同じ種類のスイッチとしてTS―820のトーグルスイッチが使えそうです。若干TS−820のスイッチの方が1mmほど大きいので取り付け部をヤスリで削り広げ取り付けました。
左がTS−820用、右が2020オリジナルスイッチです。
2020ではAVGオフでもSメーターが振れます。

電源トランス配線をAC100仕様に変更
 TEMPO−2020はユニデンのOEMとして米国で発売されました。日本仕様か米国仕様かよく確認する必要があります。
117V仕様のまま日本のAC100Vで動作しないことはないのですが、20Vほど電源電圧が低い状態で使用することになり、十分な性能を発揮することはでき無いと思います。(KWM−2などは国内でもそのままAC100Vで使用している局は多くあります。)
@入力AC電源は写真トランスのタップ右端から117V、110V、100Vの順に配列されています。
A米国仕様の場合は右端の配線を100V端子に付け替えます。
Bもう一か所の117V端子ラインを100V端子に付け替えれば作業が完了です。

高圧平滑コンデンサー基板面の状態
 2020の高圧電源の平滑回路ようコンデンサー基板面です。
高圧コンデンサーは防爆栓の膨らみもなく良い状態を維持しています。
TS−520や830、FT−101などの古い無線機では防爆栓の破損や膨ら見られますが、2020では良い状態を保っています。
使用した部品の耐久性が良い物が使用されたのではないかと思っています。

送受信RF基板
 2020では送信用RF回路と受信用RF回路が全く独立して回路を構成しています。
そのため送信状態と受信状態を別々に最良の状態に調整することができます。
TS−520などではSメータ最大値と、送信パワー最大値と一致しないケースは良く見られます。

同調の仕組み
 ヤエスやトリオ無線機のRF基板は送受信兼用で一つですが、2020のRF基板は送信用基板と受信用基板と別々の基板に組み込まれています。当然コイルやバリコンなども別に備わっています。
送信部と受信部の同調回路も別で一つのバンド切り替えツマミで送受信基板のバンドスイッチを同期をとって切替、同調回路も一つのツマミで送受信基板のバリコンを同期をとって回転するようになっています。
切り替え、同調の同期をとるためにチェーンとギアを組み合わせて行っています。構造は大変複雑です。
同調の仕組みは画像を参照ください。

受信RF基板7MHz同調が取れない
 7MHz以外のバンドはマーカー信号はS9程振っていますが、7MHzは1程度です。
7MHz同調コイルコアーが入り切った状態でピークにならずS3程度です。コイルに平行に接続されているコンデンサー容量抜けの場合よく見られる現象です。
 本来であればRF基板を取り外し不良コンデンサーを交換するのですが、受信RF基板を外すには、送信RF基板を含め複雑に取り付けられているギヤー&チェーンを外す必要があります。
今回は簡便方法として7MHzバンド切り替えスイッチの位置が正面に位置していたのでこれを利用して数個のコンデンサー(445pF)を組み合わせて同調させることにしました。これで7MHzも実用レベルにすることができたと思っています。この2020バンド切り替えは回路図を見ると各コイルの中間タップを切り替える方式です。

RECTユニット抵抗交換
 
古い無線機のカーボン抵抗によく見られる現象ですが、抵抗値が1〜2割ほど増加する傾向が見られます。
この2020のRECTユニットのR1〜5にも同様の変化が見られました。
このR1〜5はファイナルBIAS電圧の調整範囲に影響を及ぼします。
この抵抗がズレているとBIAS電流調整範囲が指定範囲に調整できなくなることがあります。
このためR1〜5抵抗を新しい物に交換しました。

電源コネクター
 
写真はAC用コネクターです。
このコネクターにはAC用DC用の2種類があります。
この種のコネクターの入手は大変難しくなっております。コネクターが入手できないときは写真を参考に自作するか、直付けで対応することになります。

局発はオールバンド実装
 この2020にはオプション水晶も含めオールバンドの水晶が実装されています。
27Mhz水晶が入っているので、CBバンドの送受信が可能です。
2020では29.0、29.5、27.0、JJY15.0Mhzはオプションとなっています。

フィルターユニット
 TS−520などはLSB、SSB用フィルターは通常共有していますが、この2020はではLSB、SSBとそれぞれ専用のフィルターが実装しています。この20202はCWフィルターが実装されているのでCW運用も快適に行えます。
 基盤は大変綺麗でプリン路基板面の痛みも全く見られません。
特に、プラグイン部分は大変綺麗です。FT−101などもプラグイン方式を採用しているのですが差し込み部分の劣化が見られるものが多いように思います。

IFユニット
 このユニットには送受信共用のIFアンプと、受信専用のIFアンプ、SSB、CW、AMの復調器、AGC/ALCアンプが入っています。
また、SSB、CWとAM
の場合の音量差を補正するためのAFプリアンプが入っています。
IFアンプには直線性の良い増幅を得るためにFETが使用されています。

AFユニット
 
受信用AFアンプとCWモニター用のトーン発振器、VOXおよびANTI−TRIPが組み込まれています。
AFパワーアンプはSEPP−OTLとなっており、出力音質とも優れた性能を発揮していると思います。



RF、IF調整
@RFユニット&コイルパックの調整 
 RFユニットは受信感度調整は受信用RFユニットのコイルのコアーを
 送信出力は送信用RFユニットのコイルのコアーを調整します、
 調整周波数は1.9、3.75、7.15、14.175、21.225、28.8Mhzで調整しました。
AIFユニット
・ 
Sメーターが最大になるようL351〜354を調整しました。
BSメータはIFユニットR392、R387を調整しました。
 14.175Mhzで34dbμVのSSG信号をいれ、S9になるように調整しました。
 この状態で54dbμVを抽入するとS9+20dbを示します。

終段BOXの状態
 終段BOXの格納状況はトリオ、ヤエス無線機と真空管、バリコン、コイルの配置は全く違う構造となっています。
特に真空管は左右対称の配置となっています。

中和の取り直し
 中和を取り直しました。
@終段の中和調整のため50Ωのダーミロードを準備します。
Aダーミロードへの出力を最低に調整することにより中和をとります。
Bまず21.3MhzCWモードで出力調整をします。
Cダーミロードへの出力をIN60などで整流し出力電圧を測定します。
D電圧が最小になるように中和調整バリコン(終段ケースの中にある)を調整します。
今回はほぼ0Xになるように調整できました。

内部配線、部品の状態
 内部配線、部品の状態は比較的良い状態です。
また、冷却ファンは埃で汚れていたので取り外し清掃しました。

完成
 出力は100W出ています。
AMは25Wです。

下のイラストをクリックするとそのページを表示します。


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