TRIO HFトランシーバー TS−311
TS−311は、トリオ株式会社から1971年頃に発売されていたHF帯オールバンドの CW・SSBトランシーバです。 当時はスリーイレブンと呼ばれていて電話級免許と相まって結構人気の機種でし た。この時期トリオから発売されていた TS−801とは基本設計が同じ で回路構成などがほとんど同じでした。概観とか付属回路 に変化を持たせて目的別に販売されていましたがこのT S−311はTS−511の廉価版と言った位置づけで、入門機と言った感じでした。付属回路は殆ど無く前面パネルもスッキリとしています。 メータ表示はSメータとIP表示のみでRF出力はネオ ロードチューンとか言うランプでの確認でした。送信中は何時も パカパカと光っていて結構目障りでした。発売価格は7万から8万円で、TS−511は少し高級機と言った感 じで価格は89,800円と少々高めの設定でした。 またこの無線機はオール真空管では無く、真空管10本と トランジスター11石の球石混合構成です。送信回路の メイン部分は真空管でVFO回路とかSSBジェネレー ター回路などがトランジスターの回路です。
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入手時の状態 @外観はそれなりに痛んでおりますが、年代物にしては比較的良い状態を保っていると思います。 Aしかし、写真で分かるように正面左下のプラスチックがハンダ鏝でも当てたのでしょうか、熱で溶けて変形しております。 B電源が入り7Mhzの信号は確認できましたが、そのほかのバンドは受信できませんでした。 C音量各ボリュームにガリ、接触不良が認められます。 D7Mhz以外受信できないのはバンドスイッチの接触不良のためと思われます。 Eモードスイッチにも同様の接触不良が見られます。 E内部は埃で汚れています。 Fトランジスター用電源として問題となる150Xから13Xに落とすための2.2KΩ7W抵抗は問題なさそうです。 2.2KΩ抵抗には約70mAが流れています。本来は11W以上のワット数の抵抗が必要です。 7W抵抗では焼き切れてたり、発煙の原因になったりします。実際発煙のトラブルは多いようです。 GTS−311は中和用コンデンサーは取り付けられていませんでした。 H同様に感度調整用のRFボリュームもありません。 ITS−511についているロード用バリコン回路もなしです。アンテナの状態によっては出力が出ないという現象も起こりえます。
回路変更など @ドライブ調整用は本来ゴムバンドが使用されていたのですが、劣化で切れてしまったようです。TS―520と同様のの鎖方式に変更しました。 Aトランジスター用電源として150Xから13Xに落とすための2.2KΩ抵抗は今のところ問題はありませんが、ここも変更することにしました。 B真空管ヒーター用の12V電源を半波整流し、1000μF平滑コンデンサを挿入し、47Ω抵抗を通して ツェナーダイオードにつなぎました。 これで今後発煙などのトラブルは避けられます。
修理&調整 @正面パネル、ツマミにヤニなどが付着し汚れていたので洗浄しました。正面パネルは洗浄液(シンプルグリーン)で落としきれなかったのでクレンザーで磨き上げました。 Aプリント基板などの汚れ除去 ・プリント基板は埃が薄く固まった状態で、刷毛でこすっただけでは除去できませんでした。 ・割りばしでこすり固まった汚れを削り取った上でアルコールでふき取りました。 ・同様にシャーシなどの汚れも根気よく除去しております。 Bバンド切り替え、モード切替スイッチの修復 ・各ロータリースイッチは接点洗浄剤を振りかけスイッチを回転させて修復しました。なお、接点修復には接点復活剤はNGです。溶液が残り修復不可能なトラブルを引き起こす可能性が大です。 ・特に終段出力のバンドスイッチは接点復活剤を振りかけるとスイッチに残った溶液のためインピーダンスが変化し全く出力がでないトラブルに繋がりかねません。 Cボリュームも接点洗浄剤で修復しました。 DRFコイルの調整 ・ドライブツマミを12時にセットします。調整には外部の25Khzマーカー信号を使用しました。 ・3.5(3.75Mhz)、28.5(28.8Mhz),21(21,225Mhz)、14(14.175Mhz)、7Mhz(7.15Mhz)の順にMIXコイルを調整しました。 ・この調整は順序を守り4〜5回繰り返す必要があります。4〜5回後はコアーの位置はほとんど変わらないはずです。この調整によりマーカー信号でSメータの降らなかった28Mhzマーカー信号が1程度振るように改善されました。 Eドライブコイルの調整 ・ドライブコイルは送信状態で調整しました。調整はRFコイル調整方法と同じです。 ・ドライブコイルはマーカー信号の受信でも調整できますが、なぜかSメーターの振れが最大と出力最大値が一致しません。 ・原因が不明ですがSメーター最大値に合わせると出力が極端に落ちてしまいます。 FIFユニット ・ Sメーターが最大になるようT1〜T7を調整しました。。 GSSBのベース電流は30mAに調整しました。 H中和を取リ直そうと思ったのですがそもそも中和回路が付いていませんでした。 I3.5〜21Mhzの受信感度は大変良いと思います。28Mhzは他のバンドに比べても感度も少し悪いように思います。周波数安定度も問題なさそうです。 J送信出力は7Mhzで20W近く、14、21Mhzで10W前後、28Mhzは数Wです。 K終段S2001は劣化していたので別のものと交換しました。また、他の真空管は真空管チェッカーでチェックしgoodの範囲であることを確認しました。
正面左下のプラスチック破損個所修復 先の写真にある通り正面左下のプラスチックがハンダ鏝でも当てたのか、熱で溶けて変形しておりました。あまり目立たない箇所なのでそのままでも良かったのですが、より目立たないように修復することにしました。 @補修用パテ剤(2剤を混ぜ合わせてプラスチックを形成する修復剤)を使用しました。この部材はDIYで入手できます。 Aよく練って、変形してえぐれた部分に埋め込みました。 B完全に固まった後、ヤスリやサンドペーパーで形を整え黒塗装を施しました。
完了 @4〜5時間電源を入れた状態でも動作に問題は見られません。 A7MhzCWモードで20W近く出ております。 BSSB変調も綺麗にかかっております。 C受信感度も大変良い状態を保っていると思います。 D内部はもちろんのこと外観も大変綺麗になりました。
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