コリンズ 受信機 R−390A/URR 


 コリンズR−390Aは第2次大戦後の米軍の主力受信機として、R274シリーズ・・・・R388シリーズ・・・・R390シリーズ・・・・51Sシリーズ・・・・シンセサイザ機種へと変遷する中で、電気的構成とギヤーメカニズムを見事に融合させた最高級受信機の一つです。R390A/URRはアメリカ軍の発注により、Collins RadioCompanyで設計された軍用受信機で、軍用仕様であることから、使用されている部品とその材質は素晴らしいもので、受信機の特性として現在でも実用機として優れた性能を有しています。
 
R390Aは最新の受信機に比べれば、筐体も大きく、ダイアルも堅いなど使い勝ってはそれほど良いとはいえませんが、いまだに受信性能は抜群で、強烈な個性を持った受信機といえます。そのためか、世界中に愛好家がおり、R390Aを専門とした数多くのホームページがあります。
 昭和51年発行の「海外短波放送を聞こう」日本放送出版協会には、「いまだアメリカ軍現用の、新品なら100万円以上する最高級受信機」と紹介されております。1980年代前半頃まで軍事用として使用されていたようです。
 いわゆる「赤本」に解体方法から、メンテ方法まで載っており、以前より気になる存在でした。その重量が34 kgにもなりますが、
ユニット交換でメンテナンスが可能なこと、すばらしいギヤーメカニズム、メカニカルフィルタ4本登載、デジタル表示ダイヤル等数々の機構を取り入れた名機だと思います。
 
この無線機は、先に依頼されて整備調整した同じコリンズのKWM−2のお駄賃としてローカル局から提供していただきました。
 なお、マニアルは「TM-11-5820-358-35.pdf」をキーワードにしてインターネットで検索すると容易に入手することができます。英文ですが各種コイルの調整方法が117から118ページに詳しく掲載されています。

写真をクリックすると大きくなります。





 

内部構造
@いかにも軍用機と言った正面パネル。500Khz〜32MhzまでAM、SSB、CWの受信が可能です。
Aユニットは上部と下部2つに別れています。
・上部には高周波、Mix、中間周波部が組み込まれています。
・下部はPTOユニット、電源、AFユニットが組み込まれています。写真では電源とAFユニットが取り外されています。
PTOについて
@これまでの受信機のほとんどは、バリコンによって局部発振器の発振周波数を変化させていました。
Aコリンズ社では早くからコイルの中にダストコアを出し入れして、インダクタンスを変化させる方法で発振回路の発振周波数を変える方法を使っています。
Bこの方法はバリコンを使って周波数を変化させる方法に比べて、コアの機械的変化に対する周波数の変化が直線となる様に補正しやすくなっています。このためダイヤルの周波数読みとり精度が各段に良くなります。
Cしかし、ダストコアの出し入れによるインダクタンスの可変範囲はそれほど広くとれないため、局部発振器の変化周波数を1Mhz程度とした親受信機を構成させて、局部発振器に水晶片を使用したいわゆるクリスタルコンバーターを付け、500Khz〜32Mhzまで受信周波数帯域を広げるために水晶片を切り替える方法を取っています。これが「コリンズ方式」の受信機の最大の特徴です。


IF部

IFシャーシ内部

AF部

AFシャーシ内部

電源部

電源上部

これらユニットで15Kg

電源は115X
@コリンズ無線機の電源電圧は115Xです。このR−390Aも115Xです。230Xの場合もあります。
A日本の100Xでも動かないことはありませんが、充分な性能を発揮することはできません。
B信号強度を示した写真です。左が電源電圧が100Xのとき、右が115Xの時です。Sにして2つの違いが出ます。
C100Xを115Xに上げる方法には、写真のようにスライダックを使用するのが簡単ですが、12Xのヒータトランスを利用して約115Xにする方法があります。

電源電圧の簡易昇圧方法

 コリンズ等のWの機械はステップアップトランスで電源電圧を115V位に昇圧して使う事が鉄則ですが、トランスをわざわざ買わなくても一次100V、二次12Vくらいのトランスが有ればBOOST接続で昇圧が出来ます(右の接続図参照)。この接続なら、一次電圧+二次電圧の電圧が得られます。因みに、最近のWの電源電圧は120V位にもなる場合があり、古い機械にとって問題となるので、ヒータートランスを使い降圧して使用している場合があります。なお、許容電流は二次側に依存すると考えれば良い。なお、安全の為に一次側には必ずヒューズを入れます。

調整
@TM-11-5820-358-35.pdf」の117から118ページを参考にコイルの調整をしました。
AIFT部に使用されている6AK6に劣化が見られたのでラインアウトで使用されている6AK6と交換しました。ラインアウト部の6AK6は単に音量メータを動作させているだけなので、性能が落ちていても動作に問題はありませんでした。

ギヤー部他
@ギヤーの構造詳細はこちらをご覧ください。
A各ユニットはプラグとネジを取り外すだけで容易に取り外すことができます。ハンダしている箇所を外す必要はありません。
Bまた、ユニットのネジはユニットから外れることがないので紛失する心配がありません。流石軍用!
Cメータに付いているボリュームはメータ感度調整用です。

メカニカルフィルタ
@
メカニカルフィルタは2/4/8/16khzの計4本を標準装備しています。
IFユニットに4本を装着し、さらにクリスタルフィルタにより0.1khzの特性を得ています。このときにも2khzのメカニカルフィルタは挿入されたままの状態で、クリスタルフィルタのスカート特性の悪さを改善しています。
A普通の受信機では今でも2本標準装備であとはオプションですから、4本標準装備というのはかなり贅沢スペックです。
しかし、このメカニカルフィルタも製造してから数十年も経ちますと封入ケースの内部での断線故障が発生することがあります。
この断線故障の原因は、メカニカルフィルタの機械振動ユニットを封入ケースにホールドしている緩衝材が劣化して融けた状態となり、緩衝材として機能しないため、無線機の移設や運搬などの衝撃や振動により封入ケース内部で機械振動ユニットが揺れて、貫通端子内部の半田接続部分で断線することがあります。
B2/4/8/16khzを切り替えた時に感度に差がある場合はメカニカルフィルタの劣化を疑ってみるべきです。とは言っても新しいものと交換することは難しいのでそのまま使うしかないかもしてませんが!

ギヤーメカニズム
@この機種の最大の特徴は他に類を見ないRF・IF部のギヤメカニズムです。
ARFユニットのギヤメカニズムはコアーがスムースに上下する超ウルトラC的華麗な動きをします。
B高周波増幅部の同調機構は6列のスラグラックを装備し、写真左側からF・E・D・C・B・Aの順に配置しています。
Cこのスラグラックはメガヘルツチェンジノブの変化に従って、F=0.5M-1.0M=0.5M幅: E=1M-2M=1M幅 : D=2M-4M=2M幅 : C=4M-8M=4M幅 : B=8M-16M=8M幅: A=16M-32M=16M幅をカバーする様になっています。
D従ってスラグラックの上下動のストロークは、Eの1Mhzのストロークを1とすれば、F=2,E=1,D=1/2,C=1/4,B=1/8,A=1/16のストロークとなり、上下にガチャ、ガチャと動きます。この動きに従って当然IF部のスラグラックも連動して上下することになります。
Eさらにキロヘルツチューニングノブを回しますと、メガヘルツチェンジノブに従って変化した位置からさらにキロヘルツチューニングノブの変化分だけスラグラックが連動してわずかにスライドし、目的の周波数に同調させる動きをします。
まさに、ギアーメカニズムの芸術品です。

工具
コリンズ無線機を修理する場合、特殊なレンチ(ブリストルレンチ)が必要になります。
通常の6角レンチは使用できません。
また、無理にこじ開けようとするとネジ穴が壊れてしまうと、その後取外すことができなくなってしまいます。

チョットした不具合修理
@ケースのゴム台が無かったので新たにつけました。この部分のネジはISO規格です。
Aシャーシなどに使用されているネジはUS独特の規格ネジが使用されています。紛失すると入手が困難です。
Bデジタル表示板のガラスが外れていたので接着しました。
Cその他数箇所の真空管ピンの接触不良箇所を補修しております。(感度が上がったり下がったりする動作不安定の原因でした)

動作状況
@流石プロ仕様、安定度は抜群と言っていいと思います。
ASSBはプロダクト検波でないため強い信号の時少し音がひずみます。RFを絞れば問題はありません。
BSSBモードに切り替えると信号メータが振れないように改造されています。BFO信号で信号メータが振れてしまうので振れないように改造?したのかもしれません。BFOスイッチをオンにすると2個のリレーが働き、BFOにB電源が供給され、メータが切り離されます。
Cダイヤルロックが取り外されS付きボリュームが付いています。色々調べたものの良く分かりませんでしたが、外部入出力用ゲイン調整用かもしれません。動作には全く問題はありませんので、そのままで使用しております。

その他

@スピーカーは内蔵されていないので、別に準備する必要があります。AF出力インピーダンスは600オームなので、4−8オームなどのローインピーダンスのスピーカーやヘッドホンを使用する場合は,アウトプットトランスでインピーダンスの変換を行う必要があります。今回はST−48を使用しました。また、ヘッドホンをプラグに差し込んでもスピーカーの音は切れません。
Aアンテナ端子は、平衡式アンテナ用(125オーム)と不平衡式アンテナ用(50オーム)の2つがあります。 
R390Aのアンテナ回路は、平衡式アンテナ端子から入力された信号が「アンテナ同調回路」を通り、RF増幅回路に送られる一方、平衡式アンテナ端子から入力された場合は,アンテナ同調回路を通らず直接幅回路へ送られる方式になっています。
Bメカニカルカウンターの表示は、バンドごとに誤差がありますので、正確な周波数を表示させるためには、バンド切替ごとに、校正する必要があります。・
私のR390Aでは、各バンド500KHzで校正すれば、同一バンド内においてほぼ正確に表示されます(周波数ズレの大きい物は、100KHzごとに校正するしか無いと思います)。
・使用するバンドにおいて、500KHzを表示させ、「ZERO ADJ.」つまみを回してカウンター表示を固定します。
・「FUNCTION」スイッチをCAL、「BFO」をON、「BANDWIDTH」スイッチを「1」にセットします。
・「KILOCYCLE CHANGE」ダイアルを左右にゆっくり回して(ほんのわずかです)、ゼロビートをとる。
・ゼロビートがとれたところが校正ポイントとなりますので、「ZERO ADJ.」つまみをゆるめて、カウンター表示の固定を解除します。
・周波数のズレに関連するものは、ギヤー等の機械的な部分、PTOの直線性、水晶発信器(特に第一局発)の固有の誤差でほぼ決まります。
CR390Aではバラスト管3TF7がPTOとBFOのヒーターの安定化に使われており、現在では入手が困難になっています。AC25.2Vの電源に直列にこの3TF7が接続され、約12.6Vに電圧を安定化させ、PTOとBFOの5749(6BA6)が二本直列になっています。

下のイラストをクリックするとそのページを表示します。


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