トリオ JR−310

 JR-310は、1970年前後にTX−310と対で発売された3.5〜50Mhzまで受信できるSSB、CW、AM受信機です。
HF帯が5MHzと455KHzのIFに落とすダブルスーパーで、50MHzは28MHzIFのクリコンを付加したトリプルスーパー方式となっています。他機種に無い特徴として面白いのは5MHzのIFが可変同調となっているところです。混変調やスプリアス特性を改善するために手動式同調方式を採用していたものと思われます。
 JR—310の455KhzIFは東光のメカフィルが使用されています。このメカフィルは9R59Dに使用されているものと同じでないかと思われます。
 また、バンド切り替えはハムバンドごとになっていますが、RF部同調はTS−510のようにバンド別ではなく9R-59に近い作りになっていて3.5〜14Mhzと21〜28Mhzがそれぞれ1つのコイルとバリコンで同調を取る方式になっています。コスト削減のためだったのでしょうか。
そのため、バンド切り替え都度RFとIFの同調を取り直す必要があります。
 この受信機は、TS-510の延長に当りますが、SSB機が高価でそれほど普及していなかった事情もあり、9R-59DやTX-88DのAMユーザに違和感無くSSBに移行してもらうという開発意図があったように思われます。
 JR-310はいくつかのモデルが存在します。最終モデルになると、ゴムベルト部分はチェーンベルトに代わります。また初期モデルではBFOがLC方式になっていたものもあったようです。
 このJR−310のBFOは水晶発振方式で、しかも25Khzマーカー内蔵なので調整は大変楽になっています。

写真をクリックすると大きくなります。

入手時の状態

@電源が入り7Mhzが辛うじて受信きます。他のバンドはマーカー信号が微かに確認できる状態です。
 整備、調整により何とかなりそうで希望が持てそうです。
 Sメーターはピクリとも振れません。
A50Mhzは全く受信できません。
Bフロントパネルおよびケースには錆や傷が多く見られ良い状態とは言えません。
C低周波部分は動作していますが、音量ボリュームにガリが認められます。
Dパネル正面のダイヤル、Sメーターのスケールカバーが無くなっています。(新たに取り付けました。)

 

 ロータリー、プッシュ、スナップ、VRなどの接触不良・ガリの修復(記載例はTS−520での修復方法を事例として掲載しています)
感度不良や受信ができないなどのは各スイッチ等の接触不良が原因のケースが多く見られます。
ロータリースイッチなどの接触不良を修復しただけで正常に動作するようになることもまれではありません。

 
無線機等は長期間動作させないと、ロータリースイッチ、スナップスイッチ、プッシュスイッチなどのスイッチ関係の接点やボリュームの接触面が酸化皮膜等で接触不良になり、正常に動作しないことが多く見られます。接触不良が原因で全く送受信ができないこともあります。
 接触不良を解消しただけで元のように正常に動作する例は多くあります。
・全く受信ができない、
・各ボリューム類にガリや接触不良が見られる、
・AGCの切り替えができない、AGCをオフにしてもSメーターが振る、
・METER切り替えが上手くいかない、
・RIT調整ができない、
・RF ATTが動作しない、
・スタンバイスイッチを動作させても送信状態にならない
・バンドによって受信出来ない、
などは接点の接触不良が原因の場合が多く見られます。
 接点の修復は多くの場合接点洗浄剤で修復することができます。接点復活剤はNGです。
接点復活剤はべとべとする溶剤がそのまま接点周りに残りショートしたり、容量や抵抗値を示したりする危険が大です。
 接点洗浄剤は溶液が蒸発するのでこのような心配はありません。ただし接点洗浄剤の溶液も蒸発するまで多少時間が必要です。電源を入れるのは30分以上経ってからが無難です。
 接点復活剤を使用する場合はスプレー式はさけて、ハケや綿棒で接点に直接塗布する方法であればトラブル防止につながると思います。
 実際にこれまで30台弱のTS−520をレストアしてきましたが9割以上のTS−520が復活させることができました。勿論、これだけで復活するわけではありませんが、修理の第一歩です。
 
 このJR−310もロータリースイッチ、各ボリュームの接触不良、ガリを解消したところ受信感度がかなりアップさせることができています。

更なる感度アップを図る

 各スイッチ、VRを修復したことにより、各バンド(50Mhzを除き)とも受信できるようになりましたが、受信感度は今一つです。
@まず各真空管をチェックしました。
 真空管チェッカーでのチェック結果、真空管は全てグッドレベルです。
A真空管の各電圧は正常範囲です。
B抵抗、コンデンサーが多少の劣化は見られるものの交換が必要なほどの劣化は見られません。
C唯一、RFボリュームにボリュームが絞り切れない劣化が見られました。
 残留抵抗値が2〜300Ωです。普通は抵抗値はゼロです。
Dこの状態ですとRF部、IF部のカソードに2〜300Ωの抵抗が追加された状態となります。
EこのRF調整用VRは音量調整と2連VRとなっており、さらにマーカースイッチが組となっています。
 同型のVRの入手はからり難しいと思います。
FRF調整は便利な機能ですが、RF同調の調整でも感度調整はできるのでRFVRは直接アースに落とし使用できないように改造しました。
この改造により受信感度は大変良くなりました。
Sメーターの振れも問題なくなりました。Sメーターには振れを調整するボリュームを追加しました。
Sメーターの振れ具合を調整したいときに便利です。(オリジナルの状態ではゼロ点調整のみです。)

50Mhz修復
@50Mhzが全く受信できない原因は写真の通り40Pトリーマーが破損していました。
A破損したトリーマーを取り外し手持ちトリマーと交換しました。
BSGの一番弱い信号を抽入でもSメーターが振り切れる状態で受信できるようになりました。

調整(マニアルに従いIF、RFを調整しました。)
このJR−310はオプションのマーカーが内蔵されているのでマーカー信号を利用し調整しました。
@第一IF、455IFの調整
ARF部調整(調整イメージは9R−59Dのコイルパック調整と同じような調整方法です。)
B28Mhzは若干感度低下が見られるようです。
Cリットは動作しませんが受信には支障が無いのでそのままにしております。


RF部

局発・RFコイル

IF部

AF部

VFO

キャリア発振

25khrzマーカー

50Mhzコンバーター

電源

整流回路部

シャーシ内部

シャーシ上部

各ユニットの状態
@プリント基板は綺麗な状態です。
A取り付け部品も年代の割に状態は良いように思います。
Bシャーシにも大きな錆は見られません。
 小さな錆はコンパウンドで取り除きました。

完成
@全バンド受信できます。(29Mhzははじめから局発水晶が入っていません。)
Aケースは再塗装しましので外観は綺麗に仕上がっていると思います。

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