ヤエス HFトランシーバー FT−901 


 YAESUのHF固定機、FT-901Dです。
 FT-901Dは、真空管時代の最終章に登場し、その時点で考えられる機能の全てを搭載した最高級機でした。 この前期型は、WARCに対応していませんが、後期型にはないマニアックな仕様となっています。回路構成は、当時のライバル機であったTRIOのTS-820Sと同じシングルスーパーで、そのためか、歪の少ない大変聞きやすい音調です。機構的にも最高級で主要回路は全てプラグインモジュール構造です。
 WIDTHの切れ、REJCT(NOTCH)の切れはまあまあでないかと思います。S9のビートがS3程度まで減衰します。CW時に良く使用するAPF(オーディオピークフィルター)は、FT-107同様、とてもよく効きます。APFの動作は、最近のDSPと異なり、目的の周波数で信号が浮かび上がるのが特徴です。
 BAND切替は、前期型であるためWARCバンドは未対応です。
 TUNEは、真空管保護のタイマー付きでファイナルを痛める心配がないのはありがたい機能です。また、周波数カウンターの表示周波数を調整するCALIBがあり、正確なカウンター表示が可能となっています。

写真をクリックすると大きくなります。

入手時の状態

@電源が入り各バンドとも送受信が可能です。シングルコンバージョンの成果でしょうか特に内部ノイズは大変少なく感じます。
Aしかしボリューム、ロータリースイッチにガリと接触不良が見られます。
Bスケルチは機能しない状態です。
CSメータの振れが通常よりも大きく振れるようです。
Dケースには大小のする傷と錆が見られます。
E内部は比較的綺麗です。
F各基盤の状態も問題ありません。
G電源関係の電解コンデンサーの容量変化も見られず、また大きい抵抗値の変化もありません。(コンデンサー周りの茶色いしみは接着剤です。)
H真空管の劣化も見られませんでした。
IFT−901は周波数表示カウンターが無くとも500Khz範囲を1Khz以下直読できるようにアナログ100Khzダイヤルと500Khzダイヤルが備わっています。(TS−820に似ていますね!)

不具合の修理&調整
まずは内部の塵などを丁寧に落としました。
@各ロータリースイッチの接触不良修復
・接点洗浄剤でロタリースイッチの修復を行いました。接点復活剤の使用はNGです。
・接点洗浄剤は揮発性の溶剤を使用していて接点復活剤と違って溶液が残りませんが溶液が蒸発するまで電源投入は厳禁です。
・蒸発する前に電源を投入すると回路がショートしロータリースイッチに修復不可能なダメージを与える恐れがあります。完全に溶剤が蒸発するには1、2時間以上は必要です。
・接点復活剤は溶剤が蒸発しないでそのまま残るので回路のショートやインピーダンス変化など思わぬトラブルに見舞われることが多いように思います。
・バンド切り替えロータリースイッチの修復により受信感度は格段に良くなりました。
Aボリュームのガリ修復
・ロータリースイッチ同等に接点洗浄剤でほぼ修復できました。
BスケルチはFMユニッットVR901を調整したところボリュームを右に回し切ったところで動作するようになりました。スケルチはほとんど使用しないのでこの状態でOKとしました。
C受信感度など調整
・DRIVEツマミを12時の状態にし、受信感度はANT、MIXコイルを調整します。
・調整にはSGまたはマーカー信号を受信しながら行いました。
・1.9、3.75、7.15、14.175、21.225、29Mhzで該当するANT、MIXのコアーを調整しSメーターの振れが最大になるように調整棒を使用し調整します。
DDRIVEコイルは送信状態で出力最大に該当するDRIVEコイルを調整します。
ESメーターはIFユニットVR401を調整しました。
F真空管12BY7を真空管チェッカーで見たところGood表示でした。
G中和調整
・念のため中和を取り直しました。
・21.3Mhzで同調を取った後、SG電源をオフ、送信状態にし、写真のような簡易高周波測定装置で検波電圧が最小になるように中和バリコンを調整しメータの振れを最小にします。ほぼゼロに調整できました。
Hこれらの調整の結果
・受信感度は見違えるようによくなりました。また、シングルコンバージョンの成果でしょうか内部ノイズ(ミクサーノイズ)は極端に少ないように思います。今どきの無線機と比べても全く遜色がありません。
・出力は手持ちのSWR計測定ですが7、14、21Mhzで100W出ています。SSB変調も問題ありません。

冷却ファン補修
@冷却ファンの回転が若干遅めだったので解体し内部を清掃しミシン油を抽入しました。
A冷却ファンケースに汚れと塗装の剥がれがあったので、錆や傷を修復し再塗装を施しました。

ケース再塗装
@ケースは錆や傷を修復し再塗装しました。錆や擦り傷をそのままにして塗装すると傷跡がそのまま表れてしまいます。400〜1000番のサンドペーパーで丁寧に修復すると良いと思います。塗装はケースを60°に加熱しグレーの艶消し塗装です。(焼き付け塗装もどきです!)
ADC−DCコンバータケースなども汚れが目立ったので再塗装しました。

完了
@このFT−901はスイッチなどの不具合はあったもののほとんど部品交換の必要もない良い状態でした。
A取説に従って調整し送受信とも問題なく動作しております。
B外観は再塗装で大変綺麗に仕上がっています。

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