ヤエス オールトランジスター HFトランシーバー FT−301D 


 約40年前のオール半導体化されたヤエスでは初のHF機で101のミュー同調を継承しています。これも他の例に漏れず、同一型番で複数のバージョンが存在し、例えばWARCバンドのあるものとないものがあります。このFT−301Dは前期型と思われるものです。トリオではTS−120が対抗機種でしょうか。3.5MHz〜28MHz、CW、SSB、RTTY、AM、出力100Wのトランシーバーで末尾がDタイプはダイヤル表示がデジタル表示タイプです。
 このデジタル表示モデルは、DDSかPLLの実用機に比べ物足りなさはあるものの通常のQSOでは今どきの無線機と比べても安定度も遜色がなく実用的です。
 このFT−301Dは主要回路がプラグイン・モジュールで構成されているため、保守性が大変優れています。FT−901と見間違えるほどないほど似ております。
 

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入手時の状態

@ケースは擦り傷や錆が有りますが年代物としては比較的良い状態を保っております。
A電源は入るものの送受信は全くできない状態です。
B音量ボリュームを回すとガリ音が変化することからAF部は動作しているようです。
C受信ができるようになってから分かったこと。
 ・各ロータリースイッチなどのスイッチ関係に接触不良、ガリが見られました。
 ・音量ボリュームなどのボリュームに接触不良やガリが見られました。
 ・同調が大分ずれているコイルが見られました。

VFO発振周波数範囲の調整
@FT−301のBFO発信周波数は5.0〜5.5Mhzです。
AこのFT−301Dでは5.1〜5.8Mhzでした。
 これだと7Mhzの受信範囲は6.7〜7.4Mhzで400khz以上の周波数は送受信できないことになります。
 低いバンドではバンド幅内ですがハイバンドでは運用できない周波数が出ていきます。
BVFOユニットの固定バリコンで5.0〜5.5Mhzの範囲になるように調整しました。

送受信ができない原因
 供給電源やポイントポイントの電圧をチェックしてみましたが異常値は見られません。
どうもVFOが発振していないようです。VFO選択はは固定チャンネルを切り替えるロータリースイッチに接続されています。
このロータリースイッチの不具合でVFOに電源が供給されていないことが判明しました。
ロータリースイッチは長年使用せずに放置しているとスイッチ皮膜が酸化し接触不良の原因になることが多く見られます。
ロータリースイッチの接触不良は接点洗浄剤で修復することが多いので、今回も接点洗浄剤で問題なく修復できました。
接点復活剤はロータリースイッチには厳禁です。溶剤が残り修復不可能なトラブルに間違いなくつながります。

デジタルカウンターの不具合修復
 デジタルカウンターが電源オン後しばらく表示が動き動作が安定しません。
@デジタルカウンターでは表示周波数のもとになる入力信号が一定レベル以下の場合よく見られる現象です。
A今回は受信数が300khz以下の場合見られます。周波数がより低いと比例するように安定するまで時間がかかります。
Bカウンターミキサー部のレベル調整VRを調整することにより安定的に表示するようになりました。

シャーシ上部、シャーシ内部の状態
 シャーシ上部・内部ともにFT−901とよく似ていると思います。
FT−901も黒いカバーで覆われ内部に各基盤が垂直に差し込まれていました。またシャーシ内部もバンド切り替えロータリースイッチ部は金属板におおわれた構造になっていました。
 このモデルにはAM基板はセットされていません。

各ロータリースイッチ等の接点修復
@バンド切り替えスイッチに接触不良が見られたので接点洗浄剤で修復しました。
A同様にモード切り替えスイッチに接触不良が見られたので接点洗浄剤で修復しました。
Bまた各スナップスイッチも同様に接点洗浄剤で接触不良を修復しております。
C音量ボリュームはじめ各ボリューム類にも接触不良やガリが見られたので接点洗浄剤で修復できました。
古い無線機の修復には接点洗浄剤は不可欠です。不動無線機の多くは半導体やコンデンサーの不具合よりも接点などの接触不良が原因のことが多いように思います。 

局発水晶・固定チャネル水晶・バンド調整の各ユニット
@局発発水晶は7、14、21、28のBバンド用がセットされています。それ以外はオプションとなっていたようです。
A3.5Mhzバンドは7Mhz局発水晶を逆ヘテロダインとして使用しています。
B固定チャネルは贅沢に10個用意されています。
C各バンドの同調調整はトリーマーで行っています。

その他
@マイクボリューム調整は各ユニットが格納されている手前の半固定ボリュームで調整します。一度調整すればその後は触れなくとも良いとの考えなのでしょうか?マイクボリュームはパネル面につけてほしかったと思います。
A100Khzマーカーが標準装備されています。内部のスライドスイッチにより100Khz→25Kはの変更ができるようになっています。これも正面パネルから切り替えできると便利だと思います。
B付属の電源ケーブルは比較的太い(100W用)もので劣化し硬くなっていて引き回しだ大変だったので通常の赤黒線に交換しました。
Cスピーカーの線が途中で線切れてしまったので写真のように修復しラグ版経由で接続し直しました。

21、28Aバンドの
カウンター
表示不具合修復

21、28Aバンドカウンター表示不具合の修復
 
このカウンターの動作は普通のカウンターとは動作原理が大分違っているようです。
@100Khz以下の表示はVFO発信周波数とローカル発振(18.5Mhz)と混合し100Khz以下を表示しています。
Aそれぞれのバンド表示はメモリーに書き込んだプリセットカウンター用のメモリーから表示するようになっています。
BMhz以上の周波数は表示を切り替えるダイオードマトリックス回路とバンドスイッチに連動した表示用ダイオードをアースすることによって表示させています。
Cほかのバンドの表示が正常なので、特定バンドのMhz桁が「F」と表示される原因として考えられるのは
 ・バンドスイッチに接触不良が見られる場合(特定バンドだけ接触不良でアースされない状態が発生)
 ・バンドスイッチに連動した表示用ダイオードの不良
 のいずれかの可能性が大きいとみられます。
今回はバンドスイッチの接触不良が原因でバンドスイッチ洗浄で全バンド正常表示されるようになりました。
何故「F」と表示されるのか?
@カウンターミキサーではバンドスイッチがアース状態でないと4ビット全部がオン状態でカウンターに送られます。
A4ビット(0〜9、A、B、C、D、Fまで表示ができるメモリーの単位)全部がオンの場合は「F」と表示されます。
 余談ですが4ビット全部オフの場合ゼロ表示で最後のビットだけがオフの場合は「E」表示となります。
 1ビットがオフが0、オンの場合1と判定します。 

調整等

@各基板の調整はヤエスのホームページにあるFT−301マニアルを参考にして行いました。 
A調整の結果受信感度は全く問題ないレベルまで感度アップしたと思います。

B送信出力はCWモードで各バンド10Wを超えております。
CSSB変調もLSB、USBともに特に問題はありませんでした。

大変良い状態に修復できたと思います。
本体&電源部ケースに傷などがあったので目立たないよう修復した上で塗装を施しました。
電源部も含め不具合はなく良い状態に修復できたと思います。

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