ヤエス HF トランシーバー FT−201S(100Wタイプ)


 八重洲のHF帯トランシーバ FT-201Sです。FT-201SはFT-200の後継機で、プリミックス方式でIFは9MHzです。VFOはFR-101と同じダイアル機構を使用し、Sメータや押しボタンスイッチも良く似ておりFR−101のようです。トリオTS−820に対抗機種のような気もするのですが、これといった特徴もなく生産台数も少なく、オークションへの出品も少なく今となっては貴重な存在だと思います。
 FT−200の後継で、シングルコンバージョンでコスト削減を図ったものの、あまり売れなかったみたいですが、先にも触れたように今では非常にレアなリグのひとつです。
 FT-201/201SはFT-101シリーズの影に隠れてその存在を知らない人も多いと思いますが。このシリーズはFT-200/200Sから始まるシリーズで、八重洲無線得意の「プリミクス方式局部発振器によるシングルスーパーヘテロダイン」を採用しています。FT-200/200S時代は真空管構成でしたが、このFT-201/201Sは終段とドライバ以外はトランジスター&ICで構成されています。
機械的な作りは、同じシングルコンバージョンの最高機種であったFT-901に一歩譲りますが、電気的な性能は今でも十分通用する機能と性能を有していると思います。

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入手時の状態

出品者の発送案内の一節をご紹介しておきます。
以下出品者のコメントです。
 「
梱包についてお願い」
「当方はエアパッキンなどの石油精製物は環境保護のため使用しません。
代わりに広告紙やダンボールなどをリサイクル使用してパッキンとしています。時々ゴミを梱包材に使ったなどとクレームを言われる方がありますが上記のことご理解お願いいたします。」
だそうです。
 
私にはどうしてもゴミのように見えるのですが!しかも「石油精製物は環境保護のため使用しません。」と言っておきながらフィルムやビニールまで入っています。梱包自体も少し揺らすと中で無線機が移動する状態でした。
家庭ゴミが有料化されているとはいえ、ゴミ袋の代わりにされてはたまりませんね!ちなみにネガフィルムに何が写っていたかは確かめておりません。富士フィルムのフォトビジョンFX7が手元のあるのですぐに見れるのですが。

@外観は写真のように大変痛んでいます、
A上部ケース蓋が閉まりません。
Bケース内部にも埃が積もっています。どのような環境に置けばこのような状態になるのでしょう。スピーカーのコーンは黒色なのですが埃で白くなっています。
C電源は正常に入りましたが、受信が全くできません。音量ボリュームにガリがあるので低周波増幅部は動作しています。
DRF増幅部もRFボリュームを回すとノイズレベルの変化が無いので動作しているかはわかりません。
E局発水晶は一部バンドで発信が確認されました。
Fバンド切り替えローターリースイッチをよく観察すると緑青らしい錆が確認できます。
G以上から受信できない原因は長年未使用状態だったためにローターリースイッチ関係に接触不良が発生したことが主な要因だと思われます。

ローターリースイッチの修復

 これまでも動作しない無線機の多くにロータリースイッチの接触不良が見られたので、まずロータリースイッチの修復から取り掛かることにしました。
 ロータリースイッチの修復には接点洗浄剤を使用します。接点洗浄剤は時間が経つと溶液が蒸発します。接点復活剤は絶対NGです。接点復活剤は溶液が蒸発せずそのまま塗布した部分に残ります。
 ロータリースイッチは接点間や接点と取り付け金具の間隔狭く、付着した溶液が導通媒体となりショートなどでロータリースイッチが使用不能になる恐れが大です。特に真空管を使った無線機はロータリースイッチの一部に高圧がかかっているので要注意です。
 何度かショートでロータリースイッチの端子と取り付け金具の間が炭化し導通状態になった無線機を修復したことがあります。幸い炭化部分を削り取って修復することができましたが、最悪の場合修復は不可能となってしまします。
 ロータリースイッチが使用不能になれば代替品を入手することがかなり難しいことから、無線機の修復ができなくなります。
 接点洗浄剤でも塗布後溶液をよく乾燥させないで通電すると同じ事が起こるので注意が必要です。2〜3時間か半日程度時間が経ってら電源を入れるほうが無難です。
@バンドスイッチ回りの緑青を小型精密ドライバーなどの先で慎重丁寧に落とします。
A接点洗浄剤はバンド切り替えスイッチ全体に万遍なく振りかけるのではなく7Mhzなら7Mhzの接点だけに振りかけるようにします。
Bこれで7Mhzが受信できるようになればラッキーですが、物事はそうはいかないことが多いです。
Cモードスイッチなど他のローターリースイッチが接触不良になっている場合が多いので、同様に接点洗浄剤で修復を図ります。
Dこれで何とか外部入力100Khzマーカー信号のビート音が確認できるようになりましたがSメーターはほとんど振れません。
E根気よく修復いた結果HF全バンドでマーカー信号が確認できるようになりました。
Fただ、特定の条件下でキャリア発信が上手く動作し無いことがあります。何か他に原因がありそうです。3.5Mhzはほかのバンドと違ってVFO発振周波数を直接ミキサーに入力し9Mhz中間周波数を得ています。このことに関係があるのかもしれません。



9001.5Khz水晶発振zの不具合
 
電源を暫くオフの状態にしておくとときどき9001.5Khz水晶が発振しなくなりSSB信号が上手く復調できなくなります。
不具合の状況は次の通りです。
@モードLSB、バンド3.5Mhzにセットして、電源オンすると信号は普通に受信できますがSSBが復調できません。LSB用キャリア発信水晶が発信しておりません。同様に14Mhz以上でUSBモードでも同様のことが起こります。以下、3.5Mhzを例に説明します。
Aこの状態でモードを一旦USBに切り替えLSBに戻すと問題なくSSBが復調できるようになります。
B同様に@の状態でバンドを7Mhzに変えて、3.5Mhzに戻してもSSBが受信できるようになります。
C3.5Mhzが正常になったこの状態で一旦電源を切って再投入した場合、問題なくSSBが復調できます。
D電源オフ後30分〜数時間の間は電源再投入すれば正常に動作します。
E他のバンドを受信していて3.5Mhzにバンドを変更した場合には問題は発生しません。

FT−201の周波数ヘテロダインは以下の通りです。(この表はJH2CLV OMのHPに掲載されているものの転載です。)

 

 

 

 

この表を見てわかるように3.5MhzのみXtalがありません。
このために、USB、LSBの切り替えはモードスイッチの他にバンド切り替えスイッチとも連動する構造になっています。
@3.5hmzLSBの場合キャリヤ発振は9001.5Khz、USBは8998.5Khz
A7Mhz以上のバンドの場合キャリヤ発振はLSB 8998.5Khz、USBは9001.5Khzと逆になるようにバンドスイッチで切り替えています。
B百戸スイッチでのUSB、LSBの切り替えはそれぞれの発信トランジスターのエミッターをアースに落とすか落とさないかで発信する水晶が選択できるようになっていて複雑な構造ではありません。

原因の追究と対応策
@どうやらモードスイッチとバンドスイッチの切り替え周りに原因がありそうですが!
A普通疑われるのがスイッチの接触不良ですが、それは無いようです。配線周りのコンデンサー、抵抗、ダイオードなどの劣化が疑われます。
C根気よくこれらを当たってみたのですがおかしなところは見当たりません。
Dキャリア基板のコネクターのピン電圧、アース間抵抗などチェックしましたがおかしなところはありませんでした。
EモードスイッチS6Cの1番ピンに電気的ショック(一時的にショート)を加えるとLSB水晶が発振します。
FモードスイッチS6Cの1番ピンとアース間を350Ω抵抗で接続状態にすると、何故かUSB水晶が発振します。この状態で一旦モードスイッチをUSBにした後LSBに戻すとLSB水晶が発振し3.5MhzSSBが正常に受信できる状態になります。
G色々調べてみると、9001.5Khz水晶に原因があるのではないかと疑がわれます。
H水晶を交換し確かめてみたいのですが、9001.5Khz水晶の入手は中々難しいのでFT−201の基板やジャンクが入手できたときに交換してみようと思います。
取り敢えず再発したとしても、モード一旦USBにしその後LSBにすれば普通に受信できるのであまり問題はないと思います。
何故モードスイッチ切り替えで正常発振するようになるかは配線図が不鮮明でよくわかりませんでした。


TUNEモード、CWモードでのキャリア抽入レベル不足の修理
 
7MhzでTUNEモード、CWモードにしキャリアボリュームを右いっぱいに回し送信してもで出力はせいぜい20Wしかパワーが出ない状態です。
SSBモードで1000HZトーンをマイク端子に入力し送信すると100W以上の出力が確認されました。
@このことから真空管12BY7、6JS6×2の不良劣化ではなくキャリアレベルが低いことが原因と考えられます。
Aキャリア発振基板の発信周波数、TC6、IFT基板のT106などを調整しても変わりません。
Bキャリア調整ボリュームVR2の両端の高周波電圧は90mX位ですが20mXしかありません。
C水晶発振レベルは問題になるほど弱くはありません。
D販売からすでに40年も経過しており、部品の劣化も進んでいることから、特定の部品の不良ではなく全体的な劣化が原因でないかと思われます。
ECW発振用Q3とQ5のカップリングコンデンサーは3Pです。SSBQ2、Q4間は30Pです。
Fスプリアスの発生は若干気にはなりましたが3Pに15Pコンデンサーを追加し抽入量を増やすことにしました。
Gそのの結果、TUNEモード全バンドで十分な出力(100W)が得られるようになりました。気になったスプリアスの悪化もないようです。もっともCWフィルターが付いていない本機ではCW運用はあまり実用的ではないかもしれません。

その他の不具合の調整
@アンテナコネクター接続ハンダが外れていました。40年も経つとハンダの劣化も思った以上に進むようです。特にアンテナコネクターはアンテナケ−ブルの交換が頻繁でその振動が影響したものと思われます。
A冷却ファンの音が気になったので分解清掃しました。大変静かになりました。

汚れの除去
@真空管の汚れは戦前のST管ラジオのようです。
Aフロントパネル、シャーシ内部配線、プリント基板、ツマミ、取っ手金具などの錆や埃、塵を竹串・綿棒・コンパウンド・無水アルコール・シンプルグレーンなどを使用し根気よく丁寧に落としました。
Bケースはフロントパネル外枠も含め再塗装しました。

現在の状態

修理後の状態
@全バンド送受信可能です。
 TUNEモードで3.5〜21Mhz→出力100W出ています。
 28Mhz→60〜80Wです。
 全バンドSSB送信に問題はありません。
 AM送受信できております。
Aロータリースイッチ、ボリュームなどに接触不良、ガリはありません。
Bパネル面は汚れていたビニールを取り除き、ケースは再塗装したので外観は大変綺麗です。
若干の留意点
運用でカバーできるるので、経年変化でメンテナンスしきれなかった留意事項の対処方法を掲載しておきます。
@3.5Mhz LSB、14Mhz以上のバンド USBキャリアが発振しなかった場合は一旦モードスイッチを切り替えてそれぞれのモードに戻せば問題なく受信できるようになります。
ASメータが振り切れる現象が起こるときがありますが、IF基板のVR2を調整すれば元に戻ります。

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