Allied A-2515A
General Coverage Shortwave Communications Receiver(1970)
(ソリットステート 9R−59)


  この Allied A-2515A は1970年のオールトランジスター通信型受信機です。60年代から日本製のトランジスターラジオは米国で大ブームとなりました。 当初は性能も良くなかったトランジスターも、1960年代後半には本格的な通信機器にも全面的に利用され始めました。
   トリオ9R-59が発売された1960年代初頭、米国のアマチュア無線機器はすでにアマチュアバンド専用のSSB機器が主流でした。しかし Lafayette HE-30/KT-320/ HA-230 /KT-340という形態で米国デビューした9R-59は低価格を売り物にノービス向けの手ごろな短波受信機として人気を得ました。

 そんな中、本格的なトランジスター通信機受信機として、当時人気の高かった真空管受信機9R−59をモデルとした
ソリッドステートの9R-59判、 Allied A-2515が発売されました。トリオ9R-59のスタイルとコンセプトを保ったままフルトランジスタ化し、改良を進めたものが A-2515Aです。 
 A-2515Aはデザインとダイヤルレイアウトは9R−59とほぼ同じです。  内部はフルソリッドステート化され FETやメカニカルフィルタを採用しています。   初期型A-2515は1969年発売でA-2515Aは、1970年製のゼネラルカバレージ通信型短波受信機としての発売です。Aがつくこのモデルは後期型改良モデルです。 写真からわかるように、外観はLafayette HA-230とほとんど変わりません。
    9R-59よりも格段に受信性能はアップしておりデザインもモダンで、高級感のあるルックスだと思います。

写真をクリックすると大きくなります。

構成
 
A-2515Aは0.15MHzから30MHzまでを5バンドでカバーするゼネラルカバレッジ受信機です。 中間周波数455kHzのシングルスーパーヘテロダイン方式で、高周波1段・中間周波2段増幅です。
 長波1バンド、中波1バンド、そして短波帯は3バンドに分割されています。 長波バンドが追加されていますが、 400kHzから550kHzまでは中間周波数に近いので受信できません。
 A-2515Aの回路構成は、9R−59の特徴的なBFO兼用Qマルチプライヤがないことを除けば9R-59の雰囲気がずいぶん残っています。
   AC電源のほかフルソリッドステートですので外部DC電源も接続できます。国内で使用する場合はAC電圧の関係からDC電源を使用したほうが良いかもしれません。

入手時の状態
@受信できるものの歪んだ音質で、音量が大きくならない。
A時々「ジャー」と大きいノイズのようなものがでる。ボリュームを絞っても小さくならない。多分発振していると思われます。
B発振状態は振動を与えると止まる場合もあります。
この状態ではとても使用には耐えられません。完動品として入手したのですが・・・・。

調査と修理

 この受信機にはサービスで小型スピーカーが付いてきました。
まず、このスピーカー自体に問題ありです。音が歪みます。これでは受信機に問題があるのか、スピーカーに問題があるのか区別が付きません。使用するスピーカーは交換です。
@「ジャー」と大きいノイズのようなもの原因は当所ファンクションスイッチをたたくとノイズが再現するので、側についているAC電源のパスコンのリークノイズと終段トランジスター(2SB473プッシュプル)かアウトプットトランスの不良を疑いました。
 良く見てみると、写真で分かるようにイヤーホンジャックにビニール線が巻きつけてけてあります。(8Ωスピーカー出力がアースされている状態です。この線を外すと「ジャー」と大きいノイズが再現します。
 この線が動いて「ジャー」と大きいノイズのようなものが出たり出なかったりしていることが分かりました。何のことはない終段AFの発振です。
Aおそらく先の持ち主がこのトラブルを回避するために音質音量は犠牲にして取った苦肉の対応だったのだと思います。
B発振の原因はコンデンサーC206(30μF)の劣化と抵抗R212の定数が合わなくなっていたようです。R212には1KΩの抵抗が使用されていて、この抵抗を介してアウトプットトランスの出力の一部を前段のトランジスター回路に戻しています。(NFBを掛かるために帰還させている。)
CR212を取り外せば発振は完全に止まります。しかし音質はかなり高音が強調されて受信していると少し疲れます。
DR212を4.7KΩ抵抗に変更しました。発振しない抵抗値としてが良いようです。低音が丁度良い具合に強調さ聴きやすくなりました。
これで発振も音の歪みもなくなりました。プロダクト検波時も充分な音量で受信することができるようになりました。

アンテナ回路と高周波増幅段
    シャーシ背面のアンテナ端子はネジ式です。 トランジスタを使ったフロントエンドは真空管と異なり過大入力で損傷する可能性があるため、 アンテナ端子の直後にゲルマニウム ダイオード2本による保護回路が入っています。
    RF GAINは増幅段のゲイン コントロールではなく、アンテナ端子直後に簡単な5KΩボリュームによるアッテネータが実装されています
    アンテナからの信号はコイル パックのアンテナ セクションで同調選択されたあとデュアルゲートMOS FET 40603で高周波増幅されます。 
 コイルパックは9R−59よりもかなり小さい5mmほどのボビンが使用されています。
    アンテナ回路にはアンテナ トリマがあり、広範囲のアンテナ負荷に対応できます。 局発はいつも受信周波数より高い設定なので、 イメージ混信を低減するためにはアンテナ トリマはいつもハイキャパシタンス側にセットすると良いとされています。

周波数変換段
    ロータリー スイッチによる5バンド切替のコイル パックは、RFセクション、MIXセクションそれにOSCです。 この部分の考え方はは9R-59と同じと考えのようです。
    局部発振は2SC381Rによって行われます。 周波数混合はデュアルゲートMOS FET 40603で、 2つのゲートのそれぞれに入力信号そして局部発振周波数が注入されます。
 周波数安定度は9R-59と比較にならないほど安定しております。
   高い周波数(10Mhz以上)5バンド目では多少イメージ混信が気になります。しかし、中間周波数が455Khzのシングルスーパーではイメージ混信や感度の問題で実用レベルと言うよりは飾りと考えた方が良いかもしれません。
 勿論、放送などの信号はチャント受信できますが。

中間周波増幅・検波・BFO
    中間周波数増幅・BFOそして検波段は1枚のIFボードに実装されています。
    RFボードからの混合出力はIFボードに入り、最初のメカニカル フィルタで455kHz中間周波数が取り出され、 ついで2SC454(B)で2段増幅されます。 1段目と2段目の間には2つめのメカニカル フィルタが中間周波トランスの代わりに使用されています。 2段目の出力は中間周波トランスを介して検波段に伝えられます。 使われているメカニカル フィルタは中間周波トランスと同一の形状をした小さいもので、 いわゆる簡易型メカフィルと呼ばれているものです。
    メカフィルが使用されていると普通ゲイン不足に陥るのですがゲインは充分確保されています。
    Sメータは第1中間周波増幅トランジスタのエミッタ電圧の変化を読むように配置されています。 Sメータのゼロ点はシャーシ背面のポテンショメータで調整できます。上から下にふれます。9R−59とは逆の触れ方です。
    BFOは独立した2SC454(B)で発振されます。フロントパネルのBFOミゼットバリコンで発振周波数を微調することができます。 BFOトランジスタへの電源は安定化された9Vで、ファンクション セレクタ スイッチをCW-SSBポジションにしたときのみ供給されます。 SSBの検波にはAM検波とは独立した、ダイオード2個を使った平衡検波回路が利用されます。
 IFTの調整に当たってはAMの場合はL101をCW・SSBではL102を別々に調整する必要があります。

低周波増幅と出力

    低周波回路は1枚のプリント基板にまとめられています。 音量調整ポテンショメータからのオーディオ信号は2SC281トランジスタで2段増幅された後、低周波出力段をドライブします。
    パワーアンプは入出力にトランスをもつプッシュプル方式で、出力トランスの2次側には8Ωと4Ωの出力があり、 シャーシ背面のネジどめスピーカ端子に接続されています。
    フロントパネルのヘッドフォン ジャックは8Ωのスピーカ端子につながっており、プラグを差し込むと8Ωスピーカの音が切れます。 このとき4Ωスピーカ端子は切れません。 出力トランスの2次側からはドライバのエミッタ回路にNFBがかけられています。
 NFBを掛けないようにすると高音が強調されて耳障りな受信音になります。受信音は人によって好みが違うので可変できると良いと思います。流石にプッシュプル、出力は12分にあります。

AGC
    9R-59に付いていたAVC-MVC切替スイッチが有りません。 A-2515Aでは、AGCはAM受信時はもちろん、SSB/CW受信時にも動作します。SSB/CW受信時にもSメーターが動作するのでかえって受信し易い気がします。
 9R-59の場合BFO信号が回り込んでSメーターを振らせるのでAGCを切らないと駄目だったと思います。

電源回路

    米国仕様なのでAC115Vとなっています。電源は電源トランスで降圧されたあと半導体ダイオードで整流される、簡単で一般的な電源回路になっています。 電圧の安定性が要求される局部発振、BFOおよびSメータの基準電圧回路には、ツエナー ダイオードで安定化された9Vが供給されます。100Xでも問題なく動作しますがCD12Xで使用したほうが無難かもしれません。
    動作中、ダイヤル盤は16V 0.15Aの豆電球2個で照らされます。 AC電源使用時は電源トランスの専用14V巻線が使われ、DC動作時は電源直結で点灯されます。
 DC使用時は裏面のスイッチで使用電源を切り替えます。DC電源は12X(13,7でも問題はありません)容量2Aは必用です。

バリコン・フライホール
    バリコンとダイヤル メカニズムの基本は9R-59と同じで、大小の3連バリコンをパラにつないでいます。 二つのバリコンはブラケットで機械的に結合され、このブラケットがシャーシにマウントされています。      
    バンドスプレッド バリコンの各セクションには容量違いの2種の組がありますが、容量の小さな組だけが使われています。 この組は周波数直線型、またはそれに近いロータの形をしています。
 9R-59と同様にチューニングつまみにはフライホイールが取り付けられていますが、糸掛け機構もうまく調整するとバックラッシュはあまり気になりません。
糸掛けダイヤルは、バーニアダイヤルに比べるとバックラッシュは無いに等しいのではないかと思います。

スピーカー&再塗装
@外部スピーカーを取り付けるのがわずらわしかったので内部にスピーカーを設置しました。これで持ち運びなど移動が楽になりました。
Aケースに小さなキズなどがあったのでつや消し黒塗装を施しました。外観は大変綺麗になりました。調整用表示パネルまでは綺麗にできませんね!

 ダイヤルスケールはHA-230と同様のガラス板です。シルク印刷の材料が特殊塗料が使われているようで。 白色のスケールはパイロットランプに照らされてわずかに黄緑色を帯び見やすくなっています。
 全体的にはAllied A-2515Aは 「完成度の高い9R-59」だと言えます。 HA-230の欠点の多くが解決されています。 HA-230、9R−59は真空管式で経年変化には勝てず初期の性能を維持することはきわめて難しい状況です。それに比べトランジスターの耐久性でしょうか入手したA-2515Aは現在でもかなりの性能を維持しております。50Mhzクリコンを追加すればJR−60をはるかに凌ぐ受信機になると思います。

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