TRIO 9R−59D 受信機

 40年ほど前!のトリオ(TRIO)の、中波帯から短波帯をカバーする無線受信機「9Rー59D」をオークションで入手しました。9Rー59Dはアマチュア無線の受信機として使われ、キットと完成品がありました。
9Rー59Dは9Rー59と同様に高1中2ですが、中間周波増幅にメカフィルを使用し選択度を上げ、さらにSSBの受信を容易にするために検波回路はプロダクト検波となっております。
 本機は幸い、中波が問題なく受信できたので、劣化した部品などを取替えた上で再調整することにいたしました。その結果7MhzなどのSSB信号も問題なく受信できるようになりました。ハム人口が減ってきたせいでしょうか、バンド幅が拡張されたせいでしょうか、7MhzもゆったりとQSOができるバンドになっているみたいです。専用受信機として7MhzのQSOにも実用になると思います。BCL受信機として、また、自局電波のモニター用受信機として充分使用できそうです。


(写真をクリックすると大きくなります。)

入手時の状況
@外観、内部とも錆びや擦り傷などはあるもののにまずまず綺麗な状態です。
A中波帯は問題なく受信できました。ボリュームのガリも有りません。ラッキー!
B受信周波数とダイヤル表示は大分ズレがあります。
Cボリュームを上げると受信音に歪が現れます。
D整流回路のコンデンサーがパンクして見当たりません。
E短波帯も受信はできるものの調整が必要な状況です。
E定電圧放電管とマーカー発信用真空管および水晶発振子が有りません。また配線もされていないようです。

劣化部品の取替え
@写真のように整流用ダイオードと並列に取り付けられているコンデンサー(オイルコンデンサー)がパンクして先っぽだけが見えています。新しいコンデンサーを取り付けました。 
A低周波増幅部のコンデンサーにリークが見られたので交換。これで受信音の歪がなくなりました。まず、一般的にはハムがあると思いますが、そのままとして、AF部が働いていることを確認。VRをまわして音が大きくなればよいのですが、6AQ5のG1の電圧が数ボルト出ていたら、カップリングコン(C34)交換した方が良いと思います。

調整
@テストオシレータを用いてIFTを調整しました。経年変化でコンデンサーの容量が変化するからなのでしょうか、それぞれ調整箇所のコアーを1回転近く回しました。
Aさらに各バンドのトラッキングを調整しました。これで受信周波数とダイヤル表示が大分近くなりました。トラッキング調整ができないときは、コイルパックより出ているマイカコンを測定してみます。Aバンドは、パティングコンです。測定してもまれに、容量どおりがありますが、調整が安定しないときは、ディップマイカ等のコンデンサーに交換します。ここがおかしいことが良くあります。
B高周波増幅管は6BA6が使用されていますが、よりHi gm管の6AH6と交換しました。
CSSB復調が不明瞭で聞き取りにくかったので検波回路の改良しました。
 プロダク検波回路1P入力回路に写真のように5Pコンデンサーを追加しました。当初15Pを追加したのですが、受信信号が多少歪んだので最終的に5Pとしました。
DSメーターの動きが少ない状態です。
 RF IF管のバイアスを調べると標準より高いです、どうも変だと調査したら感度調整VR不良でした。VRの残留抵抗が120Ωあります。この為RF IF管が最高感度で動作しないのです。このVRはC型スイッチつきで現在入手できません。このスイッチはマーカー用に使えるように準備されたものです。
 折角マーカー回路を組んだのでこのスイッチは貴重です。マーカーを使用しないのであれば、このスイッチを流用して、残留抵抗をショートすることもできるのですが。マーカーの無い9R59DのVRと交換することにしました。
 9R59Dでは高周波増幅、中間周波増幅の3本の6BA6カソード電流をVRで調整し感度調整しています。20mA近い電流が流れるので普通のS付きVRは使用できません。
 交換により感度は大変よくなりました。1m程度のビニール線で7MhzラグチューがFBに受信できております。

F部AF部マーカーなど
@IF部での交換部品はあまりありませんが、メータの振れがおかしいときは、R10,R11を測定してみます。一般にセラミックコンデンサーは、劣化は少ないと思います。
Aプロダクト検波、AF部基盤での交換部品は、6AQ8(シールドケース)右隣のコンデンサーがやられている場合は、SSBのAF入力部のコンデンサーも交換します。SSBの復調時、コンデンサーには高圧がかかります。チューブラーの高圧電解コンデンサーは、ELNAが使われていますが160V耐圧なのでたいていは交換します。6AQ5等のカソードの電解コンもついでに交換したほうがよさそうです。
BSSBの復調において、調整してもよくならないときは、BFOコイルの中のスチコンが不良の場合があります。あとは、急におかしくなるときは、タイトバリコンの接触不良を疑います。
B105Xの低電圧放電管とマーカー発振部を配線し、真空管6AB6、水晶発振子FT243(3.525mhz)を組み込みました。

ケース塗装
ケースの再塗装も考えまてみましたが、外観にはキズも少なく今回は敢えて再塗装はしないことにしました。

整備完了  
 9R−59Dシリーズは昔ながらの高1中2の最後の傑作かもしれません。
既にWでは殆どSSBに移行した時代でした。発売された当時メインとバンドスプレッドの摘みが重なっている構造が全く不可思議で為らず、販売店で実物見ても流石に中を見せろとは謂えずに悶々とした時期ありましたが、構造はいたって簡単でした。どちらのつまみを回しても他のダイヤルが動くことが無なかったのには感心しました。
摘みを別々に配置するとハマーランドのRXに似てしまうかもしれません。東光の安物のメカフィルを使っているのも特徴の一つですね。ギヤー式ダイヤルが脚光を浴び始めていたにもかかわらず、糸架けダイアルで、バックラッシュも無い糸架けマシンの最高傑作とも云え、旧機の9R−59に比べても安定性は格段に優れていると思います。
いずれにしてもSSBの黎明期に現れた最後のA3受信機の最高傑作と言えるかもしれません。
なお、操作性を良くするためにスピーカーを内蔵しました。

 

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