TRIO 9R−59 レストアに挑戦

  9R−59はTRIO(春日無線)が満を持してアマチュア無線界に投入した、当時は憧れの的の受信機だったと思います。キットもあり、確か1万円台で購入できました。大卒の初任給が1万円台だったので、決して安い物ではありませんでした。
 中波から28Mhz付近まで受信できましたが、10Mhz以上の感度は今とは比べ物にならないほど悪かったと思います。それでもBCLのワッチには充分すぎる性能を発揮したものです。QマルチとBFOが備わっておりCW、SSBも快適に受信できました。  当時、欲しくても手に入れることができなかった憧れの受信機を、今回幸運にもインターネットのHAM交換で入手することができました。当時の性能に近づけたいと考えレストアに挑戦してみました。 
(写真をクリックすると大きくなります。)

入手時の9R−59の状態
@中波のラジオ放送は受信できるものの、短波帯はSGの信号が辛うじて確認できるレベルで感度が著しく低下しています。
AIFTのネジ山が写真のようになくなっております。
BIFTのネジを固定している固定剤(エナメル)を除去しないで、無理に廻したためか上下のネジとも全く動かない状態です。
CSメータが振り切る強い信号を受信すると周波数を変えて弱い信号になってもSメータが上に張り付いた状態が続きます。(この現象は受信感度が改善されてから気付きました)
Dトラッキングが取れていません。

事前チェック
@低周波増幅部の音質確認(ボリームを最大にしてもスピーカーからの音が歪んでいないか確認)
Aパスコンのリーク確認(テスターで電圧を測定しリークの有無確認)
B抵抗値の確認(経年変化で抵抗値は増加傾向を示します。10%内の変化はOKとしました)
C配線周りチェック(配線の汚れから、近いうちに配線し直しがベータと思われます)
以上を確認しましたが、大きな異状は見当たりませんでした。これはラッキーです。 

@中波のラジオ放送は受信できるものの、短波帯はSGの信号が辛うじて確認できるレベルで感度が著しく低下しています。
 
当地では中波放送はNHK第一、第二、東北放送の3バンドです。3〜4メータのアンテナ線を付けてS9程度で受信できました。普通の感度であればSメータはフルスケールのはずです。
 真空管の不良も考え、まずは真空管を手持ちのものに変えてみましたが結果は同じでした。真空管には原因が無いようです。事前チェックと真空管チェックの結果からIFTのズレの可能性が大きくなりました。

AIFTのネジ山が写真のようになくなっております。
BIFTのネジを固定している固定剤(エナメル)を除去しないで、無理に廻したためか全く動かない状態です。
 まず、半田ごてでネジ部分を暖めて固定剤のエナメルを溶かしながらラジオペンチなどで少しずつ廻すことができるようにしました。
 次にこのままでは正確な調整がしづらいので以下のような処理を施しました。

 一旦IFTを取り外した後に、0.3mmの銅版を細く切りだして、ネジ穴が入るように適当に丸め、形が崩れないようにハンダで固定します。次にマイナスドライバーが使えるように金鋸で溝を掘ります。最後に写真のようにネジにハンダ付けします。これで調整が大変楽になりました。これでもエナメルが完全に取れたわけではないのでコアーの出し入れはかなり硬い感じですが何とかなりそうです。少し格好は悪いのですが!

IFTの調整
 
SGを455Khzに合わせ、オシロスコープのAFレベルが最大表示になるようにIFTのネジを慎重に廻し調整します。このときAGCはOFFにしておきます。
 これで受信感度は見違えるようにアップしました。3.5、7メガのSSBも受信できるようになりました。エナメルなどで固定されているIFT等のネジは無理に廻さずに、半田ごてなどで暖めて慎重に廻すようにしたいものです。無理やり廻すと後で取り返しが付かないことになってしまいます。HI!HI!一時はIFTの取替えも考えましたが今回はラッキーなことに調整ができました。この種のIFTは入手が難しくなっております.










CSメータが振り切る強い信号を受信すると周波数を変えて弱い信号になってもSメータが上に張り付いた状態が続きます。(この現象は受信感度が改善されてから気付きました)
 
フロントパネル左側に設置されたSメータは、縦振れのラジケータ。 電源OFFおよび無信号時は指針はメータ下側にあり、信号強度が強くなるにつれて上側に振れるようになっています。
 Sメータは基本的に、AGC制御されている第1中間周波数増幅管6BA6のカソード電圧を測るようになっています。 メータのプラス側は第2中間周波数増幅管6BA6のカソードに入ったゼロ調整ボリュームにつながっています。
  強力な局を受信するとAGC電圧はマイナス2V以上発生しますが、このとき急に無信号状態にしても (たとえばチューニングをずらしたり、アンテナ線を外したり、別のバンドに切り替えたり、あるいはSENDポジションにしても) AGC電圧が無信号レベルに低下するまでに時間を要します。 この間はSメータの読みも高いままです。
    このため、バンド内をチューニング中にいったん強力な局を受信してしまうと、微弱な信号を受信しても針が動きません。
 AGCが正常な状態でどの程度の時定数を持たされていたのか不明ですが、 おそらく抵抗やキャパシタの経時劣化によって特性が変化してしまったのでしょう。(コンデンサーは比較的新しいものに交換されているのですが、不思議です!)
  いったん強力な信号を受信したあとの復帰が遅い、となれば、AGCライン電圧の平滑のためのキャパシタ (0.05μF)が大きすぎるか、AGCラインと検波出力をつなぐ2,.2MΩと音量調整用の500kΩポテンショの抵抗値の和が大きすぎる、 というのが最初に思いつきます。 基本的にはこの両者で復帰時の時定数が決定されるはずだからです。 しかし、もしどちらか、あるいは両方が相当大きくなってしまっても、 一度AVC-MVCスイッチをMVCポジションにすればAGCライン平滑キャパシタは瞬時に放電されるはず。 そしてAVC-MVCスイッチをAVCポジションに戻せば、AGC電圧は無信号時のレベルに戻っているはず。 試してみると、確かに電圧は下がります。 まるで0.05μFが電池になってしまっているかのようです。
    そこでこの0.05μFのチューブラ型キャパシタを切り離してみました。 するとAGC電圧は信号強度に俊敏に応答しますし、Sメータは無信号にすれば即ゼロに戻ります。 
    つぎに手持ちの新品0.022μFのキャパシタを代わりに使用してみました。 AGC応答は俊敏なままで、付いていた0.05μFのキャパシタに問題があったようです?
    経時劣化か何かでどういうわけかキャパシタの内部抵抗が極端に高くなり、 AVC-MVCスイッチでキャパシタ両端を少しの間ショートさせても電圧がわずかに残ることが説明できます。
    これで問題解決と思った矢先、強い信号を受信するとまたまた、上部にSメータが貼り付いて、弱い信号を受信しても下に下がりません。これは何としたことでしょう。、 AVC-MVCスイッチを切り替えるとSメータは戻ります。
 Sメータと平行にテスターを取り付けテスターの表示変化を見ると、テスターは正常に上下します。ん?ん?ん?
試しにSメータの所を指で軽く叩くとなんとSメータが下にスーと下がったではないか。だだ単にメータの針が上部にくっ付いているだけだったようです。メータのハード的特性か、劣化のためなのかは分かりませんが、最終的にはメータを取替えないと解決しようがないのでそのまま使うことにしました。
  AVC-MVCスイッチを切り替えるとSメータが戻ったのは、切替スイッチは「スナップスイッチ」のためSメータに振動が伝わり正常な状態に復帰したものと思われます。
 このように不具合が2つ以上重なっているとお手上げになってしまいますね。何事も根気と執念です。(両方とも年と共に無くなって来ますが!)

Dトラッキングが取れていません。
 
中波帯と1.6〜4.8Mhz帯は容易にトラッキングを取ることができました。しかし、その他のバンドはどうしてもトラッキングが取れません。おそらくパッキングコンデンサーの劣化等が考えられます。この辺は、いずれ配線のやり直しをした後にでも再度挑戦してみることにしました。根気執念の無さがこんなところに現れてしまいました。(今年の夏は特に暑いので半田ごてを持てるぐらい涼しくなったらですね) 


配線のやり直し
 
写真のように空中配線が見られます。トラブルの原因になるので配線をし直します。「配線のやり直し」と言っても「絡めて」のハンダ付けをしているみたいで、配線を外すには容易でないようです。むしろこんな場合は配線にハンダメッキをしチョコント端子にハンダ付けしてくれる素人配線の方が大助かりなのですが。当時と同じ種類の抵抗とパスコンが入手できれば良いのですが、今となっては難しいです。
 以前、オールGT管の高1中2を作成しましたが、抵抗やパスコンは今販売されているものを使って組み立てました。シャーシ裏の配線を見ると、なんとなくバランスが悪く違和感があります。左下の写真を拡大するとよく分かりますが、何処に抵抗が配線されているか分かりません。
 変な所に拘りますが、カラーコードの抵抗より数値の印刷されている抵抗やコンデンサーのように、ある程度の大きさが必要ですね!部品が小さいと老眼の目には辛いのですが・・・・・・

     続く・・・・・・・・・


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