ヤエス HFトランシーバー FT101(S、B、E、BS、ES)
CQ出版社編 FT−101メンテナンスガイドにはおおよそ次のように書かれている
八重洲無線がFT−101シリーズを市場に送りだしたのは1970年5月です。この機種は生産台数が数万台といわれる記録的なもので、その後の八重洲無線の経営基盤を確かなものにするために非常に貢献した機種であるといわれています。本格的にソリッド・ステート化されながら高周波電力出力は真空管で、前段にも12BY7という真空管が使われていました。当時はハム用で電力増幅用に使えるトランジスターがありませんでした。それでも“トランジスターが使われている”というだけで、目新しさを追うハムにとっては関心は高かったと思います。外観も、それまでのハム用通信機といえば、黒色のキャビネットに入っていましたが、FT−101はこの常識を破ってコリンズのSラインやKWM−2に似た色をしていました。回路構成も斬新でした。コリンズのKWM−2にはない電源回路、クラリファイヤー回路があり、RFタイプのスピーチ・プロセッサーも内蔵されていました。基本的にはKWM−2を真似た回路構成でしたが、CWフィルターも内蔵できるなど、KWM−2とはちょっと違った機能もありました。外部機器も、スピーカー、モニター・スコープ、リニア・アンプなどを揃え、Sラインに対抗しています。回路ごとにユニット化し、シャシーに取りつけられたコネクターに差し込むという構造も悪くありませんでした。この構造がスペースの節約になり、電源部を組み込みながらKWM−2とほぼ同じ大きさにできました。そのため、FT−101シリーズはアッという間にアメリカで普及していきました。価格もコリンズに比べれば安かったので、“Poorman's
Collins”などとも呼ばれたものです。もうひとつFT−101は、27MHz帯での送受信ができるようになっていました。昔はアメリカで27MHz帯にハム・バンドが割り当てられていましたが、その後この周波数帯はCitizens Radioが使うようになりました。日本でもそうであったように、アメリカでも非合法な無線機としてFT−101が使われていたため、CBが違法に使う無線機ということで、アメリカのハムがFT−101の排斥運動をやったこともあると伝えられています。またFT−101シリーズは、プラグイン方式のユニットを採用していますが、このように業務機等に見られる内部構成を採用したのは、度重なるマイナーチェンジが続いたユーザーへ安心感を与えるためでもありました。当時の宣伝でもプラグイン方式ユニットの採用を前面に押し出した広告展開を行い、修理依頼でも故障箇所のユニットをメーカーに送るだけで済みました。この画期的な修理方法は、ユーザーに対して絶大な信用と安心感を得たのと同時に、メーカー側にとっても容易に内部回路を設計変更できるという利点にもなり、このことが同一機種内でのマイナーチェンジを容易なことにしていました。機構的に見ても、コリンズ社のR−390Aなど高級業務機に採用されているμ(ミュー)同調受信部など最先端技術も満載されていました。世界中の流れがAMからSSBへの過渡期に当たる時期にタイミング良く発売されたFT−101シリーズは、折からのソリッドステート化の波に乗って世界各地でヒットを飛ばし、最終的な製造台数は日本国内及び輸出向けと併せて約10万台強が生産されたと言われ、まさに大ヒットとなりました。 |
FT−101レストア項目
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入手時の状態
入手時の状態
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@電源コードが無いものが多いです。オリジナル電源コードはオークションでも結構高額です。
A電源は入るものの受信ができないFT−101によく出会います。トリオの無線機は曲りなりに受信できることが多いように思います。
Bロータリースイッチなどはほぼ全てに接触不良やガリが見られます。
Cベース電流も全く流れなかったり、逆にベース電流が流れすぎるケースがあります。
この状態でヒーターをオンにすると無負荷状態でプレート電流が流れ続けて貴重な6JS6をオシャカにする可能性があります。
ヒーターをオンにする前にベース電圧は必ず測っておく必要があります。
D配線が複雑なためか内部に埃の塊が巣を食っているように溜まっています。
E冷却ファンは全然回転しないものや明らかに回転がゆっくりしているものが多く見られます。
Fダイヤルツマミはスリップ、重く動かない、ダイヤル表示板が動いたり動かなかったりすることがあります。
G受信はするものの感度が落ちていたり極端に悪いものもあります。
H局発水晶は全バンド揃っていないことは多々あります。これはモデルによって初めから付いていなかったためと思われます。
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修理過程で判明したトラブル
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修理過程で判明したトラブル
@受信できない原因はバンド切替ロータリースイッチの接触不良が原因と思われます。ロータリースイッチには接点復活剤が塗布されいるものは最悪です。以前修理された方がスイッチの接触不良に接点復活剤をスプレーし修理したものと思われます。その後この接点復活剤の影響で不具合が発生する場合が多く見られます。ロータリスイッチなどの接触不良については次項の「ロータリー、プッシュ、スナップ、VRなどの接触不良・ガリの修復」をご覧ください。
A一旦揮発性の洗浄液で接点復活剤を洗い落とし、その後接点洗浄剤を降り掛けスイッチを数度回せば多くは正常に各バンド受信できるようになります。各スイッチなど、特にロータリースイッチに接点復活剤はNGです。
BTUNEモードで受信できません。これもモード切替スイッチにも接触不良です。同様の方法でに修復できます。
C
マーカは100Khzは発振しますが25Khzが発振しません。
これもスイッチの接触不良が原因です。これには接点復活剤を麺棒に浸し接触面を磨きました。
C Sメーターは正常動作しますが、ALC、I.C、P.Oはメーターが全く振れません。
ALCの不良はMOD&OSCユニットC6のショートが原因で交換しました。
ICメータの不具合は切替スイッチの接触不良です。これにも接点復活剤を麺棒に浸し接触面を磨きました。
P.Oはメーターが動かなかったのはP.Oアジャスト用ボリュームの不良が原因でした。
D キャリアボリュームにガリがあります。
このボリュームはマイクゲイン調整用と2連ボリュームとなっているため新品ボリュームとの交換は難しくなっています。どうしても修復したい場合はボリュームを一旦ばらして接触面をずらすとか、2B程度の鉛筆で接触面をなぞると修復可能でないかと思います。今回は接点洗浄剤を使用し接触不良・ガリを修復しました。
E特にメータの不具合はリレーの接触不良も一因と考えられたので接点洗浄剤で洗浄するとよと思います。
なお、ALCメータはミドリ色右端の位置に調整します。右端がゼロ点です。ALC動作は右端から左に振れます。運用ではミドリ色の範囲で動作するようにします。
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ロータリー、プッシュ、スナップ、VRなどの接触不良・ガリの修復
(記載例はTS−520での修復方法を事例として掲載しています)
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受信ができないなどのは各スイッチ等の接触不良が原因だったケースが多く見られます。ロータリースイッチなどの接触不良を修復しただけで正常に動作するようになることもまれではありません。
無線機等は長期間動作させないと、ロータリースイッチ、スナップスイッチ、プッシュスイッチなどのスイッチ関係の接点やボリュームの接触面が酸化皮膜等で接触不良になり、正常に動作しないことが多く見られます。接触不良が原因で全く送受信ができないこともあります。
接触不良を解消しただけで元のように正常に動作する例は多くあります。
・全く受信ができない、
・各ボリューム類にガリや接触不良が見られる、
・AGCの切り替えができない、AGCをオフにしてもSメーターが振る、
・METER切り替えが上手くいかない、
・RIT調整ができない、
・RF ATTが動作しない、
・スタンバイスイッチを動作させても送信状態にならない
・バンドによって受信出来ない、
などは接点の接触不良が原因の場合が多く見られます。
接点の修復は多くの場合接点洗浄剤で修復することができます。接点復活剤はNGです。
接点復活剤はべとべとする溶剤がそのまま接点周りに残りショートしたり、容量や抵抗値を示したりする危険が大です。
接点洗浄剤は溶液が蒸発するのでこのような心配はありません。ただし接点洗浄剤の溶液も蒸発するまで多少時間が必要です。電源を入れるのは30分以上経ってからが無難です。
特にTS−820などの真空管トランシーバーではバンド切り替えロータリースイッチに300V近い高圧が加わっているので、乾燥前に電源を入れるとショートの危険性があるので注意が必要です。
接点復活剤を使用する場合はスプレー式はさけて、ハケや綿棒で接点に直接塗布する方法であればトラブル防止につながると思います。
実際にこれまで30台弱のTS−520をレストアしてきましたが9割以上のTS−520が復活させることができました。勿論、これだけで復活するわけではありませんが、修理の第一歩です。
さらにVFOの特定の箇所で受信ができなくなる現象も長く動作させなかったために起こったローター部の接触不良が原因です。接点洗浄剤で修復できないときは、2000番紙ヤスリを接触面に差し込んで接触面を磨き、接点洗浄剤を塗布し何度か回転させて接触不良を解消することができます。
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ボリューム、ロータリースイッチ、リレーの接点不良の修復。
繰り返しますが接点修復には接点復活剤はNGです。溶液が残り修復不可能なトラブルを引き起こす可能性が大です。
@使用されているボリュームは写真のように隙間が空いている安価なボリュームが使用されています。これが幸いし隙間から接点洗浄剤を噴霧しガリなどが解消することができます。
Aバンド切り替え、モード切替、ファンクションの各ロータリースイッチも接点洗浄剤を振りかけスイッチを回転させて多くの場合修復できました。
Bリレー接点が黒く変色している場合は2000番の紙やすりをリレー接点に挟み込んで丁寧に落とし接点洗浄剤を振りかけます。なお、リレーは形は同じですが使用箇所が違うので注意が必要です。300Ωがアンテナ切り替え用です。
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バイアス電圧の不具合、ヒーター電源をオンにする前のチェックポイント
(記載例はTS−520を事例として掲載しています)
電源プラグの代替
不具合箇所の修理
調整
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トラッキング調整
FT−101Bのトラッキング調整は取説に詳しく記載されていますが、古くなったFT−101Bの場合なかなかトラッキングが取れないことがあります。取説ではMIX部分の調整は送信出力最大にとなっています。これだと上手くトラッキング調整ができませんでした。
今回はこのMIX部分は受信感度最大(Sメーター最大)になるように調整することにしました。
調整手順は以下の通りです。今回は3.5〜21MHzを調整しました。
@調整順序は、受信部その後送信部(DRV)としました。また21MHz、14MHz3.5MHz、7MHzの順に調整しこれを数度繰り返します。
A調整時のダイヤル位置は0です。7MHzの場合は7.000MHzです。
BPRESELECTの位置は送受信とも21MHz 8.5、14MHz 7、3.5MHz 2、7MHz 5です。
C受信調整→マーカー信号をダイヤル0で受信し調整順に従いSメーターが最大になるようにRF、MIX部トリーマーを調整します。これを2〜3回繰り返します。
D送信調整→ダーミーをアンテナコネクターに繋ぎ、TUNEモードに設定します。
キャリア抽入は必要最小限の出力になるよう適宜調整します。
・マーカー信号をダイヤル0で受信しPRESELECTを調整しSメーター最大位置に合わせます。
・プレート調整は該当周波数付近に合わせます。
・送信状態にし出力が最大になるようにDRVの該当するトリーマーを調整します。この調整も数回繰り返します。
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ファイナルの中和 |
@21.0MHzでパワーを50Wに調整します。
Aこの状態でIPディップ点が出力最大になるように中和トリーマーを調整しました。
BSG電圧をカットしアンテナ端子に現れる電圧(電流)が最小になるよう調整することもできます。
この場合ダイオードによる検波回路を組みテスターで回路に現れる電圧を測定します。
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