ヤエス HF、50・144MHz オールモード受信機 FRDX−400 

  FRDX−400は送信機のFT−400の受信機ペアーとして発売されました。構成はコリンズタイプのダブルスーパー方式です。VFOなどの発振回路を中心に一部トランジスターが使用されていますが、そのほかの回路はほとんど真空管が使用されています。高周波増幅部は普通は6BA6が使用されることが多いのですが、このモデルではハイgm管6BZ6を使用し6BA6の約2倍のゲインを得ています。
 スーパーデラックスはCW、AM、FMフィルターのほかマーカー発振器、50MHz・144MHzコンバーターが内蔵されているフルオプションタイプです。FT−400にはフルオプション内蔵タイプ(スーパーデラックス)以外はそれぞれもオプションが選択できるモデル(デラックス、ノマール)がありました。
 FT−400には50MHz・144MHzアップバーターが準備されていたので1.9MHz〜144MHzまでのオールバンド・オールモードでQRVができるシステムが構成できました。
 トリオでもJR−599、TX−599がありますが、こちらはオールトランジスターで構成されてたので、オールバンド・オールモード真空管受信機としては今となっては大変貴重な存在です。 
 これまで数台修理しましたが、いずれものFRDX−400も受信感度も含め大変良い状態にレストアできたと思っています。
ただし、全体的な部品の劣化からかハイバンドとくに28MHzには感度低下がみられるモデルもありました。
 また、50、144MHzコンバーターは状態にもよりますが快適的に受信できるモデルは少ないようです。アンテナをつけメリット5で受信できればラッキー程度に考えた方が良いと思います。


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DRDX−400レストア項目
クリックすると該当項目の説明にスキップします。
・入手時の状態

・ロータリー、プッシュ、スナップ、VRなどの接触不良・ガリの修復

・メカフィルの修復

・受信感度調整

・50MHz、144MHzコンバーター

・周波数構成とVFO

・マーカー発振器

・Sメーターの不具合補修

・シャーシ・プリント基板・水晶など清掃

 

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入手時の状態

入手時の状態

@外観は年代通りヤニ、埃で大分汚れ、ケースも傷や錆が目立ち状態が良いものは少ない感じです。
A内部シャーシは埃が貼り付き、点状の小さな錆が浮き出ているものがほとんどです。
B電源は入るものの受信は全くできないか、極端に感度が悪いものばかりです。
 色々やっているうちにマーカー信号がほんのかすかに受信できてきたら希望が湧いてきます。
C低周波部分は音量ボリュームの大きなガリがあるものがほとんどで動作しています。
 FRDX−400の低周波増幅部は一般的にゲインが不足しています。(設計上の問題だと思います。)
DRF増幅部もRFボリュームを回すとノイズレベルが変化することからRF部もまがりなりに動作していものが多いようです。
E真空管チェッカーで各真空管をチェックすると劣化している真空管は少なく真空管は思った以上に長寿命です。
F局発水晶は全く発信しないことはまれで一部バンドで発信が確認されます。
Gバンド切り替えローターリースイッチをよく観察すると緑青らしい錆が確認できるものが多いですね!
H以上から受信できない原因は長年未使用状態だったためにローターリースイッチに接触不良が発生したことが主な要因だと思われます。
G今まで入手したモデルは全てスーパーデラックスモデルで50MHz、144MHzコンバーター、マーカー発振器、CW・AM・FMフィルターが取り付けらています。
 50、144MHzは受信できるようになればラッキーと言った感じでしょうか!
但し中には、マーカー発振器が取り外されているものがありました。

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ロータリー、プッシュ、スナップ、VRなどの接触不良・ガリの修復

ローターリースイッチの修復

 これまでも動作しない無線機の多くにロータリースイッチの接触不良が見られたので、まずロータリースイッチの修復から取り掛かることにしました。
 ロータリースイッチの修復には接点洗浄剤を使用します。接点洗浄剤は時間が経つと溶液が蒸発します。接点復活剤は絶対NGです。接点復活剤は溶液が蒸発せずそのまま塗布した部分に残ります。
 ロータリースイッチは接点間や接点と取り付け金具の間隔狭く、付着した溶液が導通媒体となりショートなどでロータリースイッチが使用不能になる恐れが大です。
 何度かショートでロータリースイッチの端子と取り付け金具の間が炭化し導通状態になった無線機を修復したことがあります。幸い炭化部分を削り取って修復することができましたが、状態が進めば修復は不可能となってしまします。
 ロータリースイッチが使用不能になれば代替品を入手することがかなり難しいことから、無線機の修復ができなくなります。
 接点洗浄剤でも塗布後溶液をよく乾燥させないで通電すると同じ事が起こるので注意が必要です。2〜3時間か半日程度時間が経ってら電源を入れるほうが無難です。
@バンドスイッチ回りの緑青を小型精密ドライバーなどの先で慎重丁寧に落とします。
A接点洗浄剤はバンド切り替えスイッチ全体に万遍なく振りかけるのではなく7MHzなら7MHzの接点だけに振りかけるようにします。
Bこれで7MHzが受信できるようになればラッキーですが、物事はそうはいかないことが多いです。
Cモードスイッチなど他のローターリースイッチが接触不良になっている場合は多いので、同様に接点洗浄剤で修復を図ります。
Dこれで何とか外部入力100Khzマーカー信号のビート音が確認できるようになれば見通しは明るくなりますが、Sメーターはあまり振れ無い状態のものが多いと思います。
マーカー信号が受信出来ないバンドは局発水晶発振に問題があるのかもしれません。
根気よく作業すればロータリースイッチの接触不良はほぼ解消されると思います。
21MHz局発水晶の例
 21MHzが受信できない原因は局発水晶26853.5Khzの発信不良です。コアー調整でも発信しない場合は水晶を温めたり、比較的高い電圧をくわえたり、ケースを外して直接水晶に刺激を与えたりして発振させることができましたが、若干発信が弱いようです。26853.5Khz水晶は特注するか他のFRDX−400などから流用するしかないですね!
 また受信には問題が無かったのですが、40m12853.5Khzも若干発信が弱いモデルもありました。

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メカフィルの修復

メカフィルの修復
 極端に感度が悪い原因を調査するためにSG信号455Khzをメカフィルのインに入力すると出力側に極端に弱くしか表れないことが分かりました。
 以前、ネットでメカフィルを洗浄すると感度がよくなったといった記事を見ていたので、ダメもとで挑戦してみることにしました。そもそも洗浄で良くなるなどと言ううことは信じていませんでしたが、メカフィルを分解しよくわかりました。写真のようにスポンジが溶けて接着剤となり455Khzで振動する部分がケース底部にしっかりと接着されています。これでは455Khzで「ピュー」と振動できないかもしれません。納得!!
@まずメカフィルユニットをシャーシから取り外します。
A今回はCWとSSBの2つのメカフィルを基板から取り外しました。
Bメカフィルケースの詰めをずらし本体を取り外しました。
C比較的綺麗にスポンジに包まれています。(問題ないように思ってしまいました。)
Dスポンジを取り外したところスポンジが接着剤と化しメカフル本体がケース底部にしっかりと接着された状になっていることが判明しました。
E無水アルコールをメカフィルと底部に染みこませ接着部分を慎重に取り外しました。
Fメカフィルに付いたスポンジは無水アルコールで拭き取りました。
Gフェルト系の布で軽く包みケースに収め作業は完了です。
これで感度が良くなればラッキーで早速電源をオン
 期待以上の結果です。SSBはもとよりCWでもしっかりSメーターが振れて受信できるようになりました。
 古くなったこの種のメカフィルはスポンジの接着剤効果によりメマフィルがアッテネーターに変化することが理解できました。
FRDX−400を調整しても感度が良くならない場合は一度メカフィルの洗浄をお勧めいたします。
 作業過程でメカフィルを壊してしまうリスクはありますが挑戦する価値は十分にあります。万一壊してしまった場合はセラミックフィルターや他のクリスタルフィルターで代用するしかなくなります。フィルター無しでは快適なSSBの復調は難しくなります。

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受信感度調整

受信感度調整

 Sメータが振るようになったのでマニアルに従いさらに感度調整しました。
@455IF回路
・Sメーターが最大になるようにL114、L115の調整します。L115のシャーシ側は何故か調整できなくなっています。
ATノッチフィルター
・モードAM、バンド80m、マーカー信号受信、REJECTION TUNEのツマミは中央、VR601も中央に合わせます。
・L601、VR601を交互に調整しSメーターが最小になるようします。
B第一中間周波数部
・10DバンドでSメーターが最大になるようL112を調整します。
・21MHz→1.9MHz順にSメーターが最大になるよう対応するトリマーコンデンサーを順に調整します。
C第二中間周波数部
3.8MHzに周波数を合わせSメーターが最大になるようL110のコアーを調整します。L110はVFOボックス内にあります。
D5高周波増幅部
・モードAM,2MHz、PRESELECTORメモリー5でSが最大になるようにL102、L106を調整します。
・3.8MHzでSが最大になるようにL103、L107を調整します。
・7.2MHzでSが最大になるようにL104、L108を調整します。
・14.2MHzでSが最大になるようにTC101a,TC102aを調整します。
・28.2MHzでSが最大になるようにL105、L109を調整します。
・21MHzはTC101b、TC102bの調整となります。
これらの調整の結果Sメータが大きく振れるようになりました。
 なお、コアー調整はコアーが蝋で固定されているので、ヘアードライヤーなどでコアー部を温め慎重にコアー調整します。無理に力を入れてコアーを回すとコアー破損や最悪コイル自体が破損する恐れがあります。
周波数安定度も特に問題はありません。7MHzSSBQSOワッチ中に同調を取り直すことは全くありませんでした。
SSGの7MHz信号40μdbVを受信するとS9+を示しました。

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50・144MHzコンバーター

50MHz局発水晶の修復
 50MHzコンバーターが動作していませんでした。原因は22MHz水晶の発信不良です。丁度オークションに22MHz水晶が出品されていたので早速手配しましたが、ダメ元ですので修復できないか解体して調べてみました。
@水晶本体をケースから取り外します。ケースはハンダ付けされているので、20〜30W程度の半田ごてで温めれば容易に取り外せます。
Aコンバーターに取り付け指で軽く振動を与えたところ以外にも正常に発信するようになりました。
B元通りケースに収め修復完了です。ついでにコンパウンドでケースを磨き上げました。
C袋に入った22MHz水晶はたまたまオ―クションで入手した22MHz水晶です。
 長時間未使用状態で発信しなくなった水晶は「温める、、振動を与えたえる、ある程度の電圧をくわえる」などの刺激で正常に発信することはよくあります。
 今回はたまたま22MHzドンピシャの水晶がオークションに出ていたので購入できましたが、目的とする発信周波数の水晶入手は容易ではありません。ダメもとで修復に挑戦してみる価値はありますね!

144MHz局発水晶
 50MHzコンバーターは問題なく動作していましたが、144MHzコンバーターが動作していませんでした。
144MHz局発水晶38.666MHzが発振しません。水晶端子に電圧をくわえたり、キャップを外して機械的刺激を加えてみましたが発振しませんでした。
 ネットでたまたま見つけた同型の水晶があったので急遽購入し動作確認することができました。
38.666水晶はFT−101Eに使用されているので入手しやすいかもしれません。

50MHz、144MHzコイルのコアー
 50MHz、144MHzコンバーターが動作していませんでした。
よく見るとコイルのコアーが一部取れてなくなっていました。
使えそうなコアーがあったので使用してみたところ両バンドとも受信できるようになりました。
基板中央付近の緑色のコアーが該当コアーです。
50MHz、144MHzとも実際のFMモードQSOを受信しております。
 なお、50MHz、144MHzともバンドの下の周波数で再高感度になるよう調整しております。
 51MHz、145MHzを中心に受信する場合は調整し直す必要があります。

50MHz、144MHzコンバーターが逆に取り付けられていたケース
 
このまま刻印されている通りアンテナコネクターにアンテナを接続すると、50MHzコネクターに50MHzアンテナを接続すると144MHzコンバーターに接続されたことになり、144MHzは50MHzアンテナが接続されていることになります。上手く受信できたのでしょうか?
 50MHzと144MHzコンバーターが逆についていました。本来の取り付け方法に戻そうと思ったのですが、配線を張り直さないといけないので、そのままとしアンテナコネクターのみ本来の状態に戻しました。
50、144MHzともSG信号は確認でいましたが、局発水晶発振が若干不安定のようで、また、感度も今一つです。あまり実用的ではないので調整せずそのままにしました。

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周波数構成とVFO

周波数構成とVFO
 FTDX−400周波数構成はブロックダイヤグラムの通りです。第一混合周波数帯が5.355〜5.955MHz、VFO発振周波数が4.9〜5.5MHzで第一混合周波数帯に重なるのが少し気になります。
@VFOのバリコンの羽が1枚だけ少しゆがんでいます。周波数の直線性のためにわざとゆがめたのでしょうか?以前修理したFRDX−400も同様でした。
A発振周波数はL113、TC105で調整できます。TC106は温度補正用で調整済なので調整は不要です。

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マーカー発振器

マーカー発振器の修復
 内蔵マーカー発振器の発信がどうして弱いのか、あるいは受信感度が悪いのか調べてみました。
@マーカー発振器を本体から取外し調べました。
Aネズミにでもかじられたのでしょうかマーカー信号出力高周波チョークが写真のように断線しています。
B同じ高周波チョークが無かったので手持ちの適当な高周波チョークを取り付けました。
C信号は若干弱いものの仕様に支障が無いと思います。
D水晶発振子が汚れていたのでついでに磨き上げて綺麗にしました。

マーカー発振器の組み込み
 このFRDX−400にはマーカー発振器は付いていませんでした。
ヤエスのマーカー発振器は100Khz、25Khz切り替えができるものです。その点トリオの場合は25Khzのみです。
今回はトリオのマーカー発振器が入手できたのでこれを取り付けました。
特に100Khz発振が付いていなくとも何ら不自由することはこれまでも全くなかったので、実際の運用で不便を感じることはないと思います。

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Sメーターの不具合補修

Sメーターの不具合補修
 Sメーターが全く動作しません。
Sメーター回路の15KΩ抵抗が写真のように焼き切れていました。
手持ち抵抗に交換し、さらに調整用半固定VRの接触不良を修復したところ問題なく動作するようになりました。
 半固定VRの動作不良が抵抗焼き切れの原因とは思えないのですが!

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シャーシ・プリント基板・水晶など清掃

水晶の錆落とし
 レストアするなら徹底的に拘ろうということで、水晶発振子を磨き上げました。磨き上げには極細コンパウンドを使用しました。
@どの程度綺麗になったかわかるようにLSB、USB水晶の片方を磨きました。
A局発水晶をすべて磨きました。表面は正に鏡のように「ピカピカ」で新品のようです。
B同様に144Mは、50MHzコンバーター、マーカーの水晶も磨き上げました。

シャーシ・プリント基板など清掃
@シャーシは綿棒、竹串、無水アルコール、コンパウンドで丁寧に磨きました。
Aその後、さび防止のために防錆油を塗布しました。
B144、50MHzプリント基板などのプリント基板を無水アルコールを浸した綿棒で丁寧に汚れを落としました。
C取り付けてある抵抗やコンデンサーも同様に汚れを落としました。
Dツマミは取り外しマジックリンに浸し汚れを落としました。長時間マジックリンに浸すと塗装がはがれたりするので注意が必要です。
Eメインダイヤルはコンパウンドで磨き上げました。
F正面パネルのビニールは汚れがひどかったので外しました。このビニールはヤエス無線が工場からの出荷時に無線機正面パネルに傷が付かないようにする保護材で無線機使用時は取り外すことを前提に取り付けていたのですが、ユーザーの評判や要望でそのままつけて使用するスタイルになったようです。ヤエスの古い無線機のパネル面が比較的綺麗なのも頷けますね。

スピーカーを内蔵させると操作性が良くなります。

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