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高校二年の時、朝夕眺めていた郷里の赤城山に友人と初めて登り、以来50年近くにわたり全国の山歩きを楽しんできました。

サラリーマン時代は会社の山岳部に所属し良き先輩や仲間に恵まれる一方、単独行も数多く行いました。岩壁登攀などのハードな山行は行いませんでしたが、沢登りや積雪期登山・クロスカントリースキーなどいろいろな形態で山を楽しんできました。

山歩きの楽しみは、下山後の温泉と酒です。山の中腹や麓の温泉は昔からの自然湧出天然温泉が多くあります。景色を眺めながらゆったりと湯につかり、湯上がりに飲むビールの味は格別で、この楽しみのために山に登るようなものでした。

ホームグラウンドは地元神奈川の西部を占める丹沢山塊で、東西40km、南北20kmの山域を年間通じ隅々まで歩き回りました。次いで八ヶ岳に良く通いました。

写真アルバム

長いこと軽量化と「景色は目でしっかり見て記憶に留める」を信条としていたため、カメラを山に持っていきませんでした。そのため年をとり昔を懐かしんでも写真があまり残っていません。その数少ない中から、代表的な山域の写真を掲載しました。

最新の山岳写真は多くのホームページで見ることが出来ますので、ここではあえて昔の白黒写真を選びました。数十年たっても山そのものの風景は変わりませんが、山小屋やテント・道標などは変わっています。

百名山愚考

次に登る山を考えるのは楽しみなものです。数多い山の中から体力・技術・装備・休みの日数・懐具合などを考慮し決めていきます。いつも登りたい複数の山の在庫を抱えていました。

深田久弥著「日本百名山」は日本の名山を多く網羅し、ガイドブック的に活用している人が多いと思います。小生も、まだブームになる前に本を購入し、若い頃はこの百名山の制覇を目指しました。しかし、自分なりにいろいろな山を登っている内に興味を失い、あえて99座で登り納めにしました。自分にあった百名山を選んでみるのも楽しいものです。

登山道具の想い出(コンロについて)

装備や衣服など、登山専用の道具類には数々の想い出がありますが、その中で、今回は主に調理に使用するコンロについて紹介します。寒いテントの中でコンロの炎を見つめ音を聞きながら、調理したり暖をとった懐かしい想い出が蘇ってきます。

焚き火

昔と違い、薪で炊事をしたことは数えるほどしか有りませんでしたが、昔は幕営時によく焚き火をしました。今では環境保護や安全性から簡単に焚き火はできなくなりましたが、最近焚き火用の燃焼台が販売されています。焚き火と言っても、おかしな儀式を伴う盛大なキャンプファイヤーでなく、数人で火を囲む小さな焚き火です。暖炉や薪ストーブの良さと共通しますが、炎を見つめながら友と静かに酒を酌み交わすのは至福の一時です。

アルコールバーナー

山歩きを始めた当初は、金も無くろくな装備はありませんでした。コンロはアルコールバーナーでした。薬局でガラス瓶入りのメチルアルコールを買い求めました。名前のようにテントの中では”目が散る”燃料でした。他のアルコール系燃料と同じで火力が弱く、風があると中々湯が沸きませんでした。さすが今ではほとんど見かけません。

缶入り固形燃料

次いでよく利用したのが缶入りの固形燃料です。今では登山用としてはあまり利用されていないかと思います。液体のアルコールを半固体状にしたもので、災害時の非常用燃料やテーブル調理用として販売されています。火力や対風性能はアルコールバーナと同等か以下でした。

固形燃料

スティック状の燃料で、スイスメタやエスビットなどと言う商品があります。石油・ガソリンコンロの点火(予熱)用として主に使いましたが、専用の折りたたみ式燃焼台が有り、一人分の湯を沸かすことが出来ました。メインのコンロではなく、非常用として携行しました。固形ではありませんが、点火用燃料としてチューブ入りアルコール(ゲル状)が有ります。

石油・ガソリンコンロ

コンロと言えばこれですね。今ではガスコンロに押されあまり使われていませんが、最も長い期間愛用されてきました。初め使ったのは石油コンロで、スエーデンやオーストリア製のラジウス・スベア・プリムスなどが有名でした。

ラジウスは登山用コンロを代表する名器です。所属する山岳部ではラジウスとスベアを数台使っていました。大きな四角のブリキ缶に分解されて入っており、付属のスパナで組み立てて使います。予熱が必要で、予熱不足だと青い炎が出ないため、新人によく使い方指導したものです。安全で安定した燃焼を続け、故障もしませんでした。空気ポンプでカチャカチャと内部を圧縮して使います。燃焼音も良いものでした。ただし、燃料の灯油をこぼすと臭いで大変なことになります。

スベアNO,106 スエーデン製


次はガソリンコンロで、いろいろな形式のものがありました。ガソリンは沸点が低いため冬山の低温環境でも火力が衰えません。ただし風よけは必要です。−20℃位の時、風よけなしで使ったら火力はあるがクッカーからの放熱が多く、湯が沸きませんでした。

山岳部ではオーストリア製のホエーブスNo,625とNo,725を数台使っていました。通称ブスと言い登山者に長い間愛用されてきました。No,625はタンクが大型で大人数の調理に適しています。背が高いのでやや設置安定性に欠けます。ノズル交換により石油とガソリン双方が利用可能です。初期には安全性から石油で使用していましたが不調になりやすく、途中からガソリンに切り替えました。ガソリンは自動車用でなくアンチノック剤が入っていないホワイトガソリン(白ガス)を使います。今ではどこの登山用具店でも買えますが、昔は特定のガソリンスタンドで一斗缶買いしました。

ガソリンはポリタンク(後ではアルミ水筒)で持って行きました。水や他の燃料と間違わないようタンクにドクロマークを書いたものです。余談ですが、昔の水筒はポリタンクしか無く、幾ら使ってもあの臭いが抜けず困ったものでした。健康に害は無かったのでしょうかね? ガソリンコンロは点火用固形燃料が切れたとき、自身のガソリンを点火用受け皿に少量吹き出し火を付けて予熱することが可能です。しかし、これはテント内でやってはいけません。また、コンロが煤だらけになることを覚悟してください。

No,725は小型のコンロで単独行や少人数に適しています。ガソリン専用です。

ホエーブスNo,725 オーストリア製


アメリカ製のコールマンも有名ですが、あまり使ったことはありません。

石油コンロ・ガソリンコンロは定期的な保守点検(ノズル掃除・ポンプの革パッキン油・漏れ調査)が必要です。石油とガソリンは燃料補給時や点火時は臭いますが、燃焼中は完全燃焼しほとんど臭いません。ガソリンコンロは予熱が不十分だと炎を吹き上げるので取り扱いに注意を要します。八ヶ岳のテント場で隣に張られた学生のテントから、朝食時「ワー」と言う叫び声が聞こえたので飛び出してみると1分ほどでテントが全焼したことがありました。

テント内では換気が必要で、雨天時や冬期はテント地に水膜が張り通気性が無くなるため、必ずベンチレーターを開けてください。いずれにしても石油・ガソリンコンロは屋外使用が原則で、テント内利用は安全性と健康面でリスクがあることを覚悟して使うべきです。山小屋は屋内使用を禁止したり、使える場所を限定したりしています。

ガスコンロ

現在、登山用コンロと言えばガスコンロです。初期のタイプは大きく火力も弱いため冬山の屋外では使い物になりませんでした。現在では寒冷地用ガスがありオールマイティーに使えます。

様々な機種が販売されていますが、写真のものはクッカーに収まり火力も強いチタンヘッドの小型軽量機種です。ガスコンロは点火が容易で優れものですが、石油コンロやガソリンコンロの様な道具としての愛着がわかないのは私だけでしょうか?

ガスコンロ


笑い話として、日帰りハイキングに大きな家庭用カセットコンロを持参してきた人がいました。また、今では売っていないでしょうが、ボンベをくるむカバーがありました。外気の寒さを防ぎ火力を弱めない設計の様ですが、空調エンジニアの目で見れば笑止千万です。ボンベ内の液体ブタンは、外気熱で加熱され気化して吹き出すので、断熱しては逆効果です。ヒートパイプでボンベを加熱するのは理にかなっていますが、寒冷地用ガスが出てからは見かけません。


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