アンクルKの他愛もない話

人形劇・影絵劇の台本 BGMを操作しながらナレーター気分になってお楽しみ下さい。

アイデアもるすり減る

長年附きあっている友人の中に、販売の天才とでもいう男がいる。面白いことに、彼は平凡な、ありきたりの、普通の男で、どこにでも転がっている古靴のような人でありました。私は機会あるごとに、その成功談を聞き出そうとしたのだが、なにしろ根が遠慮深くて、自慢話などしないたちなので、それでも、ぽつぽつとこんな話をしてくれた。

『そうさね、僕は自分ではアイデアを持っている人間だと思っている。それは誰だってできることだ。ところが、たいていの人は一度アイデアを得たら最後、そのアイデアは万古不易ででもあるかのように思い込んでしまいがちである。だが、僕にはそうは思えない。アイデアにしたところで、靴のようなもので、いくら気に入った靴でもすり減ったら捨てるしかない。概してその寿命は一シーズンか一年ぐらいなものだ。』

ff『もちろん、そのアイデアがまだ効き目がある間は、それがすり減るまで使うことはかまわない。しかし、常に新鮮なアイデアを実験しておく必要がある。』

『手持ちのアイデアがすり切れ、代わりのアイデアも品切れなどという状態にならないよう心がけなくっちゃ……。』

彼が実行しているのは、いつも三つか四つのアイデアの手持ちを用意して、販売の際、試しておくことである。最も効果のあるものは他日のため仕舞っておいて、今使っているアイデアの効き目が失せたときに備えておくわけだ。

愛用のアイデアが少しでも息切れしたら、躊躇することなくそれを捨て去って、次の新しいアイデアに進むべきである。

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