アンクルKの他愛もない話

人形劇・影絵劇の台本 BGMを操作しながらナレーター気分になってお楽しみ下さい。

戸口のハンドルには札束

『私には変わった道楽がありましてね。』とそのセールスマンが私に語り出した。

『戸のハンドルを収集してるんです。』『戸のハンドルですって……そりゃまた風変わりな道楽もあったもんですね。』

その説明はこうであった。彼が若い頃、販売の成功を表徴するものはないか、万事、不如意の時でも慰めてくれるものはないかと探し求めたのだそうな。そして、とうとう一つの考を思いついた。

『私は戸口のハンドルを廻す人でありたいということに結着したのです。』

ff『一日のうち、ハンドルを廻す回数が多いほど私の売上成績は鰻登りでした。また、そういう訳で私は戸口のハンドルを貴重な財産であると思うようになりました。』

『街に出て入り口のハンドルを見ると、そのハンドルには札束がぶら下がっているように見えてきました。そして更にお金が儲かりました。同じ会社の他のセールスマンが別の方法で得た成功より、私のこのつまらないやり方が、かえって遙かに大きい成功だという事実を認めないわけにはいかないと思います。』

私は思った。今後のセールスマンによって引き開けられる入り口のハンドルの価値が、偉大なものであることを誰が知っているだろうかと。

▲一番上に

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