考える
セールスマンが他人にひけを取らずにやていこうとするならば、明日とはいわず、今直ぐ実行し、今後も引き続いてぞくぞく実行しなければならないことがある。それは考えることである。
しかもセールスマンは浮世の世知辛い変遷に対処しなければならないので、考えることは益々必要の度を高めてくるのである。
数年前のこと、アイオワ大学の一教授が思考検出器というものを使って実験したことがあった。教授は創造的な考えは、何時、如何にして表現されてくるものかを発見しようとした。
教授はこの創造的な考えは、何かの問題に強く働きかけている時よりも、心が平静である時の方が一番よく表現されてくるものであることを発見した。そこで、セールスマンにとって教訓となる点は、世にも激烈で刺激的な時よりも、日常のゆったりとした寛いだ時の方が、考えを編み出すのに格好の時である。
最近になって、ある人が『考える』ということについて大いに参考になることを発見した。それはボストンの広告業者で、アレクサンダー・F・オスボオンという人である。彼は、どうしたらアイデアを作り出すことができるかについて小冊子を書いた。彼は六つの法則をあげている。これはわれわれに参考になる節々が多いと思う。すなわち、それは、
1.目 標── 標的を選び出すこと。そして、その標的に集中すること。
2.発 射── 想像力を駆って自由に射込むこと。他の批判を恐れて尻込みしないこと。どんなに粗暴で、また、どんなに下らなく見えるものでも、アイデアというアイデアは残らず書き記しておくこと。
3.再吟味── 創造的なアイデアを冷静に調査すること。その中の一番良いアイデアを三つ選び出し、心静かに瞑想すること。
4.休 息── 暫く、これらのアイデアをすべて忘れる。音楽を聴いたり、劇場に出かけたり、教会に行ったりする。睡眠はアイデアを唆すことすらある。
5.相 談── まだ、物足りない時は、他の人と話し合う。自分の問題をはっきりと語ることによって、また、それを説明しようとすることで、自分の打ち立てた標的に光明を投ずることとなろう。
6.再装備── それでもまだ標的に命中しないときは、再び想像力という弾丸をこめて、再び発砲する。かくして、命中するまで発砲を継続する。