アンクルKの他愛もない話

人形劇・影絵劇の台本 BGMを操作しながらナレーター気分になってお楽しみ下さい。

客の肚を見抜け

九十四歳の高齢で、なおかつ現役のセールスマンであった人と話したことがあります。十六歳からかれこれ七十八年間の間、彼の言葉をかりて言えば、来る日も来る日も、コツコツと販売を楽しんでいたことになります。相当な資産を有するにも拘わらず、販売することは彼の楽しみだったようです。

彼が心がけていたことは、『自分の足で、自分の体を客先へ持ち運んでゆくことです。自分が販売している品を、この家は多分買うに違いないと思われる人のところへ』というものだった。

セールスマンは誰彼なしに商品についてお客と調子を合わせて話していける資質が必要である、とはわかりきった話である──つまり、これはお客を識別する力といわれている。しかし、多くのセールスマンはお客の肚の底を識別する能力があまりにもなさ過ぎる。碌な知識もないくせに、一方的に勝手な判断をして、お客に対し屡々(しばしば)間違った、無理解な判断をおっかぶせがちである。

わけても販売においては、セールスマンの第一の仕事は、箸にも棒にもかからぬお客を篩(ふるい)にかけて見分ける能力である。

しかしながら、お客をふるい分ける場合に、あまりに、克明な選り抜きをしないよう気をつけることである。

セールスマンは誰でも経験するものであるが、最も好ましからざる客と思っていた方に、最良の販売をすることもある。

セールスマンは、買う客を見逃してはならない。また、みそこなってはならない。

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