アンクルKの他愛もない話

人形劇・影絵劇の台本 BGMを操作しながらナレーター気分になってお楽しみ下さい。

時は万有である

彼は毎朝十時、コーヒー倶楽部に根気よく顔を出す常連だった。そして、いつも一杯のコーヒーで半時間ほど、ボーイ達を相手に過ごすのは何より愉快そうにみえた。ところが驚いたことには、先週のある朝彼に会うと、彼はこんな贅沢病は断然やめてしまうとキッパリ言い切った。

『これで朝のコーヒー倶楽部もおさらばですよ。一切がっさいやめてしまいます。これからはたゞ働くだけです。』と彼は言った。

we『それも結構でしょう。だが来週にでもなれば、今の決心の箍もすっかりゆるんでしまうでしょうよ。これまでも、幾度も聞かされたお題目ですからね。』と私は少々からかってみた。

『今度という今度こそ、間違いっこなしですよ。』と彼は応酬してきた。

『それはそうと、何かあったんですかね。』

彼は真剣でした。その理由というのは、何はさておき、来年からは真先かけて働こうと決心したというのです。これは私から見ても、至極立派な筋の通ったものです。

『今年はセールスマンの年です。気楽で水気の多い時代は過ぎ去りました。今日からは自分の従事している商売と四ツに取り組んで渾身の力をこめて戦うことです。私は去年の暮れ、壁に掛かっている額を見たのです。それ以来、私はすっかり人変わりしたのです。そして、この私は働こうとしているのです。この新しい年を迎えて、一生懸命働き通そうとしています。働くか、それとも沈没か二ツに一ツです。本当にそうなんです。』

勤め働くことは常にセールスマンの最大の資産である。しかし、年中ぶっ通し、先頭切って努力するセールスマンだけが、ほんとうに成功する幸運に廻り合わせ、めぐり合わすものであると、私の友人とともに考えるようになったのです。

勤め働く意欲を旺盛にするには必ず次のことが役に立つと思われる。

1.今までのしきたりや、決まり切った順路や時間で客先を訪問することをやめること。

2.予め面会の準備を考えること。そうすると客とのとっつきもよく、また拳闘の独り稽古をするような気持ちもいらないし、落ち着いて素直に、商売の話や研究にとりかかることができる。

3.顧客をよく分析すること。その場合に最善優良な時間を有効適切に活用すること。

4.ことごとに、より多くの販売成績の増進を試してみること。その心懸けで努力すること。

5.塵も積もれば山となる。わずかばかりでも、毎日継続してやること。

6.毎日朝の十時から、夕方六時まではお客の面前で暮らすことを習慣にすること。

時は万有である。あらゆるものを生産する。今年も、来年も、年々歳々同様である。時を味方とする者はかならずかつことであろう。

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