市場は二日と同じでない
数年前のことである。ブルース・バートンという人が講演をして大いなる名声を博したことがあった。それは『帝王は毎日崩御する』という演題であった。その論者はダビデ王を知らない新しい世代がどうしてやってきたかという、旧約聖書に基づいたものであって、毎日新しい市場がどんな商売にも、どんなセールスマンにも、その目で見ているところで、開けてくるものであるということであった。
そして、この講演の結びは次のようなものであった。すなわち、成功を望むセールスマンは、必ず新規の顧客を獲得しようと努力しなければならないとのことであった。
こうした言葉は、自分の担当区域はこれで全く飽和状態であるなどと考えているセールスマンをいたたまれなくさせるであろう。
合衆国では毎年約二百五十万の子供が生まれる。これは普通の出産率であるが、戦時にはもっと多い。やがて、彼らは成人して百万以上の新家庭を作り、諸君が販売しなくてはならないものを買わなければならなくなる。
数年前、ジェネラル・モータースのC.Fケックリングは、次の言葉でこの状態を説明してくれた。
『諸君が生まれた日には、世界中の人は皆諸君より年長者であった。諸君が二十六歳になると、年上の人と年下の人とは相半ばしている。ちょうど半分半分のところに立つことになる。諸君が四十歳に達すると、人工の八割は年下の人になる。』と。
そこでセールスマンがなさねばならないことは、どしどし販売を継続させていくことである。市場が毎日、諸君のためにうち開かれつつあるということである。そして、販売するためにこの市場に役立たせるようになりさえすればそれでよいのである。
販売とは、全くこんな簡単な筋合いに過ぎないものである。
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