アンクルKの他愛もない話

人形劇・影絵劇の台本 BGMを操作しながらナレーター気分になってお楽しみ下さい。

最上のものであれ!

あるレストランで起こった面白い話。

これは戦争中にあったことなのですが、一人の男がロブスター料理を注文した。

hyところが彼の前に運ばれてきたやつを見ると、鋏が一本しかついていない。早速彼は、給仕を呼びつけて抗議した。

『ですがね旦那。奴は戦争に行って負けてきたんです』と給仕が言うと、彼は、『じゃあ、そいつを返しちまうから、勝った方の奴を持ってきてくれ』と応酬したそうな。

勝った方が占めるべき上位の席は、いつでも空いているにもかかわらず、鋏の一本しかないロブスターぐらいのところで満足しているセールスマン達が多いように思われる。

 

私の知人の婦人で、背は五尺足らず、体重は百ポンドに満たない小柄な人がいますが、彼女の堅実な信条は、商売の上で素晴らしい効果を発揮しています。

彼女は、女性として最初の『販売賞』を勝ち得た席上で、次のような挨拶をしました。

『最上のものであれ! これこそ、なくてはならぬ人になる途だと思います。他の人がやったよりも、さらによくやってみせること。これが自然と私をいい役につけてくれたのです。』

『或る大会社の事務員として社会に乗り出した私は、はじめの二週間というものは途方に暮れました。けれども、その時私は、周囲にいる人達がどんな仕事をしているだろうか、と調べてみたのです。最上のものはいませんでした。そこで私は自分が奉ずる信条の実行にとりかかったのです。三年も経たぬうちに私は最上の事務員になりました。』

『そうなってみると、今度は他のことをやってみたくなりました。事務的な仕事より、何か販売をしてみようと、或る商店に勤め、極つまらぬ地位からやりはじめたのです。ここでも最上の販売員はいなかったのです。よし、自分は最上のものになってやろう。── 事実、その通りになりました。私は非常な成功を勝ち得たのです。』

図体のでかい男たちが、このすらりとした若い婦人に対しては、ほとんど手も足も出ない始末なのだから、全く滑稽な話であります。

 

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