お客が好きなものは

業界で大成功を収め引退した老セールスマンが、『馬鹿な奴らがヘマをやらかすのが、不思議でならない。こんなことは丸木舟から落っこちるより容易いことだ。』と言うのです。

『あなたがしなければならないことは、お客が欲しいものを販売するだけでなく、客がしてほしいことを喜んでしてやることです。』

『条件が同じ商品なら尚更です。誰から買っても同じことです。だが、ただ一方のセールスマンがその人に好かれ、他方のセールスマンは好かれないとしたら、問題はそこにあるのです。お客に好かれ、愛されるセールスマンが素的な販売業績をあげるものです。』

『では、顧客はセールスマンの何処が気に入るのでしょう。』

最初、彼自身はそれができない人であった。

彼はまず、快活さを稽古した。客は気難し屋のセールスマンを好まないものである。

それから彼は、雅量ある寛大さを身につけた。それに加えて、真実を語る勇気を修養した。

セールスマンは、また、愛情深くなければならない。それに機転が利かなくてはならない。とこの老練家は言った。それに正直であると同時に信頼されなければならない。

同時にガリガリ屋であってはならない。そしてなお、謙遜であるならば至極けっこうである。というのは、お客は大風呂敷を広げたり、でしゃばったりするセールスマンを面白い奴と思うかもしれないが、彼らが買い物するのは、控え目のひとからである。

彼は自信を持たなければならない。それは客の中に確信を植えつけねばならないからである。

更に大志を抱き気力があれば、そのひとの成功は疑いない、と友人は話を結んだ。

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