仕入れ過ぎのとき
その買い手は商品にぞっこん惚れ込み、普通の仕入れ量を遙かに超える注文をしてしまった。セールスマンの腕が良くてあまりに上手に販売し過ぎたというかたちであった。
そんな時、あとは仕入れ係が何とかさばくだろうと知らん顔をしておるべきであろうか。または、一肌脱いで販売に協力してやるべきであろうか。
そのセールスマンは最後の道を選んだ。そして今ではそのことを感謝している。というのは、買い手をあくまでも援助して、商品の売りさばき方を斡旋してやることが有利であることがわかった。
一週間というもの、このセールスマンは仕入れすぎをした買い手に協力して、一心に商品を売りさばいた。彼は広告を書くことを手伝った。展示会を催した。販売の妙手を考え出した。
一週間のうちに、忽ち、このセールスマンと買い手はものの見事に全部売りさばいてしまった。買い手は感謝した。セールスマンは助かった。
その上、彼は啓発された。その後も客に超過仕入れをさせたことがあったが、客の方では少しも買いすぎたとは思わなかった。というのは、このセールスマンは商品を直ぐに売り尽くしてしまうからだった。