得んとするよりは
私の友人の実業家の話ですが、彼はどんな事業に手をつけても失敗するようなことのない人でした。彼の人気も、彼の成功も、ともに同じ理由に基づいている。
彼は、友人や客から、できるだけ多く得ようとするよりは、できるだけ多く与えてやろうという主義を実行した人でした。
彼がセールスマンたちに向かって、販売に関する彼の考えを話しているところを度々聞いたことがあります。彼はいつも、こう言っていました。
『君達が相手にしている方の生活を、どのくらい豊富にして差し上げることができるかということである。』
『日頃から、その方にどれほど多く尽くしてやることができるかということであって、先方から、どれだけ多く取り込み得るかということではない。そうすれば、いざ、販売する段になると君達の助言とか、激励の言葉に一層の効き目がでて、客は心から君達の言うことを傾聴するようになる。それが販売高を多くさせてくれるのである。』
『よりよいサービスをしようとする心がけで出かけなさい。賞むべきことがあれば、遠慮せずに賞めるなさい。いついかなる時も、忘れてはいけないことは、客に最高のものを与えるセールスマンは、とりもなおさず、最良の客を獲得することになり、最高の収入を得ることになるのです。』