☆ おばあちゃんに漬物を美味しく食べてもらいたかったです。

 

私のおばあちゃんは、私が大学を卒業して勤務医になった年に 90歳で突然亡くなりました。
病気などほとんどしたことがなく、元気だったのにお風呂場での事故死でした。 ただ、いつも膝が痛いと言っていたので、小学生の頃から学校の帰りにいつもおばあちゃんの家により、買い物をしてあげていました。 買い物をして、レシートとお釣りを渡すと、決まってお釣りは私の手に戻してくれました。
買い物の後、いつもお茶を入れてくれて、ニコニコしたがら、お菓子をたくさん出してくれるのですが、そのお菓子のどれもが、かすかにショウノウの匂いがしていました。 きっと、防虫剤を入れて、虫が付かないようにしていたのでしょう。
漬物をいつまでも、入れ歯をコクコク音をたてながら、しゃぶっていました。

私が大学生の時、同居している伯父が、おばあちゃんを歯科医院に連れて行き、新しい総入れ歯を作ってもらったことがありました。
しかし、すぐに慣れるはずもなく、痛がるおばあちゃんの口の中をみてびっくり! 顎の骨などまったくなく、むしろ凹んだ溝にひも状の入れ歯がズレて入っていたのです。
「おばあちゃん 卒業したら、噛める入れ歯作ってあげるから ちょっと待っていてね。」 おばあちゃんは、ニコニコしながら、黙って何度もうなずいていました。

そのころは スナック菓子の 「たこ焼き亭」がお気に入りで、必ず数袋買ってありました。 きっと、入れ歯が調子良くないので、たこ焼き亭を口の中でふやかして 味を楽しんでいたのでしょう。
それなのに、約束を果たす前に 急に亡くなってしまいました。 おばあちゃんの影響で、私も「たこ焼き亭」が大好きですが、もう売っていないので寂しいです。

根っからの信州人! 漬物は大好きで、漬けるのも上手でしたが、本人はしゃぶっていただけで・・・・
漬物を食べさせてあげたかったです。 野沢菜が食べられる入れ歯を入れてあげたかったです。

その思いで、総義歯に取り組んでいます。 色白のおばあちゃんに会うと、思い出します。 きっと、若い時には苦労なさっただろうな〜〜と思います。
大勢のおじいちゃん おばあちゃんに 漬物が食べられる入れ歯を 入れてあげたいな〜〜と思いながら、取り組んでいます。