二〇〇〇年 | 八月? | |・スカリー、パレンティと決別。 | この時期、第二世代の“無敵兵士”が、次々と誕生し始 |めていたが、それらはいずれも、失敗作ばかりであった。 | そして、自身と同様、交配種研究の実験台として、利用 |された過去を持つ女性に、不可解な妊娠・出産が、相次い |でいる事実は、ついに、スカリーの知るところとなった。 | その結果、六ヶ月に渡って、主治医と仰いできたパレン |ティに対して、スカリーは、不信感を抱くようになり、妊 |娠十四週を期に、主治医を変更するに至った。 | 十月? | |・モルダーらの人体実験が終了。 | モルダーと共に誘拐された、テレサ・ホージーという女 |性が、モンタナ州ヘレナにて、瀕死の状態で発見された。 | ホージーはすぐさま、地元の聖ジーン病院に収容された |ものの、それこそ、“先住民”の思う壺であった。 | モルダーを初めとする、交配種と化した過去を持つ人々 |に、“先住民”が行ったのは、地球外起源のウイルスを用 |いて、“無敵兵士”への突然変異を促す、という人体実験 |であった。 | 問題の地球外ウイルスは、感染者に行われる延命措置を |糧にして、増殖を開始する。だからこそ、“先住民”はあ |えて、瀕死の状態で、ホージーを帰還させたのだった。 | |・スミス、ホージーを誘拐。 | ホージーの帰還によって、共に誘拐されたモルダーもま |た、帰還するのではないか……そんな期待を抱いて、スカ |リーらが、モンタナ州ヘレナを訪れた当夜、ホージーが、 |何者かによって、誘拐された。 | ホージーを誘拐したのは、一九九五年以来、消息不明と |なっていたスミスであった。スミスの目的は、その治癒能 |力によって、地球外ウイルスに蝕まれるホージーを、治療 |する事にあった。 | |・レイエス、合流。 | 一九九三年のルーク誘拐・殺害事件において、捜査を共 |にしたドゲットから、協力要請を受けて、レイエスは、モ |ルダー誘拐事件の捜査に合流する。 | |・モルダー、帰還。 | 仮死状態のモルダーもまた、ホージーと同様、モンタナ |州ヘレナにて、発見された。 | しかしながら、モルダーは、ホージーのように、スミス |の治療を受け、全快する事はできなかった。“無敵兵士” |計画を、妨害していた事を察知された結果、スミスは、モ |ルダーを治療する前に、“先住民”によって、誘拐されて |しまったのである。 | モルダーはあくまで、仮死状態に過ぎなかったのだが、 |死亡との誤診を受けた結果、ティナが眠る、ノース・カロ |ライナ州ローリーの墓地に、埋葬される事となった。 | 二〇〇一年 | 一月? | |・ビリー・マイルズ、帰還。 | やはり、モルダーと共に誘拐された、マイルズという警 |察官が、ノース・カロライナ州のフィア岬沖にて、発見さ |れた。 | 当初は、溺死と判断された、マイルズであったものの、 |その実、仮死状態に過ぎない事が、間もなく判明した。そ |の事実を受けて、スキナーとドゲットはようやく、誤診に |気付き、三ヶ月前に埋葬されたモルダーを、メリーランド |州アナポリスの、米国海軍病院に搬送した。 | しかしながら、モルダーは依然、仮死状態であり、有効 |な治療法は、不明のままであった。 | |・クライチェック、スキナーを脅迫。 | クライチェックは、ありもしない治療薬をでっち上げ、 |モルダーの治療と引き換えに、スカリーの出産を阻止する |よう、スキナーを脅迫する。 | 失敗作が相次ぐ、第二世代の“無敵兵士”において、数 |少ない例外が、スカリーが妊娠中の“無敵兵士”だった。 | マグネタイトを克服した“無敵兵士”が、誕生する事に |なれば、“先住民”による、地球への再入植は、もはや、 |避けがたい事態となる……クライチェックはおそらく、そ |う考えて、先手を打とうとしたのであろう。 | |・モルダー、回復。 | スキナーが、断腸の思いで、生命維持装置を取り外した |事によって、体内の地球外ウイルスが死滅し、モルダーは |一転、快方に向かう。スキナーが、クライチェックを信用 |できず、モルダーの治療を諦めた事が、思わぬ幸運につな |がったのだった。 | モルダーはその後、驚異的な回復力を示し、悪化の一途 |をたどっていた脳腫瘍も、跡形もなく、消滅した。 | |・モルダー、事務職員に転属。 | モルダーは、復職願を提出して、X−ファイル課への復 |帰を希望するものの、カーシュに拒否される。 | その遠因は、ドゲットが、X−ファイル課への残留を、 |決意した事にあった。ドゲットは、今なお、モルダー誘拐 |事件に残されている、数々の疑問を放置したまま、X−フ |ァイル課を離れる事を、潔しとしなかったのだ。 | カーシュは、ドゲットがこれから、X−ファイル課の主 |任捜査官を務める事を口実に、FBIの問題児であるモル |ダーを、事務職員として、飼い殺しにしようと、画策した |のだった。 | 日付不明 | |・ハーヴィー、交通事故死。 | ハーヴィーは、一九九三年に発生した、ルーク誘拐・殺 |害事件の有力被疑者であったが、ルイジアナ州ニュー・オ |ーリンズにて、不慮の交通事故死を遂げた。 | 日付不明 | |・モルダー、辞職。 | 事務職員であるにもかかわらず、X−ファイル課の捜査 |に介入したばかりか、その捜査によって、国益を損なった |責任を負い、モルダーは、辞職願を提出した。 | モルダーは何より、X−ファイル課が閉鎖され、真実を |探求する人間が、FBIから一掃される事を恐れた。だか |らこそ、全責任を引き受けて、X−ファイル課を、ドゲッ |トに明け渡したのだった。 | 三月? | |・第二段階の“無敵兵士”計画、頓挫。 | スカリーが、臨月を迎える中、目ぼしい成果を挙げられ |なかった、第二段階の“無敵兵士”計画は、破棄される事 |となった。 | その結果、パレンティを初めとする関係者は、“無敵兵 |士”と化した、マイルズによって、次々と殺害されていく |事となった。 | |・スカリー、逃亡。 | パレンティらを殺害したマイルズが、次の目的としてい |るのは、スカリーの妊娠する“無敵兵士”が、事実、貴重 |な成功例なのか否かを、確認する事であった。もちろん、 |失敗が判明すれば、妊娠する“無敵兵士”もろとも、スカ |リーは、殺害されるはずであった。 | クライチェックの情報提供によって、その事実を知った |モルダーらは、スカリーの安全を確保すべく、レイエスに |護衛を任せて、ワシントンD.C.を脱出させる。 | その行先は、ドゲットの出身地である、ジョージア州ア |トランタの、デモクラット・ホット・スプリングスという |廃村であった。 | |・ローラー、ドゲットに接触。 | 第一世代の“無敵兵士”として、国防省・情報部に勤務 |するローラーは、スカリーの居所を突き止めるべく、海兵 |隊時代の戦友・ドゲットに接触する。 | しかしながら、ドゲットの不興を買った結果、ローラー |は、目的を果たせずに終わる。 | |・クライチェック、死亡。 | クライチェックは、モルダーらを出し抜いて、ローラー |に接触し、スカリーの居所を突き止めようとする。クライ |チェックは、この期に及んでもなお、スカリーが妊娠する |“無敵兵士”の殺害を、諦めていなかったのである。 | そして、その事実が露見したがために、クライチェック |はついに、スキナーによって、射殺されるに至った。 | 独自の信念に基づいて、地球再入植計画を阻止しようと |した、クライチェックであったが、結局、誰の理解も得ら |れぬまま、波乱の生涯を終える事となった。 | |・スカリー、出産。 | レイエスの協力で、スカリーは無事、男児を出産した。 | 誕生した男児は、クライチェックが危惧した通り、超能 |力をも身に着けた、新世代の“無敵兵士”であった。 | 男児はその後、モルダーの亡父から、名前を取って、ウ |ィリアムと名付けられた。 | 日付不明(土曜日) | |・レイエス、X−ファイル課に転属。 | ドゲットは、ローラーと密かに、接触していた事実を突 |き止め、カーシュを内部告発した。 | 実のところ、カーシュはただ、脅迫を受けて、協力を強 |要されていたに過ぎなかったのだが、そうとは知らぬドゲ |ットは、独断に基づいて、レイエスを、X−ファイル課に |迎え、捜査を開始する。 | 日付不明(土曜日〜月曜日) | |・モルダー、逃亡。 | スカリーを付け狙っていた“無敵兵士”は、一転して、 |モルダーの殺害を、画策するようになった。 | ウィリアムは、“先住民”の急先鋒となって、地球への |再入植を進めるに足る存在であったが、それと同時に、現 |生人類を率いて、“先住民”に抵抗する、指導者となりう |る可能性もまた、秘めていた。 | しかしながら、モルダーという父親の存在がある限り、 |ウィリアムが、その志を受け継ぐであろう事は、自明の理 |であった。だからこそ、“無敵兵士”は、先手を打って、 |モルダーを殺害しようと、画策したのだった。 | カーシュの警告で、その事実を知ったモルダーは、やむ |なく、スカリーとウィリアムを残して、逃亡生活に入る。 | そればかりか、その逃亡生活において、“無敵兵士”の |弱点が、マグネタイトにある事を、突き止めてしまったが |ために、モルダーは、一層の危険にさらされる。 | 日付不明(月曜日) | |・レイエス、フォーマーと再会。 | X−ファイル課に転属となったレイエスは、副長官とし |て、FBI本部に勤務していたフォーマーと、一九九九年 |以来の再会を果たした。 U U 続く ※参照 |