一九七三年

十月十三日

|・特殊対策チーム、“先住民”との協調関係を締結。
| 特殊対策チームと“先住民”の接触は、エル・リコ空軍 |基地の格納庫にて、行われた。
| “先住民”の地球再入植計画は、交配種研究の完成が、 |核となっていた。
| だからこそ、特殊対策チームは、“先住民”との協調関 |係を締結した上で、交配種研究をできるだけ、長引かせる |事によって、地球への再入植開始を、先延ばしにしようと |考えたのである。
| 万が一、交配種が、完成してしまったとしても、交配種 |には、“ピュリティー”に対する免疫が備わっており、現 |生人類が存在していた証だけは、のちの世まで、残す事が |できるのである。
| しかしながら、“先住民”との協調関係締結には、交換 |条件が存在した。それは、交配種研究の実験台として、特 |殊対策チームの家族を提供せよ、というものであった。

十一月二十七日

|・特殊対策チーム、“先住民”に家族を引き渡す。
| やはり、エル・リコ空軍基地の格納庫にて、カサンドラ |を初めとする、特殊対策チームの家族は、“先住民”に引 |き渡された。
| 家族という代償によって、特殊対策チームは、交配種研 |究に必須となる、“先住民”の完全な遺伝子標本――胎児 |の死体を、下げ渡された。
| 胎児の死体は、メリーランド州のフォートマルリン隔離 |施設・氷雪学研究室にて、厳重に保管される事となった。

|・サマンサ、誘拐。
| 特殊対策チームにおいて、ビルだけは、“先住民”との |協調関係を締結する事、そして、交配種研究の実験台とし |て、家族を提供する事に、最後まで、強い拒否反応を示し |た。しかしながら、多数決による決定は、覆らなかった。
| ビルは結局、サマンサを、交配種研究の実験台として、 |“先住民”に引き渡す事にした。サマンサには、交配種研 |究を耐え抜く事で、モルダーには、未来と戦う事で、“先 |住民”による、地球への再入植を、生き抜いてほしい、と |の希望を、託したのである。
| ビルの決断が、遅れてしまったために、サマンサに限っ |ては、モルダー家から、直接、誘拐される事となった。
| サマンサは、一緒に留守番をしていた、モルダーの眼前 |で、“先住民”によって、誘拐された。午後八時五十三分 |の事であった。
| サマンサが、UFOに収容されるまでを、目の当たりに |したモルダーは、精神的衝撃のためか、“先住民”による |隠蔽工作のためか、一連の記憶を全て、失ってしまった。 |それもあって、サマンサ誘拐事件は、財務省による、通り |一遍の捜査が行われたのちに、犯人不詳の未解決事件とし |て、X−ファイルに収められる事となった。

日付不明

|・特殊対策チーム、“影の政府”となる。
| “先住民”との協調関係を締結した特殊対策チームは、 |地球再入植計画に協力すべく、それぞれの身分・経歴を抹 |消し、それまで、籍を置いていた国務省をも、離れる事に |なった。
| これがおそらく、既成権力を超越して、世界を陰から操 |る一大組織――“影の政府”誕生の瞬間であった、と、推 |測される。

|・“ハンター”、地球に派遣される。
| “ハンター”が、“先住民”によって、地球に派遣され |たのは、“影の政府”を監督する任務を、帯びての事であ |った。
| “先住民”はおそらく、協調関係締結の裏側に、“影の |政府”が、何らかの思惑を隠し持っている事に、察しをつ |けたものと、推測される。

|・ビル、“影の政府”を脱退。
| “先住民”との協調関係が、締結されてもなお、現生人 |類が、独力で生存する可能性を、ビルは模索した。
| ビルは、“影の政府”を脱退する前に、“タバコを吹か |す男”を初めとする同僚に、新たな提案をしていた。地球 |への再入植開始を、先延ばしにする事によって、稼いだ時 |間を、“ピュリティー”のワクチン開発に充てる事を、で |ある。
| その提案が容れられたビルは、親友であった“タバコを |吹かす男”とも、絶縁をして、“影の政府”を去った。
| しかしながら、“ピュリティー”のワクチン開発が、実 |際の軌道に乗り始めたのは、一九八一年頃の事であったも |のと、推測される。

|・ビル、“ハンター”の武器を隠す。
| ビルは、“ハンター”の武器であるニードルを、ロード |・アイランド州クォノカタグにある、別荘に隠した。
| このニードルは、“ハンター”やクローンを殺害するた |めの、唯一の武器で、
一九九五年になって、“タバコを吹 |かす男”が慌てて、回収に乗り出してきたところから察す |るに、ビルが無断で、“影の政府”から、盗み出してきた |ものと、推測される。
| ビルが、そこまでして、ニードルを入手したのは、“先 |住民”による、地球への再入植が開始された際の、自衛手 |段を確保するためであろう。

|・ビル、ティナと離婚。
| サマンサの誘拐事件が、しこりとなった結果、ビルは、 |マサチューセッツ州マーサズ・ビンヤードで、ティナは、 |コネティカット州グリニッチで、新生活を開始した。
| ティナは、ビルの隠した、“ハンター”のニードルにつ |いて、承知していた。その事実を考慮すると、両者の離婚 |は、“ハンター”のニードルが、別荘に隠されてからの出 |来事だった、と、推測される。
| また、ビルとは疎遠だ、という発言から、モルダーはお |そらく、ティナに引き取られたものと、推測される。

一九七七年

|・ドゲット、海兵隊に入隊。
| 一九八三年の除隊まで、軍曹として、米国に貢献した。
| ドゲットは、第二十四海兵隊上陸部隊・ブラヴォー中隊 |に所属し、ノエル・ローラーや、シャノン・マクマホンと |いった、同年輩の戦友と、任務を共にした。

一九七九年

|・サマンサ、“タバコを吹かす男”の元を脱走。
| サマンサは、“影の政府”を脱退したビルが、秘密を口 |外せぬよう、人質として、“タバコを吹かす男”の元で、 |養育される事となった。
| カリフォルニア州エイプリル基地にて、スペンダーと共 |に、養育されていたサマンサであったが、繰り返される人 |体実験を逃れるべく、脱走を図った。
| その結果、サマンサは、地元警官によって、ドミニク・ |サヴィオ記念病院に保護された。

|・サマンサ、死亡。
| 交配種研究に翻弄された結果、心身共に疲弊したサマン |サは、そう遠からず、死を迎える運命にあった。
| しかしながら、サマンサの魂は、“ウォーク・イン”と |呼ばれる善霊によって、肉体ごと、星の光に還元され、安 |らかな死を迎える事となった。

一九七九年?

|・“タバコを吹かす男”、カサンドラとスペンダーの元を去る。
| “タバコを吹かす男”が蒸発したのは、スペンダーが、 |十一歳の時であった。
| あるいは、サマンサの死が、何らかの影響を及ぼした結 |果、“タバコを吹かす男”をして、妻子との離別を、決断 |させたのかもしれない。
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続く

※参照
 序章(1x00)
 導管(1x03)
 三角フラスコ<終章>(1x23)
 リトル・グリーン・マン(2x01)
 アナサジ(2x25)
 タリサ・クミ(3x24)
 紫煙(4x07)
 赤と黒(5x14)
 旅人(5x15)
 ザ・ムービー(劇場版第一作)
 ファイト・ザ・フューチャー(6x11, 6x12)
 存在と時間 Part2(7x11)
 サーチ・フォー・モルダー Part1(8x01)
 リターン・トゥ・ウォーター(9x01, 9x02)
 ジョン・ドー(9x07)
 真実(9x19, 9x20)