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サンフランシスコ市内よりゴールデンゲートブリッジを渡って北へ約25キロほどの静かなサン・ラファエル市にある cymbicINTERACTIVE社(Profile Design社より改名予定)訪問。

Profile Design社訪問



まだ設立から日が浅いデザイン会社ではあるが、競合ひしめくサンフランシスコにあって、着実に成長を遂げている若きクリエイティブ集団。昨年ウェブデザインやインタラクティブデザインを専門に開発する新会社シンビックを立ち上げたばかり。グラフィックデザインからIT関連デザインへの変貌を遂げようとしている。(フミ・ササダ)




























オフィスの周辺は紅葉した木々の美しい彩りに囲まれ、きれいに手入れされた住宅や高級外車が並ぶすばらしい環境。レンガ造りの古い建物を改装し、ロビー部分は地下室から2階の天井まで吹き抜けの大空間。たくさんの天窓から差し込む光にあふれとても心地よくしつらえられたオフィス。 一行30名はロビーの横に設けられた天井高のあるゆったりとしたプレゼンルームに通されて、デジタルデータプロジェクターを使用してのプレゼンテーションを受けた。

食品メーカーやハイテク企業などをクライアントに持つ。社員数33名。 インターネットの爆発的な普及にともないウェブ関連の仕事が急速に伸びはじめたことを機会に事業戦略を練り直す好機と発想を転換し、ネット関連の仕事にフォーカスすることを決意した。 現在ビジネスはネット関連の比重が伸びて目論見どおりとなっている。

●1 History 沿革: 1989年7名で典型的なデザイン会社としてスタート。 伝統的なデザイン手法を採択した。 作品例には:Apple Computer社カフェテリア・メニューサインのデザイン。メッセージングのためキャラクターを作りTech Talkという当時のApple Computer社の社内概念を生かしたもの。 また、Familiar社にはマークデザインに動きと感情を入れたものを提供した。

●2 Adopting Phase:適応するブランドのフェーズ 1993-97 社員数12名。 BRAND=SUM of Experience:つまり、ブランドはすべての体験の集積値であると考えている。 ブランドデザインは顧客に対してまず最初のパーティスをさせることがメインの役割であり、その後は製品品質の問題と考えている。 作品例には:ヘルスフードのDr. McDouglan's、 輸入コシヒカリ米KUMAI Harvestのパッケージデザイン、 KRAFTのベルビーナ、POKKA Bevarageコーヒーなどがある。 また、SAFE WAYへの300点デザインでは、ランドー、プリモアンジェリーと合同でブランド縮小に向けてのデザインを行った。当時プライベートブランドはロークオリティで安価であるという概念が一般的であったがそれは間違いだと指摘した。内容が同じなのに安く見せる必要はないとクラフティなイメージで美味しさ感を表現した。

●3 Evolving Phase:進化するブランドのフェーズ 1997-99 テクノロジーブランド業務が増え、Print、パッケージ、Webデザインへと領域が広がった。 インターネット媒体を使い顧客経験を変えることに挑戦した。 そのためにはどういう人を雇えば優れたデザイン提供ができるかについて検討し、ライター、プログラマー、Webデザイナーのチームワークが有効であると考えた。



作品例として、まずDSL系のCopper Mountain Networksが紹介された。 このケースでは全米5社中5位の会社からトップになりたいと相談を受けた。 マークデザインに速い接続をイメージさせるデザイン案を展開した。デザイン案はダイナミックボルト、ダイナミックサイクロン、ブレークスルー案など愛称をつけて表現した。最終的にはテクノっぽいものがあふれる中で差別化を踏まえたテックウルフ案に決定した。この案を軸にコーポレート文化を作っている。 その後バリエーションで追加されるブランド対応を図っておりCopper Edge、Viewなどがある。 そしてWebサイトのデザインを行った。当初予算がないと言われたが、得るところが多いと思い、ただでやるかわりに好きなようにやらせてほしいという約束を取り付けて自由にデザインをした。 それ以来、プログラマー、コピーライター、媒体のスペシャリストを手に入れてブランド展開を行っている。

Send Mail社の作品例では、 自在に飛び回るイメージを託したマジックカーペット案、水や空気と同じように生きるのに大切なものであるというイメージを表現したインターアクション案など、クリーンで分かり易くするとともに認識力のあるデザイン展開を行った。Webデザインについては、どのようなナビゲーションをすれば知りたいという目的を達成できるのかが大切だ。ブランド性を強調するために、どのページにも左右のコーナーに常にマークを表示するとか、またエンジニアの力を借りてクリックするたびにプシュっというサウンドで反応を返すことを盛り込んだ。

dmsコンピュータシステム社(ラウターチェック機製造会社)の場合は、意味が分かりにくいのでネーミングからデザインした。そしてValidigm(保障、確かさが生きてるところ)に決定した。 Acuracy案、Cycle案、リフレクション案などをデザイン提案したところ、まさに機能をすなおに表現するチェックマーク案に決まった。ブランド統一にはネーミングとマークの両方を同じデザイン会社がやるのがよいと考えている。


●4 Experiencing 今は体験。 間もなくcymbicINTERACTIVEとなる。 2000年 社員数33名。 これまでの一般のデザイン会社とは異なる次元に入ると考えている。そのため経営陣にもう一人(クリス氏)加わり3名となった。

Russell Baker氏(Chief Executive Officer)はマネジメント担当し、 Kenichi Nishiwaki氏(Principal, Creative Director)はクリエイティブデザイナー(ラスと共にプロファイル社をつくった)、そして Christopher Kenton氏(President)はかつて出版、大Webサイト制作、主に技術エリアのエキスパートとして腕をふるう。

特徴はブランド戦略(プリント、パッケージ、Webデザイン インタラクティブ、デモ、内容、メッセージとプログラム)と、コンピュータ・アシスティッドデザイン&プログラミングの両立をはかること。 Webデザインは、動きとサウンドを入れ、具象的なイラストを使用することで、うまくビジターをナビゲーションさせるべき(きれいだけどどこに行って良いか分からないものが多い)だと考える。
パッケージは手にとって買った瞬間までがデザインの責任範囲だが、インターネットとはここが異なる。どういう人が来て、どんな行動をして、どのくらいいたかを容易に検証できるのでそれをもとに次なる改良を施すことができる。

今日、デザイン会社、広告会社、エンジニアリング会社、マーケティング会社それぞれがWebデザインを提供できるという。cymbicINTERACTIVE社ではブランド戦略とコンピュータ・アシスティッドデザイン&プログラミングをうまくバランスさせながら適切なWebデザインを作るのが売りだ。

作品例には、CYNTRIC社(ブローカー、キャリアー)に対して矢を放つ男のマークをデザインした。この意味は目的を果たす、ターゲットに命中させるというニュアンス。常にテクノっぽさがベストではないと考える。

作品例:MVX.COMは、企業宛に様々な通信会社から多種多様の電話請求が来ることへの対応に対する非効率と頭痛を解消するソフトを開発した。そこでデザインを依頼された時、それらを取り去るメリットを表現した。 テクノロジーを表現することをやめ、楽になった(メリット=自由な時間が増えた)ことをアイデンティファイした。 デザイン案として、地球をかすめとる彗星案、アナトニウムシフト案、ほっとする一時を持てるというイメージを蝶に託したPeace of Mind案を提案した。結果、蝶に決まり、これまでたくさんの展開をしている。例えばイベント時に本物の蝶を一斉に放すなどの話題も提供した。

作品例:iospan wireless.com社。ワイアレス接続とはコードをひきまわさない自由さ、フリーダム。楽に飛ぶこと。どこにいてもかまわない。マークには馬や人が飛ぶ姿を表現し提案した。

ムービーイントロ=コーポレートレーダーの仕事が増加しているという。 作品例としてREGALE社のWeb用ムービーイントロを見せてもらった。それはWeb用というよりTVCMに近い印象を受けた。

●これからのゴールと今の位置付け  cymbicINTERACTIVE社は技術主導の市場における新らしいビジネスや製品のブランドを強く訴求することを支援するブランドデザイン会社。

cymbicINTERACTIVE社の特徴として、アイデンティティを汲み上げ加工することに対して果敢に研究できる会社であることをめざしている。そして成功したものを血と肉にする。テクノロジーと人間とのアンバランスを正し、ブリッジさせる。世界に通用するブランドアイデンティティを作り、次代のデザイン会社が模範にしてくれるようになればうれしい。いよいよ来月 Profile Design社は消え、cymbic INTERACTIVEとなる。TVとインターネットの両方の関係を研究したいと考えている。


質問:紙媒体は今後も残るでしょうか?
応答:無くならないと思う。Eコマースでも逆に増えている。(カタログを見てからEコマースにアクセスするのが増えている)。我々にはWebは新鮮だが次の世代はもはや普通のことになる。クッキーにはこの人がかつて来たかどうか、そしてどのページでどの程度の時間を過ごしたかというログが記録されているので、次のアクセス時にはすでに見たものをはずすして新たな情報へと案内することも可能だ。

質問:ただでやるから自由にやらせてほしいという発言でしたが、実際のデザイン料がどのようになったのか差し支えなければ教えて下さい?
応答:デザイン料を100万もらったが実際には700万かかった。600万は投資と勉強だと考えている。取り戻すには4年くらいかかるかも知れない。Webデザインは経年的な制作が必要になるので一回で終わることはない。たしかに回収の確実性は大変だと思う。

質問:成功報酬型の広告と似たところがありますか?
応答:分からないことはやってはいけない。 新しいことをやってるから、正直に何ができて何ができないかを言うべき。そして始まる。クライアントと共にやろうとすることが大切だと思う。


来月に社名変更をひかえたcymbic INTERACTIVE社の3名の経営者による直々のプレゼンテーションはとても分かりやすく、また彼らの目指そうとする新しいデザインビジネス像はとても未来的で示唆にとんだものだった。
なによりも興奮を覚えたことは、ITの進展に伴って飛躍的に進化するWebの未来を予見しながら、それを巧みに活用する新たなブランドデザインの手法研究に果敢に取り組もうとしている姿勢であった。しかもそのためにこれまでのデザイン体制を見直し、経営レベルにプログラマーを加えた新たなチームワークを組むことで、いっそう高度なブランドデザインの提供をめざしている。デザインビジネスにもアメリカのパイオニア精神が息づいていることを強く感じた。
デザインビジネスの未来型ともいえるcymbicINTERACTIVE社の新なステージが大いなる成功をおさめることを期待したい。



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