サンフランシスコにマーチ・ファースト社は5つのオフィスを持つ。今回はデザイナーのいるタウンセンドストリートのオフィスを訪問した。やはり湾岸に近い通りに面したこれまでの訪問先の中では最大の建物にマーチ・ファースト社はあった。ロビー脇のプレゼンルームは30名の一行が小人数に思える程の広い部屋で、デジタルデータ・プロジェクター使用によりプレゼンテーションを受けた。プレゼンテーターはフミ・ササダ氏と元ランドーでいっしょに働いたというTom Suiter氏。
マーチ・ファースト社が追求するのは『デジタル・エコノミーのための革命』という画像から解説が始められた。それにはストラテジー、テクノロジー、マーケティングの3要素のバランスこそが必須と考える。
続いてクライアントのCIデザイン事例の画像が続く。いずれも世界的な企業である。アマゾンドットコム、Exite、Wired、Saks Fifth Avenue、American Air Line、VISA、SONY、AUDI、CNN、Apple…などなど。
例:アップル社に対してはWebデザインのみならず業務の75%はWeb以外のデザインを手掛けている。それにはアップルストアのデザインやiMacのパッケージ、そしてマックワールド展ではサンフランシスコ、東京、ニューヨークなどのブースデザイン、そして東京への35店鋪のストア展開までもが含まれる。
Tom Suiter氏とアップル社の出会いはアップルのCIを求められクリエイティブディレクターとして雇われた1981年から。1985年にはコーポレートアイデンティティの6色ロゴを制作した。そしてアップルからスティーブが離れたが1997年7月には突然スティーブからE-mailが届けられた。
そしてスティーブが1998年にアップル社に戻ってすぐ6色ロゴを『コンセプトは良かったけどもう古い』と禁止にしたという。
そしてケーススタディを開始。トラックのグラフィック、看板…などなどの展開を開始した。
マーチ・ファーストはパッケージ、CI、環境の合体した会社だという。
例:PIXARアイデンティティと年間報告書のデザイン、モンスターなど…。
例:ゴルフのペブルビーチ、VISA、TOTAL SITE、Actnaデンタル、ベタースリープチップ、3COM Parkはフットボールゲームなど…。
世界56都市にいる社員は約1万人。1400人のグラフィックデザイナー、Webプログラマー、アートディレクターなど。都市はサンフランシスコ、シカゴ、ニューヨーク、ロンドン、東京(電通と提携した)など…。
質問:1400人のグラフィックデザイナー内訳は?
応答:50%のグラフィックデザイナーとアートディレクター、20%のアカウントエグゼクティブ、20%のライター、残りが顧客担当など…。
質問:CI、環境、Web間の交流はあるのですか?
応答:Aki女史の場合は最初CIにいて、次に環境、そして今Webというふうに動いてきた。デザインの領域で固定するというのではなく、プロジェクトで動いているというのが実情だそうだ。(一同それはすばらしいと感嘆)
質問:売上について教えて下さい?
応答:14億ドル。
戦略、技術、デザインの売上比率は、デザインが30%〜35%くらい。そのさらなる内訳は、Web60〜65%、残りがCIとアド。
マーチ・ファースト社のアビリティは世界の大企業に対して『創造的+短期間で』複雑な手伝いをすること。
質問:世界56都市間のコミュニケーションはどのように取るのですか?
応答:従業員個人、Webサイト、ブランドビルディングから、シニアクリエイティブディレクターは年を4回に分けて月毎にレビューするなどの方法を採用している。
質問:アップル社との受注や決定はどのようにするのですか?
応答:アップル社は異例でスティーブ・ジョブス氏から直接受注する。欲求が強くて発注者本人がアートディレクター。締切りが短くても認めないことがある。iMacの5色の決定期限の時、アップル社の5人だけが見ることができた。そしてそれを13人に報告した。8週間の間にサポートするものを作った。14ヶ国、9ヶ国語を同時進行した。
質問:スティーブ・ジョブス氏はどのような人ですか?
応答:ルネッサンスな人。クリエイティブ。建築もすべて理解している。自分の心から感じるものを大切にする。
質問:iMacの透明色はだれが決めたのですか?
応答:ジョナサン・アイブ氏です。
質問:Webデザインのコンテンツはだれが作るのですか?
応答:コンテンツの作成は50:50で、全てをまかせてくれるものと、クライアントと協力するものがある。後者の方が成功につながると思う。
質問:複雑な(Web用)ソフトは誰が使うのですか?
応答:プログラマー。簡単に扱えるものはグラフィックデザイナーが。
プレゼンテーションの後、スタジオ内を案内してもらった。レンガ造りの建物と好対照をなすシンプルな白い壁面と最新のエルゴノミックチェアとのコンビネーションはとても心地よい雰囲気を漂わせ、柔らかな反射光でデスク上に明かりをとる照明の工夫はモニターを見る作業にはとても快適な印象を受けた。
大規模経営で一流企業からのビジネスチャンスをものにする。そしてこれまでの領域にとらわれない視点でブランドデザインの確立に向けた一連のデザインサービスを提供する。そこには逞しいデザインビジネスの未来型が息づいていることを確信した。
一行からの矢継ぎ早の質問に対し、とても誠実にそして熱心に応えてくれたTom Suiter氏とAki女史に感謝するとともにますますのご活躍を期待したい。



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