武　蔵　成　就　院　三　重　塔

★武蔵成就院三重塔

2009/07/04追加：2009/06/25撮影：

武蔵成就院三重塔３１ 　　同　　　　　　　　３２ 　　同　　　　　　　　３３：左図拡大図 　　同　　　　　　　　３４ 　　同　　　　　　　　３５ 　　同　　　　　　　　３６ 　　同　　　　　　　　３７ 　　同　　　　　　　　３８ 　　同　　　　　　　　３９ 　　同　　　　　　　　４０ 　　同　　　　　　　　４１ 　　同　　　　　　　　４２ 　　同　　　　　　　　４３ 　　同　　　　　　　　４４ 　　同　　　　　　　　４５ 　　同　　　　　本堂 　　同　　　　　山門

◆付記（参考） 付近に「さきたま古墳群」がある。 　稲荷山古墳：金錯銘鉄劔（国宝）が出土、１２０ｍ 　丸墓山古墳：径１０５ｍ。日本最大の円墳と云う 　二子山古墳：１３８ｍ。武蔵最大の古墳 などがある。 　　※金錯銘鉄劔（国宝）： 　　「埼玉県立さきたま史跡の博物館」リーフレット 　　　から転載

2011/08/11追加：「埼玉の瓦塔」資料館ガイドブック�ｂP１、埼玉県立歴史資料館、平成６年　より
　武蔵成就院三重塔０９

★武蔵成就院三重塔概要

参考文献：「埼玉県指定有形文化財成就院三重塔修理工事報告書」荒木社寺設計事務所／編、１９８３．３ （以下「成就院修理報告書」）

１）建立年代

「成就院修理報告書」

○享保１４年（1729）建立 ・「成就院修理報告書」より： 左図の「棟札」が取り外されてある。 この「文面」だけでは、 塔の棟札との断定は出来なかった（「塔」を意味する記載がない）が、 今般の修理で二重琵琶板の裏面に次の墨書が発見された。（○は判読不明） 「利兵衛　　　彦左○○門　　八兵衛　　安左衛門　　○○○　　清八　　小兵衛　　平助」 よって 左図「棟札」の大工棟梁名（１０名）と７名の名称は一致し、この棟札は塔の棟札と確認できるとされる。 　（この棟札は明治の修理で外されたのであろう。） ○真柱墨書 ・「成就院修理報告書」より： 　※真柱は相輪部分は円形、小屋組部分は方形で、方形部分に墨書 「表面 　文化四丁卯年　当寺現住慈観代願主惣邑中建立　世話人　・・・以下略・・・ 　側面 　当寺無住兼住埼玉村盛徳寺為慕風再建　明治三十三年　大工棟梁　　・・・以下略・・・ 　側面 　当寺之世話人　　・・・以下略・・・　」 この文化４年の修理は真柱の上部取替、三重の屋根取替（腐朽）の大修理と思われる。 明治３３年の修理も真柱を移動しないと書けない部分に墨書がある。 　※埼玉村盛徳寺は成就院と同じ長久寺末。

２）塔の構造

一辺２．２４ｍ、高さ約１１ｍ。超小型塔である。
特筆すべきは異形（構造）の三重塔で、通常の初重平面が一間四面堂の平面を採らず、初重正面は１間（擬似の３間）初重の残り３面は２間、２〜３重は１間の設計を採る。組物は２手先とする。
初重平面は室生寺五重塔より若干小さいが、室生寺では採用が充分可能だった初重平面一間四面堂形式を採用しなかった理由は良く分からない。
　「成就院修理報告書」では
「この塔は著名な工匠によるものではない。棟札には１０名の工匠の名が記されるが、おそらく協同事業のような形態で建立されたのであろう。
・・・塔造営の指図・用材の調書などは工匠側で製作したのであろうが、経費の関係と塔婆関係に精通していなかったので、柱間１間を実現できたと思われる・・・」とする。
※但し、「塔婆関係に精通していなかった」というのは疑問とも思われる。たとえ「著名な工匠」でなくても、常識的に云って、塔は基本的に平面方３間（一間四面堂の形式）であることを知らないはずが無いと思われる。 （現に初重正面は斗栱は別にして、３間に見えるように作っている。）

「成就院修理報告書」　より（図版）
　二重の内部・平面筋違見上　　三重之内部・平面筋違及尾垂木尻
　成就院三重塔立面図　　　　　　成就院三重塔断面図　　　　　　二重及三重断面詳細図
　成就院三重塔初重平面図　　　二重平面及軒伏図　　　　　　　　三重平面及軒伏図

「成就院修理報告書」　より（出典：中西亨「日本の塔総観」）・・・小規模三重塔の例として以下が挙げられている。