千恵を取材したものは2007年5月10日と11日の2日間、「24歳の末期がん」としてニュース番組『イブニング5』の特集コーナーで放送されました。その放送に多くの反響があり、2007年7月18日に「余命1ヶ月の花嫁〜乳がんと闘った24歳最後のメッセージ〜」として2時間の番組となりました。私は千恵が取材を受けていた時、インタビューでどんなことを話したのかは全然知らず、放送で初めて聞きました。放送を見て、千恵がどんな思いで取材に臨んだのかを改めて知ることができました。
千恵が伝えたいと思っていたのは、まずは若年性乳がんのことです。「自分と同じ苦しみを他の人には味わってほしくない」「若い人ほどがんは進行が早いので、若い人こそ注意してほしい」と千恵はインタビューで語りました。乳がんになってから、千恵は乳がんのことをネットや本で詳しく調べていましたが、ほとんどが年配の女性の情報で、若い人の情報は全然ない、と言っていました。若い人でも乳がんになるんだよ、ということを知らせるために取材を受けようと思う、と話していましたが、放送ではそのメッセージをきちんと伝えてくれていました。
乳がんのこととともに、千恵が伝えようとしていたことがもう1つありました。それは「生きていることは奇跡だ」ということです。病室で千恵はいつも前向きで、ささいな事に幸せを感じていました。例えばアイスクリームがおいしい、とか、大好きなお肉が食べられた、とか、風が気持ちいい、とか。番組では千恵がミクシィに書いていた言葉も紹介されました。最後に書いた言葉は、「みなさんに明日が来ることは奇跡です。それを知ってるだけで日常は幸せなことだらけで溢れています」という言葉でした。私は千恵のミクシィを見ることは禁止されていたので、そんな言葉を書いていたことは全然知りませんでした。その言葉が書かれたのは結婚式の後。体調がどんどん悪くなっていった頃です。この頃、千恵は本当に「明日が来ることの奇跡」を感じていたと思います。
それ以外にも番組には千恵の様々な思いが盛り込まれていました。友情の温かさ、お父さんの愛の深さ、千恵がみんなに感謝している気持ち、などなど。放送された番組を見て、取材を受けたことは本当によかったと思いました。本当に沢山の方に千恵のメッセージが届けられました。千恵の願いが叶った瞬間でした。