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偽物と繕いについて


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ここでは、日本刀によくある「偽物」と「繕い」について思い付くまま書いてみます。

《 目  次 》

  1. − 偽物の種類 −
    1. ■ 偽物の見抜き方
      1. ▼ 銘
      2. ▼ 茎の錆色
      3. ▼ 茎の形
      4. ▼ 鑢目(やすりめ)
  2. − 偽物の手法 −
    1. ■ 偽銘の切り方
      1. ▼ 錆付け
      2. ▼ 偽折返し銘
      3. ▼ 継ぎ茎
      4. ▼ 折紙、鑑定書、鞘書の偽物
  3. − 繕いについて −
    1. ■ 焼き直し
    2. ■ 刀姿の繕い
      1. ▼ 先詰め
      2. ▼ 薙刀直しと長巻直し
      3. ▼ 薩摩上げ
    3. ■ 地の繕い
      1. ▼ 埋め鉄(うめがね)
      2. ▼ 後樋(あとひ)
      3. ▼ 後彫り
 

− 偽物の種類 −

日本刀の偽物の歴史は古く、既に奈良時代の『大宝律令』にて偽物防止の法令が出ています。つまり、刀に刀工名と制作年月を入れよと言うものです。日本刀の偽物には大きく分けて以下のような物が有ると思われます。
@刀身から銘まで、偽作を作る目的で刀工が作る場合。
Aある刀の地刃が有名な刀工の作に似ていることに目を付け、銘を偽作したり、折返し銘額銘にし、あるいは折損した本物の茎をくっつけて偽作する。
B銘のある刀の銘をいったん消して無銘にし、これに有名工の金象嵌や朱銘を入れる。
C折紙や鑑定書、鞘書偽物。本来とは違う鑑定書を付けたり、嘘の鞘書のあるもの。
これについては偽物の一番下で少し触れます。
この中で一番多いのはAの偽物です。これについて少し見てみましょう。

■ 偽物の見抜き方

偽物を見抜くには、主に茎(なかご)を観察することになります。

▼ 銘

重要なのは銘(めい)なのですが、これが一筋縄ではいきません。時代、個人によって癖があるのは当然で、同じ人でも年代によって書体も変わるものです。これを本格的に勉強しようと思えば、自分で押形(おしがた/刀身を写した魚拓のようなもの)を取り、資料と見比べていつ頃の作か等を比較研究する必要があり、また、書道に通じることによってその銘の勢い、生き死にが分かるそうです。しかし、一般の人がこのようなことをなかなか出来るものではありません。
従って、銘の写真や押形をたくさん見て、個人個人の癖や鏨運び(たがねはこび)の具合などを少しずつ勉強するしかありません。ただ、刀にはよく制作年月を切ったものが多いですが、「元年」とあるものには注意が必要です。つまりその月が改元後のものかを確認する必要があります。今の偽ブランド品にもあるように、よく見れば分かる間違いをわざと切ったものも多いからです。年号については年号と干支を参照して下さい。
た、銘の縁の部分、これを鏨枕(たがねまくら)と呼びますが、ここが白く光っているものも付け錆の疑いがあります。銘は鏨で切るのですが、そうすると鋼がめくられ縁が盛り上がります。鏨が鋼の表面を切り分けるからです。これに付け錆(人工的に錆を付ける)すると、柄木の抜き差しによって段々とその部分の錆がはげ落ちるのです。ただこの鏨枕は古くなってくるとすり減ったりして無くなります。従って古刀なのに鏨枕が立っているのは疑う必要があります。

▼ 茎の錆色

これは大変重要な部分です。何百年という錆色は黒光りする艶と光沢があります。人工的に錆を付ける方法は昔からたくさんあったようですが、自然に付いた錆とはやはり違うものです。錆付けの薬品に硫黄を使ったものも多く、臭気が強いのでなかなか取れません。以下のような茎には注意が必要です。
・錆の状態が胡麻状になったもの。胡麻粒のような錆が点在するもの
・皺のようになって錆びているもの
・手のひらや指の腹で撫でてみて、ざらつきのあるもの
・角が白く光っているもの。付け錆が柄の抜き差しで落ちてしまっている
茎(なかご)を見る場合は、はばきをはずして見ましょう(他人の持ち物の場合一言ことわってからにします)この下の錆と茎の錆の境目が不自然なものや、はばき下の地にブツブツとした錆があるものも注意が必要です。

▼ 茎の形

茎(なかご)にも地域や個人によって特徴があります。刀工は普通茎の形と茎尻は変えません。従ってその刀工が成形しない形の茎、茎尻は偽物か、生ぶ(うぶ/作られた当時のままの状態)では無いということです。
また、目釘穴の位置と形も重要です。鎌倉時代までは茎の両側からコツコツと穴を空けましたので、真ん中の部分が幾分穴の径より小さくなっています。新刀期のような真円ではありません。これはロクロではなく、手でコツコツと穴を空けたからです。
上げ(すりあげ/刀の寸法を短くする事)の刀は特に焼き出しと目釘穴、銘(めい)の位置関係に注意が必要です。磨上げの刀は、茎(なかご)が充分錆びた後年に新しく磨上げる訳ですから、磨上げた部分と元の茎の部分との錆色が当然異なっていなければなりません。つまり新しく茎となった部分は元は刀身であった部分であり、磨上げられた時点から茎となった訳ですから、元の茎ほど錆びてはいないはずなのです。従って磨上げの刀の場合、新しく茎となった部分と元の茎との境目が生じるのです。
また磨上げられた刀の場合は新しく目釘穴を空けているはずです。磨上げる場合は、短くしたい寸法分区(まち)を切先寄りに上げます。区(まち)は刀身と茎の境目ですから、これを切先寄りに新しく作るとその分茎が長くなります。これでは茎が長すぎるため、茎のお尻を切って適度な長さにするのです。従って磨上げた刀は姿が変わります。すると拵(こしらえ)は刀一振一振に合わせて作るオーダーメイドですので、磨上げた刀の拵は新しく作り直さねばなりません。そうなると新しい茎に合わせてバランスが取れた位置に新しい目釘穴を空ける必要があるのです。従って磨上げられた刀には複数個の目釘穴があるはずなのです。また磨上げた場合、上記のように茎を切るため銘(めい)の位置が茎尻の方に寄ったり、大きく磨上げた場合は銘が無くなってしまったりするのです。
注)新しく目釘穴を空けた場合、元の目釘穴は埋められている場合がありますが、輪郭は残っていますのでそれと分かります。
そこで刀を垂直に立てて持ち、鎬地を自分の方に向けて腕を真っ直ぐに伸ばして刀全体が見えるようにします。そして元の目釘穴の位置や銘の位置などを頭に入れて磨上げられる前の姿を想像するのです。ここで何かバランス的におかしくないかを観察しましょう。
ちなみに、新刀期の真改(摂津)、新々刀期の奥元平などは茎尻に隠し鏨を打って、誰かが中心をいじれば分かるようにしています。

▼ 鑢目(やすりめ)

鑢目も大変重要です。刀工は独自の鑢を作ってかけますので、個人や流派に特徴があります。またかける向きなども個人や流派で決まっているので、それに反しないかを見る必要があります。

− 偽物の手法 −


■ 偽銘の切り方

偽銘を切るには、まず元の銘を消さないといけません。これには鏨枕(たがねまくら/銘の回りの盛り上がった部分)を叩き寄せて銘を埋めます。こうしないと鑢などで削り取ると、元の銘の鏨の深さまで鑢をかけないといけないので、茎(なかご)の厚みが変わってしまい、一見して偽銘とばれてしまいます。埋めた後、鑢をかければ元の銘はただの線になってしまうので、新しく銘を切る準備が出来るわけです。
昔は見本にする本物を脇に置いたりして切ったのでしょうが、新刀期には偽銘の木型などもあって、それを見本にしたりしたようです。現在では鮮明な押形の写真などが書籍として販売されているので、その銘振りは巧妙です。見本の上にトレーシングペーパーなどを乗せ銘を複写し、偽銘を切る茎の上にカーボン紙を乗せて写し取った紙を乗せます。銘をなぞって茎に写しますが、鮮明でない部分は、見本を見ながら修正していきます。

▼ 錆付け

元の銘を消して鑢をかけてしまえば、元の錆も取れてしまいますので、新たに錆を付けてそれらしく見せねばなりません。錆とは鉄を酸化させれば良いので、酸や硫酸銅などの水溶液を塗り、温度を高くして酸化を促します。これを繰り返し黒みがかった色を出すために、タンニンを含んだもので色上げします。手法や材料は偽作者が独自に作りますので、詳しいことは分かっていませんがこのようにして錆を付けていきます。

▼ 偽折返し銘

偽折り返し銘の図1

左の図は、刀を棟の方の真上から見た図です。右側が本物を磨上げて銘を折り返した図です。銘を折り返して茎の中に埋め込みますが、元々銘のあった側には本来の鑢目があり、折り返して埋め込んだ後、図のAの部分には新しく鑢をかけます。従って、Aの裏面(元々銘のあった側)には本来の鑢目は残っています。
左側の図は、折返し銘を装って銘の部分を溶接しているものです。図のBの部分で溶接しその溶接部を隠すためにCの部分に新しく鑢をかけています。本来こちら側には元の鑢目が残っていないといけません。折返し銘は結構ごまかしやすいので注意が必要です。

▼ 継ぎ茎

継ぎ茎の図

継ぎ茎(つぎなかご)とは、茎は本物で、刀身の出来がよく似た別の刀工の作にその茎をくっつけたものです。本物は折れてしまって使い物にならないが、茎は大丈夫な場合などに行われます。図のように合わせ目を削って張り合わせ、図のようにかしめて鑢をかけます。

継ぎ茎の図2

現在では溶接技術を利用して、図のように継ぎます。溶接によって盛り上がった部分は鑢をかけますが本来の鑢目よりも上に新しい鑢目が現れています(図の点線部)。
このような場合、区(まち)下で継ぐので焼き出し部分が熱で無くなってしまっていることが多いようです。はばきを付けたままでは見落とす場合があるので注意が必要です。

偽折返し銘や継ぎ茎を見分けるには、次のようにします。
@茎と刀身のバランスを見ます。特に鎬筋(しのぎすじ)に注意を払います。鎬筋はなめらかな曲線をもって切先から茎尻までつながっています。これがいびつであれば、茎を継いでいる疑いがあります。
A生ぶ茎(うぶなかご/作られた当時のままの茎)と言うのに、焼き出しが無くなっていないかを見ます。焼き出しは区(まち)の下から始まりますので、区付近に焼き出しがないという事は、疑う必要があります。
B全体の鑢目が同じかどうかを見ます。部分的に違っていないかに注意します。
※刀工によっては、茎の改竄防止のため「隠し鏨」を茎尻に入れている者も居ます。
隠し鏨の例:井上真改(左)/ 奥 元平(右)
隠し鏨の図

▼ 折紙、鑑定書、鞘書の偽物

折紙(おりがみ)というのは文書の様式のことで、奉書紙(ほうしょし)を二つ折りにして、片面に用件を書いた物をこう呼びます。本阿弥家などが刀の鑑定書にこの様式を用いたので、後になって「折紙」イコール鑑定証という意味に使われるようになりました。しかし鑑定家である本阿弥家でも、信用できる折紙は十三代光忠までであると言われ、宝暦頃のものは俗に「田沼折紙」と呼ばれ信頼度はありません。鑑定家が書く鑑定証になぜ偽物があるのかと言うと、鑑定家と時の権力者が私利私欲のために手を組んで、刀販売で巨利を得ようとしたからです。従って、古い折紙が付いているからといって鵜呑みにしてはいけません。
現在では多くの日本刀に何らかの鑑定証が付いて販売されています。しかし鑑定についてでも触れましたが、日本美術刀剣保存協会の一時期の認定証にはかなり怪しいものが多いというのは事実ですし(現在は違う)、鑑定証自体を偽造する者も居ます。また別の鑑定証をくっつけている場合もなきにしもあらずです。

日本人は箱書、鑑定証などに弱いものです。こんな例があります。焼物ですが有名な工芸家の抹茶碗があるとします。それには有名な茶道の大家が銘を付け(その茶碗のニックネーム)、その桐箱にサインと共に箱書します。こうなると箱書の無いものよりも値段は高くなります。これにもう一つ桐箱を造ります。新しい桐箱には本物の茶碗を入れ、箱書の有る箱にはよく似た偽物の茶碗を入れます。こうすると茶碗は2個出来上がります。本物は箱書が無くても売れます。偽物は箱書があるので信用されて売れます。このように日本人は箱書などに弱く騙されやすいのです。(箱書をする人は本物に書いているので全く悪くはなく、悪用する者が悪いのです)

この箱書に似たものに「鞘書」があります。その刀を鑑定した人が、○○の作であるという事と自分の名前を白鞘の鞘に墨で直接書きます。こうすれば鑑定証と違って、刀と鑑定結果が別々にされてしまう事がないので、昔からよくあるものです。しかしこれにも嘘がある場合があります。
刀剣界のお偉い方は付き合いも広く、無理に頼まれて書く場合もあります。焼物の場合、有名作家が亡くなると、その奥さんもしくは身内の人がその作家の作品の鑑定者となります。そしてその作家が生前造った物で何らかの理由で箱書(作家の名前と作品名)がないものについては、鑑定者が箱書をします。その場合「○○識」と書きます。○○は観た人の名前、識とは鑑定して間違いないという意味です。しかし、刀の鞘書の場合、「○○観」と書いてある物があります。達筆なので見逃しやすいですが、これは鑑定したというのではなく、「見た」という意味です。したがって後々何らかの理由でそれが偽物であると分かった場合に「私は見ただけ。そう書いてある」という逃げの文句であるとともに、暗にこれは良くないと言っているようなものです。鞘に鞘書があると何か立派なように見えて欲しがる人がいますが、こういったことにも注意が必要です。

これは鑑定証についても言えることで、それを全面的に信用して買ってはいけません鑑定証付きをうたい文句にする刀屋さんは、自分の目に自身のない証拠です。では何を信じて買えば良いのかということになりますが、それは自分自身です。あの人が良いと勧めたから買ったのになどというのは良く聞きますが、自分の意志で買うことです。失敗したときも自分の勉強不足と反省しなければなりません。もちろん偽物であった場合は返品することです。ですからプロから買うべきなのです。プロに見間違いは許されません。当然返品もできるでしょう。個人売買では誰も保証してくれません。

− 繕いについて −

繕い(つくろい)とは、刀の悪い部分を手直しすることです。これには善意と悪意の両方があります。本来、大事な刀を手直ししてでも持っていたいというのは当然のことです。これが善意の繕いです。これに対して、高価で販売する為に欠点や傷を隠すための繕いもあります。しかし人に譲る(売る)場合、きっちりと説明しなければなりません。繕い部分を黙っていると騙したのと同じ事です。

■ 焼き直し

水影の図焼き直しとは焼き入れをやり直すことです。刃が欠けたり、研ぎ減って刃が無くなったりした場合に、再度焼きを入れます。焼き直しをした刀を再刃(さいば)と呼びます。茎(なかご)の錆色に変化が現れたり、水影(みずかげ)が出来たりと特有の欠点が現れます。刃中の働きは無くなり、ムラな沸(沸)が付いたりと生ぶに比べてその価値はぐっと下がります

水影というのは日本刀の傷と欠点でも触れたように、焼き直しをした際に現れる一種の映りのようなものです。焼き直しの際、焼刃土を塗るのは変わりありません。図のように、茎に影響を与えないようにBの所まで熱して、刃区ギリギリの所で水中で急冷(Aは水面)します。すると水面が接した刀の表裏(Cの部分)に軽い焼きが入ります。これが水影と呼ばれるものです。刀身のみ加熱して焼き入れできれば茎には影響ないのですが、どのようにしても茎に熱が伝わることは防げません。従って、茎の錆色が変化したり荒れたりといった影響が出てくるのです。
ところで、図のように斜めに水につけずに、深い水槽を使って刀を縦に入れて急冷すれば刃区のあたりに目立って水影が出ないのでは?と思われるかもしれませんが、刀を縦にして刃先から深い水槽に真っ直ぐ入れると、先と手元の部分とでは冷却速度が違ってしまい、ムラになってしまいます。ですから、焼きを入れる際には刃を下にして斜めに急冷します。
焼き直しがいけないかと言えば、全てがいけないとは言えません。なぜなら例えば大阪城落城の際に、多くの名刀が焼けてしまいましたが、初代越前康継は、無銘の正宗などを見事に再生しています。歴史的、資料的に貴重な刀を、出来るだけ本来に近い姿で残すということは、大変重要だからです。

■ 刀姿の繕い


 先詰め

先詰めの図 
一番重要な部分である切先に、鍛え割れや脹れ(ふくれ)が破れて傷になっている場合に、先を詰めてしまう手法があります。これを先詰めと呼びます。上の図の右側が元の姿で、切先に傷があるので点線部まで先を詰めて左側の図のような姿にします。当然切先を切り取ってしまうのですから、鋩子(ぼうし)が無くなってしまいます。左側の図では、それをごまかすために焼刃があるかのように繕っています。これには色々と方法があるようですが、研師が先の尖った小さな棒で幾つも点を打つように叩いていくと、その部分が少しだけへこんで高低差ができ、光が反射してあたかも焼刃があるように見せかけたりします。これは刃文を見るときのように、光源に刀を少し傾けて見れば見破ることが出来ます。このような鋩子の無い刀には全く価値はありません。

 薙刀直しと長巻直

薙刀直しの図薙刀直し(なぎなたなおし)・長巻直し(ながまきなおし)とは、鎌倉から室町期の大薙刀や長巻を刀や脇差に直したものです。長巻とは菖蒲造り(しょうぶづくり)の刀身に長い柄を取り付けた物です(下記写真参照)。
先が大きく反っている薙刀を図の点線のように棟の側から切り落とします。すると切先は鋭くなり鋩子の返りがなくなり焼き詰めになります。このように薙刀直しの場合は鋩子の返りがなくなりますので、返りがあれば薙刀直しではなく、後世に薙刀直しを写した物です。
また長巻は刀身が二尺を超える物が普通ですので、これを刀や脇差に直す場合は磨上げ時と同様、茎(なかご)側から短くします。つまり区(まち)を切先寄りに新たに作り、余分な茎を切り落とすのです。

これらは使いやすいように直したということですから、悪意ではない場合が多く、また古刀の良い出来のものを直してあるものも多いです。店頭に並ぶ際にも「薙刀直し」あるいは「長巻直し」と表示されているはずです。
長巻 
長巻の図 
一般的に長巻のほうが薙刀よりも長寸なので、長巻を直す場合は刀に、薙刀を直す場合は脇差しにすることが多いです。また、横手のあるものを長巻直し無いものを薙刀直しと呼びます。菖蒲造りには横手はありませんが、こういった造り込みの長巻を刀などに直す場合は横手を切り、通常の日本刀のように仕上げます。それは長巻が刀の発展したものとして作り出された物であったからです。

▼ 薩摩上げ

刀身を短くする場合に、最も大胆な手法が薩摩上げ(さつまあげ)です。これは刀身が真ん中から折れてしまったり、中程に大きな傷がある場合などに、通常とは逆に切先側を切り取ってしまうものです。刀身の先がうつ伏せ気味になるのと、鋩子がないのが特徴です。薩摩上げという言葉は、通常とは逆という意味から、日本の南の端である薩摩が逆転して北端になるといった、一種のしゃれであるようです。

■ 地の繕い

これは主に傷や鍛え割れを隠すために行われます。

 埋め鉄(うめがね)

埋め鉄の図 
脹れ(ふくれ)が破れたりして、回りの鉄を寄せて埋めることが出来ないような傷には、埋め鉄(うめがね)という手法が取られます。埋め鉄とは、傷の部分に別の鉄を埋め込んで隠す、一種の象嵌のようなものです。
まず、傷の部分を底が広く入り口が狭くなるような形に彫り下げます。彫り下げるといっても傷の深さにもよりますが、2ミリくらいのものです。そして彫り下げた底の面を凹凸にします。傷の表面部分は少し盛り上げておきます。そこへ、埋め鉄を入れ込んで上から叩いてはめ込みます。底を広くするのは埋め鉄が抜けてしまわないように、底を凹凸にするのはしっかりとかみ合うようにするためです。盛り上げておいた肉を寄せて完成です。この後、研師が研いで地と埋め鉄の高さを同じにしていきます。
埋め鉄には材料の選択が必要です。板目の肌には板目のものを、といった具合に刀に合わせないと意味がありません。しかし、肌合いだけでは研ぎ上がり後に色が違ってきます。つまり刀の材料というのは、その国々によって違い、また出来上がった刀の地の色も地方によっては特徴があるのです。従って完全に分からなくするには材料の選択と技術が必要です。

▼ 後樋(あとひ)

鎬地(しのぎじ)に大きな割れなどがある場合、後から樋(ひ)を彫って隠す場合があります。ただ、それによって重さのバランスが良くなり、見た目にも良くなる場合もあるので、一概に悪いとは言えません。

▼ 後彫り

刀身に後から彫刻を施すことです。彫りのある刀の三分の一は後彫りだとも言われます。傷を隠すのもさることながら、現在では高価で取り引きされるため、後彫りが施されるのがほとんどです。しかし、新刀の巨匠である虎徹など、彫りが得意で巧みな刀工の中には、自ら彫った彫刻である場合は茎(なかご)に「彫同作」と必ず切ります。従って虎徹の場合、彫刻があるのに「彫同作」と切られていない場合は、それは後彫りであり、価値は大きく下がります。
繕いというのは、本来良いことです。伝わってきた物をなるべく良い状態で保存することが大切だからです。ですから全ての繕いがいけないという訳ではありません。ただ、こういった事も多々あるので、刀を購入する場合に引っかかる部分を見つけた場合は納得がいくまで質問することが大切です。またこういった事を隠して販売する業者もいますので注意が必要です。特にインターネットでのオークションや、通販などには十分注意して下さい。「代理出品です」などというのも注意が必要です。つまり本人の出品であるのに代理出品と偽り、質問が来ても「代理だから分からない」と逃げ道を作っている場合があるからです。特に初心者の方はネット購入は避けた方がよいです。刀屋が近くに無いなどどうしてもと言う場合は、納得がいくまで十分質問してから購入しましょう。