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鑑定について


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折紙という言葉があります。奉書紙を二つ折りにして片面に要件を書くひとつの様式です。本阿弥家(ほんあみけ)などで、この様式の鑑定証を発行していたので、正真(しょうしん/本物であるという意味)保証の鑑定証という意味で使われるようになりました。

日本刀の鑑定の歴史は古く、鎌倉時代の歴史書である『吾妻鏡(あづまかがみ)』に、後鳥羽上皇の事として「刀など御覧じ知ることさえ、いかが習わせ給いたるか、道のもの達にもまさりてかしこくおわしませし・・」とあり、既に刀の道のひと、すなわち既に鑑定家がいたことをうかがわせる記述があります。そして現在のような鑑定法を創始したのは、室町時代に足利義満の刀剣係を務めた宇都宮三河入道であると言われます。

宇都宮三河入道の伝系を引くと言われる本阿弥家は菅原氏の流れをくむと伝えられ、初代である長春は妙本と称して足利尊氏に仕えたと言われます。刀剣の研磨と鑑定を以て代々足利家に仕え、豊臣秀吉の時代に九代目光徳(こうとく)が秀吉より刀剣鑑定と折紙発行を許可されました。

本阿弥家が正式に折紙の発行を始めたのは九代光徳からで、慶長十七年だと言われています。そして十代光室(こうしつ)、十一代光温(こうおん)、十二代光常(こうじょう)、十三代光忠(こうちゅう)までを古折紙と呼び、これらは非常に信頼できる物とされ、折紙に使用された紙は加賀前田藩の特性品であると言われます。しかし時代が下るとともに本阿弥家の折紙も信頼度が低下し、江戸後期の田沼意次(たぬま おきつぐ)の時代には金と権力に物を言わせて折紙を発行させ、「田沼折紙」としてその信頼度は地に落ちました。

折紙の発行は、毎月7回分家全員が本家に鑑定刀を持ち寄って集まり、本家を座長として合議制で決定し、本家の名前で折紙を発行しました。そしてその日に合意に至らなかった物は各自が持ち帰ってさらに検討し、2月3日、7月3日、11月3日の初代命日の日に再び審議されました。

本阿弥家では、大磨上げ無銘(おおすりあげむめい/刀を短くしたため銘がなくなった)の物には金象嵌で、生ぶ無銘(うぶむめい/作られた当初から銘が切られていない)の物には朱で茎(なかご)に極め銘を入れました。また折紙には必ずその刀の代付(だいつけ/刀の価格ではない価値を示す物)が付記されました。それは「金○枚」、「代○貫」など、金額で表されました。しかしこれは実際の売買価格ではなく、その刀の価値を示す指標でした。例えば鎌倉中期の備前国の刀匠である長船長光(おさふね ながみつ)の作に「大般若永光(だいはんにゃながみつ)」という名物がありますが、これには六百貫の代付が付いています。これは平安後期の三条宗近の作が百貫、鎌倉後期の五郎入道正宗の作が五十貫であったことから考えると、破格の代付でした。

現在日本刀の鑑定証を発行してくれる所は幾つかあります。

日本美術刀剣保存協会

ここでは保存刀剣、特別保存刀剣などと言った認定証を発行しています。この上に重要刀剣、特別重要刀剣があります。古くに発行された認定証には、貴重刀剣、特別貴重刀剣、甲種特別貴重刀剣といった名称のものがあります。2つ折りの書面に種別、銘、長さが記入され○○刀剣に認定すると記載されています。茎(なかご)の押し形もしくは写真が貼り付けてあります。これには正真であるという文字は記載されていません。認定するという文字だけです。勿論正真であるという前提で発行しているのでしょうし、設立の課程が日本刀を救うというものであったのでこのような記載になっているのかもしれません(日本刀の所持と登録証の昭和の刀狩り参照)。地方審査をやりだしてから発行数は膨大になり、中には疑わしいものもあると言われておりますが、発行数が膨大であり人間のすることですからいくらかは間違いがあっても仕方ないかもしれません。

日本刀剣保存会

折り紙形式の鑑定証を発行しています。ここでは正真という文字が入る鑑定証を発行してくれます。また、日本刀の見所である鍛え肌、刃文、鋩子、茎についても詳しく記載してくれます。


これら以外にも、個人や団体で鑑定証を発行している所があります。鑑定を依頼するにはまず連絡して詳しい内容を聞いて、送るか持参するかしてください。

鑑定のポイントは?

刀を鑑定する際、何をポイントとしているのでしょうか。

それはまず姿です。日本刀は時代とともにその姿を変えて行きます。従ってその姿を見ればおよその時代判別が出来るのです。しかし、後世に古き良き刀を模倣して作られた物もあり、これらはその姿をも写します。こういった場合は地鉄や重ね、身幅、鋩子などを見て時代を判断する事になります。こういった部分はやはり時代が現れる箇所であるからです。

時代が分かれば次に鍛え肌、刃文、鋩子、茎の形や鑢目などを見て流派あるいは個人の名前まで見極めていきます。

勿論銘のある刀はその銘も重要です。それぞれに流派や個人的特徴の出る部分ですので、姿によって時代を判別し、その時代の刀工でこういった鍛え、刃文などを焼く刀工はこの人だと見ていくのです。それと銘の特徴が合えば本物と言うことになります。銘はいわゆるサインです。自分のサインを間違ったりためらいながら書く人はいないでしょう。当然個人個人に特徴があり、本物には勢いがあります。刀身はよくその刀工の作に似ていても、銘が怪しければいけません。

その点、無銘の刀は個人の銘まで言い切れない場合があります。流派で止まることもあります。銘があればその銘が正しいか、後から勝手に誰かが入れた銘かが分かれば判定できますが、無銘の場合は顕著な個人的特徴が出ていなければ、流派などで止まってしまうのです。ただし、無銘には偽物はありません。なんせ銘が入ってないのですから。