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日本刀の傷と欠点


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日本刀は折り返し鍛錬をしながら作っていくのですが、その過程において排除されなかった不純物や、ちょっとしたミスが傷となって現れることがあります。しかし全ての傷がいけないかというとそうではなく、実用上あるいは鑑賞する上で致命的かどうかが重要です。
日本刀の傷 
傷の説明図  A:  烏の口
B:  撓え(しなえ)
C:  脹れ(ふくれ)
D:  切り込み
E:  埋め金(うめがね)
F:  割れ
G:  棟割れ
H:  刃切れ
 I:   刃こぼれ
J:  刃染み
K:  匂い切れ
L:  水影
M:  焼き落とし 
刀の傷で一番嫌われるのは、刃切れ(H)です。これは焼刃に亀裂が入っているものでそこから折れる恐れがあります。その刃切れが切先にあるものを烏の口(A)といいます。なお、アルファベットはふっていませんが、右図の刃中に斜めに入った傷は刃絡み(はがらみ)といい、ここから欠ける危険があります
撓え(B)は刃や地鎬などにも現れますが、しわのようになった筋です。曲がる恐れもあり、美観も損ないます。
脹れ(C)は折り返し鍛錬の際、充分にくっつかなくて、空気が入ってしまった傷で、水ぶくれのようなものです。研ぎなどによって破れると、著しく美観を損ないます。
埋め金(E)は傷を隠すために似たような鉄を埋め込んだものです。
割れ(F)は折り返しの際充分にくっつかなかったものですが、特別大きくなければ差しつかえなく、柾目まじりの鍛えをする流派や個人では傷に入れないこともあります
染み(J)は炭素量にむらが出来たため光が無くなってぼけたようになったものです。研ぎ減ったものは刃全体が染みたようになり、価値はかなり下がります。
匂い切れ(K)は部分的に刃文がとぎれてしまっているものですが、うまい研ぎ師なら上手に隠してしまいます。
水影(みずかげ/L)というのは、焼き直した刀に現れます。焼き出しの部分に映りに似た影が現れます。焼き直す際、茎(なかご)まで水中に入れないので境目にこのような影が出来ます。

■ 疲れ

健全な刀というのは、制作当時の姿を残しているものを言いますが、度々研がれたりして皮鉄が無くなり、芯鉄がでてしまったりしたものや、地が荒れてしまっているものを疲れといいます。

研ぎ減りの図

左の図は、右側は棟側を真上から見たところです。茎(なかご)は研がないので重ねは制作時から変わりません。研ぎによって点線部まであった重ねが実線部まで減っています。左側の図では、刃が欠けたか何かで点線部まであった刃が実線部まで研いで下げられています。このように見れば、その刀がどれくらい減ってしまってるか(疲れているか)が分かります。

※芯鉄が出ているのが特徴のものもあります。例えば山城の来一派、備中の青江一派などです。